社労士試験の独学|健康保険法|保険給付の制限

アイキャッチ画像

まえがき

この記事では、健康保険法における保険給付の制限を解説しています。

社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。

記事中の各略語は次の意味で使用しています。

  • 法 ⇒ 健康保険法
  • 則 ⇒ 健康保険法施行規則
  • 保険者 ⇒ 協会けんぽ及び各健康保険組合

当記事は条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。詳しくは免責事項をご確認ください。

給付事由等に基づく制限

はじめに、被保険者や被扶養者が次のいずれかを行った(該当した)場合の給付制限を解説します。

  • 故意、故意の犯罪行為(法116条)
  • 闘争、泥酔、著しい不行跡(法117条)
  • 施設に収容、拘禁された(法118条)
  • 療養に関する指示に従わない(法119条)
  • 偽りその他不正の行為(法120条)
  • 文書の提出等を拒む(法121条)

簡単にいうと、被保険者等に何かしらの責任がある場面での給付制限です。


故意、故意の犯罪行為

健康保険法116条

被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。

被扶養者に関する保険給付も被保険者と同様に制限されます(法122条)

以降、法116条の解説では「又は被保険者であった者」の表記を省略しています。

故意

給付制限|故意

(健康保険についての解釈です)

  • 被保険者(②の者を除く)の自殺による死亡は「故意」に基づく事故です。ただし、死亡は絶対的な事故であり、救済又は弔慰に値するため、保険給付の制限の例外として埋葬料を支給する取扱いとなっています(昭和26年7月6日保発2285号)
  • 自身の行為(結果を含む)に対する認識能力を欠く者には「故意」の問題は生じません。したがって、そのような状態にある者の自殺は「故意に給付事由を生じさせたもの」といえません(昭和2年11月12日保理3692号)
  • 「自殺未遂による傷病」は、その傷病の発生が精神疾患等に起因する場合は、「故意に給付事由を生じさせたもの」に当たらず、保険給付の対象です(平成22年5月21日保保発0521第1号)

①については支給して差し支えないと示す通達もあります。当記事では実態に合わせて、以降も「支給する」の表現で統一しています。また、埋葬費の表記は省略しますのでご了承ください。

①~③をふまえて情報を整理しておきます。

  • 自身の行為に対する認識能力を欠く(傷病の発生が精神疾患等に起因する場合を含む)ならば「故意」に該当しません(②③を参照)
  • 自身の行為に対する認識能力を有していて「故意」に該当する場合は、傷病(自殺未遂を含む)に対する保険給付は制限されます。
  • 自身の行為に対する認識能力を有していて「故意」に該当しても、死亡(自殺を含む)に対する埋葬料は支給されます(この自殺が①の「故意」に該当します)

故意の犯罪行為

給付制限|故意の犯罪行為

(犯罪行為の解釈ではなく、保険給付を制限するかの基準です)

  • 被保険者が、道路交通法違反(例えば、制限速度の超過、無免許運転)中に起した事故により死亡した場合において、その死亡事故と当該犯罪行為とに相当因果関係があるときは、保険給付の制限に該当する(昭和36年7月5日保険発63号の2)
  • 被保険者が事業主夫婦の寝室に侵入し、就寝中の両人に傷害を与えて現場にて服毒自殺した事例については、その服毒自殺は、故意の犯罪行為(侵入して傷害を与えたこと)に因って生じたものではない(昭和26年3月19日保文発721号)
  • 「死亡」は絶対的な事故のため、①(相当因果関係があるときを含む)②いずれも埋葬料は支給する(①②各通達)

①②のとおり、保険給付を制限するかは、「故意の犯罪行為中に給付事由が生じたか」ではなく、「故意の犯罪行為と給付事由との間に相当因果関係があるか」により判断されます。

なお、③の埋葬料は、被保険者により生計を維持されていた者で、埋葬を行うものに支給されます。

(埋葬料の支給を受ける者は、故意の犯罪行為をしていませんし、故意に死亡もしていません)

被保険者から被扶養者へのDVの取扱いは、下のタブに格納しておきます。

このタブ内では「自己の故意の犯罪行為により、又は故意に」を単に「故意に」と表記しています。

  • 被保険者が故意に給付事由を生じさせたときは、法116条により、当該給付事由に係る保険給付は行わない。
  • 法116条は被扶養者について準用するため、被扶養者が故意に給付事由を生じさせたときは、当該被扶養者に係る保険給付は行わない。
  • 被扶養者に関する保険給付(家族療養費等)は「被保険者」に対して支給するため、被保険者が故意に家族療養費等の給付事由を生じさせたときも、保険給付は制限される(同旨 令和5年3月30日保保発0330第3号)

①②は「治療等の原因を故意に生じさせた者」と「治療等を受ける者」とが一致します。

③どうでしょう。「治療等の原因を故意に生じさせた者」は被保険者ですが、「治療等を受ける者」は被扶養者です。

③による不利益としては、被保険者から暴力等(DV)を受けた被扶養者(被害者)について、被保険者から扶養の非該当(削除)の届出がされない場合は、被害者は(次の医療保険に加入できないため)10割負担で受診せざるを得ないケースが生じてしまいます。

このようなケースにまで法116条の給付制限を適用してしまうと、同条の趣旨に沿わないとともに、実質的に被害者は保険給付を受けられないため、次のように修正して解釈されています(同旨 前掲通達)

  • 保険者は、給付事由が第三者の行為によって生じた場合に、保険給付を受ける権利を有する者(被扶養者を含む)が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときには、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる(法57条1項、2項)
  • 上記のことから、被扶養者である被害者は、第三者から損害賠償を受けるまでは、一般の加入者と同様、保険診療を受けられる。
  • 被害者が被扶養者から外れるまでの間の受診については、加害者である被保険者を健康保険法57条に規定する第三者と解して同条の規定を適用し、当該被害者(被扶養者)が保険診療を受けられるよう取り扱う。

なお、被害者(被扶養者)は、保護された旨の証明書等を添付し、被扶養者から外れる旨の申出を被保険者を通さずに行うことが可能です(前掲通達)

DVについては、法116条の形式よりも被害者の実態を重視して、法57条(第三者行為)の枠組みで保険給付を行います。


法116条(故意、故意の犯罪行為)による給付制限は以上です。


闘争、泥酔、著しい不行跡

つづいて、闘争、泥酔、著しい不行跡についての給付制限を解説します。

健康保険法117条

被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、その全部又は一部を行わないことができる。

被扶養者に関する保険給付も被保険者と同様に制限されます(法122条)

闘争、泥酔

「闘争または泥酔によって給付事由を生じさせた」とされる事故とは、闘争または泥酔に際して発生した事故を意味します(昭和2年4月27日保理1956号)

したがって、闘争から数日後に、相手が怨恨を晴らす目的で襲撃してきた事例については、後日の襲撃による負傷は「闘争による給付制限」に該当しない と解されています(前掲通達)

著しい不行跡

通達によると、次のような判断基準が示されています(昭和4年5月23日保発56号)

  • 「著しい不行跡」により保険事故を生じさせた場合とは、本来、一般の社会通念に基づきその都度認定すべきものである。
  • 本件に関する事実認定は困難な場合が多く、かつ被保険者の利害に及ぼす影響が大きい。したがって、実際の適用には慎重な考慮を払うこと。
  • 保険給付の制限の程度については、被保険者の家族の有無や生計の状況等を参酌して、適宜決定すること。

施設に収容、拘禁された

給付制限|施設に収容・拘禁されたケース

つづいて、少年院や刑事施設に収容(拘禁)された場合の給付制限です。

健康保険法118条

1 被保険者又は被保険者であった者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、疾病負傷又は出産につき、その期間に係る保険給付(傷病手当金及び出産手当金の支給にあっては、厚生労働省令で定める場合に限る。)は、行わない。

一 少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき。

二 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき。

2 保険者は、被保険者又は被保険者であった者が前項各号のいずれかに該当する場合であっても、被扶養者に係る保険給付を行うことを妨げない

法118条1項各号に該当する場合(以下、刑事施設等に収容された場合)は、刑事収容施設法などに基づいて医療上の措置がとられます。

以降、法118条の解説では「又は被保険者であった者」の表記を省略しています。

被扶養者について

  • 険者が刑事施設等に収容された場合(②を除く)でも、被扶養者に係る保険給付は行います(法118条2項)
  • 養者が刑事施設等に収容された場合は、被扶養者に係る保険給付を行いません(法122条)

傷病手当金及び出産手当金

傷病手当金及び出産手当金の支給については、次のいずれかに該当する場合に限り、法118条により制限されます(則32条の2)

  • 少年院又は児童自立支援施設
    保護処分(少年法24条)として送致され、収容されている場合
  • 刑事施設
    拘禁刑若しくは拘留の刑の執行のため、又は死刑の言渡しを受けて拘置されている場合
  • 留置施設
    留置されて、拘禁刑又は拘留の刑の執行を受けている場合
  • 労役場
    留置の言渡しを受けて留置されている場合
  • 監置場
    監置の裁判の執行のために留置されている場合

(刑事施設には、少年院において刑を執行する場合の当該少年院を含む)

未決勾留者に対しての傷病手当金、出産手当金の支給は、法118条1項により制限しない趣旨です(平成17年3月29日保発0329003号)

刑事施設等に収容された場合の届出

法118条1項については、次のように届出(健康保険法第118条第1項(該当・不該当)届)が義務付けられています(則32条)

  • 事業主は、被保険者又はその被扶養者が刑事施設等に収容されたときは、5日以内に厚生労働大臣又は健康保険組合に届け出なければならない。
  • 任意継続被保険者又は被保険者の資格を喪失した後に保険給付を受ける者は、その者若しくはその被扶養者が刑事施設等に収容されたときは、5日以内に保険者に届け出なければならない。
  • 刑事施設等に収容されなくなったときも、同様に届け出なければならない。

(上記の「厚生労働大臣」は、権限に係る事務の委任により、実務上は年金機構となります)

保険料の徴収の特例

給付制限(刑事施設等)|保険料徴収の特例

被保険者(任意継続被保険者を除く。次の①②③において同じ)が刑事施設等に収容された場合の保険料は、次の①~③の区分に応じた取扱いとなります(法158条)

  • 資格を取得した月に収容された被保険者
    収容された月の翌月以後、収容されなくなった月の前月までの期間、保険料を徴収しない
  • 前月から引き続き被保険者
    収容された月以後、収容されなくなった月の前月までの期間、保険料を徴収しない
  • 収容された月と、収容されなくなった月が同月の被保険者
    保険料を通常どおり徴収する

法118条は以上です。


療養に関する指示に従わない

法119条による制限は、保険給付の「一部」のみが対象です。

健康保険法119条

保険者は、被保険者又は被保険者であった者が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる。

被扶養者に関する給付も被保険者と同様に制限されます(法122条)

法119条の趣旨は、適正な保険診療を受けさせ、速かに目的(傷病の治ゆ)を達成する指導的理念に基くと同時に、被保険者(又は被保険者であった者)が療養に関する指示に従わないために給付費の増加を招きよせ、他の被保険者に不当な負担が生じることを避けるためと解されています(昭和26年5月9日保発37号)

療養に関する指示に従わない

「療養に関する指示に従わない者」とは、次の者をいいます(前掲通達)

  • 保険者又は療養担当者により療養の指示に関する明白な意志表示があったにも拘らず、これに従わない者
  • 診療担当者より受けた診断書、意見書等により一般に療養に関する指示と認められる事実があったにも拘らず、これに従わないため、療養上の障害を生じ著しく給付費の増加をもたらすと認められる者

また、次のように、法119条の適用(運用)の方針が定められています(同旨 前掲通達)

  • 療養の給付については、正当な理由なしに療養に関する指示に従わない顕著な事実があって、これを改めさせるのに他の手段が難しい場合に限り、制限の対象とする。
  • 給付の制限期間は、船員保険法(107条)を参考として、おおむね10日間を基準とする。
  • 傷病手当金の一部制限については、制限事由に該当した日以後において請求を受けた傷病手当金の請求期間1か月について、おおむね10日間を標準として不支給の決定をする。
  • 療養に関する指示に従わない事実が再度生じ、更に当該行為を何度も繰り返す場合には、制限期間を加重する。

偽りその他不正の行為

給付制限|不正行為

偽りその他不正の行為によって保険給付(傷病手当金、出産手当金に限らない)を受けた場合は、法58条に基づいて、不正に受けた部分の費用が徴収されます。

(法58条は別の記事で解説します)

傷病手当金、出産手当金については、不正利得の徴収に加え、不正が発覚した後の期間も、法120条により給付制限の対象となります。

健康保険法120条

保険者は、偽りその他不正の行為により保険給付を受け、又は受けようとした者に対して、6月以内の期間を定め、その者に支給すべき傷病手当金又は出産手当金の全部又は一部を支給しない旨の決定をすることができる。ただし、偽りその他不正の行為があった日から1年を経過したときは、この限りでない。

保険給付の制限は「不正に受けようとした者」も対象です。

なお、法120条は、傷病手当金又は出産手当金のいずれか一方に限らず、両方の給付を同時に支給しない決定も可能と解されています(昭和3年7月6日庶発766号)

(傷病手当金と出産手当の各支給要件を同時に満たすことはあり得ます)

以降、偽りその他不正の行為があった日から1年を経過していない前提で解説します。

6か月以内の期間

法120条の給付制限の趣旨は、次の②が正しいと解されています(同旨 昭和6年7月14日保理148号)

  • 傷病手当金又は出産手当金について「支給要件を実際に満たした日から6か月以内の期間は支給しない」とする意味ではない。
  • 給付事由(傷病や出産)が実際に発生するか否かにかかわらず「6か月以内の期間」を定めて給付制限の決定をする。

「〇月〇日から△月△日までは支給しない」のように、あらかじめ暦上の「6か月以内の期間」を確定させて給付制限の決定をします。そして、当該期間中に請求があった場合には保険給付を制限します。

給付制限の基準

法120条による制限の程度としては、次の基準が定められています。ただし、個別の情状によってはこの基準を適宜変更して差し支えないとも示されています(昭和3年10月1日保発665号)

  • 偽りその他不正の行為が計画的な故意に基づく場合は、原則として、不正に保険給付を受けた(又は受けようとした)日数1日につき10日の割合で保険給付を支給しない決定をする。
  • 偽りその他不正の行為が軽微な場合は、給付制限を行わない。ただし、その軽微な行為が2回以上にわたるときは、1日につき10日の割合に準じて支給しない決定をする。
  • 偽りその他不正の行為に関与した程度が極めて軽い場合は、給付制限を行わない。

法120条は以上です。


文書の提出等を拒む

保険者は、保険給付に関して必要があるときは、保険給付を受ける者(被扶養者を含む。法121条において同じ)に対し、文書などの物件の提出(提示)を命じたり、当該職員に質問や診断をさせることができます(法59条)

健康保険法121条

保険者は、保険給付を受ける者が、正当な理由なしに、法59条の規定による命令に従わず、又は答弁若しくは受診を拒んだときは、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

法59条、法121条の「保険給付を受ける者」には被扶養者含まれます

給付事由等に基づく制限は以上です。


資格に基づく制限

ここからは、被保険者や被扶養者の資格関係に基づく給付制限を解説します。

(被保険者等に落ち度がなくとも適用されます)


法人の役員としての業務

保険給付の制限|法人の役職としての業務

加工前の条文はタブを切り替えると確認できます。

健康保険法53条の2

被保険者又はその被扶養者が法人の役員であるときは、当該被保険者又はその被扶養者のその法人の役員としての業務に起因する疾病負傷又は死亡に関して保険給付は、行わない。

法人の役員

「法人の役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者(以下、取締役等)をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を問わず、取締役等と同等以上の支配力を有するものを含む。

法人の役員としての業務

次の業務は「法人の役員としての業務」から除く。

被保険者の数が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員としての業務であって、当該法人における従業員(法人の役員以外の者をいう)が従事する業務と同一であるもの(則52条の2)

健康保険法

第五十三条の二

被保険者又はその被扶養者が法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この条において同じ。)であるときは、当該被保険者又はその被扶養者のその法人の役員としての業務(被保険者の数が五人未満である適用事業所に使用される法人の役員としての業務であって厚生労働省令で定めるものを除く。)に起因する疾病、負傷又は死亡に関して保険給付は、行わない。

健康保険法施行規則

第五十二条の二

法第五十三条の二の厚生労働省令で定める業務は、当該法人における従業員(同条に規定する法人の役員以外の者をいう。)が従事する業務と同一であると認められるものとする。


法人の役員が業務により負傷等した場合は、使用者側の責めに帰すべきものであり、労使折半の健康保険から保険給付を行うことは適当でないと考えられています(平成25年8月14日事務連絡)

ただし、被保険者数5人未満の法人において、役員が従業員と同一の業務に従事するケースは考慮されています(傷病手当金を含めて保険給付は制限されません)

なお、「出産」に関しての保険給付は、法人の規模に関係なく制限されません。


船員保険の被保険者

続いて船員保険に関する制限です。

船員保険法の保険給付は、健康保険法による資格喪失後の保険給付より優先されます。

健康保険法107条

被保険者であった者が船員保険の被保険者となったときは、次の①~③の保険給付は行わない(法107条)

  • 傷病手当金又は出産手当金の継続給付(法104条)
  • 資格喪失後の死亡に関する給付(法105条)
  • 資格喪失後の出産育児一時金の給付(法106条)

健康保険法

第百四条(傷病手当金又は出産手当金の継続給付)

省略

第百五条(資格喪失後の死亡に関する給付)

省略

第百六条(資格喪失後の出産育児一時金の給付)

省略

第百七条

前三条の規定にかかわらず、被保険者であった者が船員保険の被保険者となったときは、保険給付は、行わない。


なお、被扶養者であった者には、①~③に相当する保険給付(資格喪失後の家族埋葬料、資格喪失後の家族出産育児一時金という制度)はありません。


共済組合の組合員

最後は「共済組合の組合員」である被保険者の取扱いです。

健康保険法200条ほか
  • に使用される被保険者、地方公共団体の事務所に使用される被保険者又は法人に使用される被保険者であって共済組合の組合員であるものに対しては、健康保険法による保険給付は行わない(法200条1項)
  • ①により保険給付を受けない者に関しては、保険料を徴収しない(法202条)

共済組合の給付の種類及び程度は、この法律の給付の種類及び程度以上であることを要する(法200条2項)

厚生労働大臣は、共済組合について、必要があると認めるときは、その事業及び財産に関する報告を徴し、又はその運営に関する指示をすることができる(法201条)

健康保険法

第二百条

1 国に使用される被保険者、地方公共団体の事務所に使用される被保険者又は法人に使用される被保険者であって共済組合の組合員であるものに対しては、この法律による保険給付は、行わない。

2 共済組合の給付の種類及び程度は、この法律の給付の種類及び程度以上であることを要する。

第二百一条

厚生労働大臣は、共済組合について、必要があると認めるときは、その事業及び財産に関する報告を徴し、又はその運営に関する指示をすることができる。

第二百二条

第二百条第一項の規定により保険給付を受けない者に関しては、保険料を徴収しない。


国等の事業所に勤務する短時間勤務職員については、共済組合制度により給付及び掛金の徴収が行われます。

なお、健康保険から保険給付及び保険料徴収は行われなくとも、健康保険の被保険者の資格は継続します(令和6年8月21日保保発0821第6号)

(事実上の適用除外とはいえ、厳密には適用除外ではありません)


まとめ

解説は以上です。

ここまでの内容を簡単に整理しておきます。

制限制限される給付制限の範囲強制・任意
故意
故意の犯罪行為
全て(死亡以外)全部行わない
闘争
泥酔
著しい不行跡
全て(死亡以外)全部又は一部できる
施設に収容(*1)疾病、負傷、出産(*2)全部行わない
療養の指示に従わない(*3)全て一部できる
不正行為(*4)傷手、出手全部又は一部できる(*5)
文書の提出等を拒む(*3)全て全部又は一部できる
法人の役員の業務(*6)疾病、負傷、死亡全部行わない
船員保険資格喪失後の給付全部行わない
共済組合(*7)全て全部行わない
保険給付の制限(健康保険法)

(*1)保険料について特例あり

(*2)未決における傷手、出手を除く

(*3)正当な理由なしに

(*4)不正行為日から1年以内

(*5)6か月以内の期間を定める

(*6)5人未満の法人における従業員と同一の業務を除く

(*7)保険料は徴収しない


(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 健康保険法
  • 昭和26年7月6日保発2285号(保険給付の疑義について)
  • 平成22年5月21日保保発0521第1号(自殺未遂による傷病に係る保険給付等について)
  • 昭和36年7月5日保険発63号の2(健康保険法第六十条に該当する者に対する埋葬料の支給について)
  • 令和5年3月30日保保発0330第3号(「被保険者等からの暴力等を受けた被扶養者の取扱い等について」の一部改正について)
  • 昭和26年3月19日保文発721号(法第六十条の疑義解釈について)
  • 昭和2年4月27日保理1956号(闘争又ハ泥酔ニ因リテ生セシメタル保険事故ニ関スル件)
  • 昭和4年5月23日保発56号(被保険者著シキ不行跡ニ因リ事故ヲ生セシメタル場合ニ於ケル取扱ニ関スル件)
  • 平成17年3月29日保発0329003号(国民年金法等の一部を改正する法律等の施行について〔健康保険法〕)
  • 昭和26年5月9日保発37号(法第六十三条の規定による保険給付の一部制限について)
  • 昭和3年7月6日庶発766号(保険給付停止ニ関スル件)
  • 昭和6年7月14日保理148号(健康保険法第六十四条ノ疑義ノ件)
  • 昭和3年10月1日保発665号(健康保険法第六十四条ノ決定ニ関スル件)
  • 平成25年8月14日事務連絡(健康保険法の第1条(目的規定)等の改正に関するQ&Aについて)
  • 令和6年8月21日保保発0821第6号(「国家公務員共済組合制度及び地方公務員等共済組合制度における短期給付の適用拡大に伴う事務の取扱いについて」の一部改正について〔健康保険法〕)