「テキスト読み」に変えたい能動的な勉強法!アクティブ・リコール

本を読む人

まえがき

「テキストを読み込んだはずなのに思い出せない…」

このように、勉強しても結果が出ないときには「アクティブ・リコール」の考え方が役に立つかもしれません。

アクティブ・リコールとは、インプットした情報を積極的にアウトプットすることによって、記憶を定着させる勉強法です。

簡単にいうと、「テキストを読む」よりもテキストで学んだ内容を「思い出す」ことを重視する勉強方法です。

シンプルな方法なため特別なスキルは必要ありません。

また、一人でもできる勉強方法ですので、独学とも相性は良いです。

以降、アクティブ・リコールについて解説します。

アクティブ・リコールの根拠は?

さきほど、アクティブ・リコールは積極的にアウトプットすると説明しました。

アウトプットを積極的におこなう理由は、記憶を効率的に定着させるためです。

そして、アクティブ・リコールの有効性は複数の研究(参考)で示されていて、ある研究では、学生を4つのグループに分け、各学生が同じ内容を学び、学んだ内容をテストしました。

テストの結果、学習教材を4回読んだグループよりも、1回読んでからできるだけ思い出したグループが優れた成績を収めています。ここでの「できるだけ思い出す」は、自己テストを指します。

つまり、学習教材を読んで覚えるのではなく、学習した内容を記憶から検索し、自分にテストを出して確認する方法がよりよい結果を得ています。

アクティブ・リコールを取り入れて勉強してみよう!

アクティブリコールの考え方を取り入れた勉強法はいろいろあります。ポイントは次の2つです。

  • 定期的に反復する
  • 自分の言葉でアウトプットする(思い出す)

私はアクティブ・リコールの「できるだけ思い出す」を実践し、社会保険労務士試験や日商簿記1級などに独学で合格しています。

(私のような)特殊な才能を持ち合わせていない一般人でも、工夫すれば合格できる試験です。

そこで、普段から実践している勉強方法を2ステップで紹介します。

ステップ1|積極的に問題集を解きつつ思い出す

簡単にいうと、テキストを覚えるよりも、問題集を解きます。

ちなみに、間違えてもいいです。

間違えたことで自分が理解していない部分を特定できたといえるので、後は理解するだけです。

テキスト・問題集の周回
  • テキストを読んだ後は問題集を解きます
  • 問題を解いで理解の浅い範囲があれば、テキストに戻り用語の定義を確認します
  • ①と②を1セットにして、この1セットを繰り返します

ポイントは、問題の解説を覚えるのではなく、間違えた理由を理解することです。

ステップ1では、テキストと問題集を往復することで、問題を解きながらテキストで学んだ内容を思い出しています。

(意識して思い出そうとしなくとも、問題を解く過程で自然と思い出すという行為をしています)

アクティブ・リコールは「1回読んで覚えなさい!」ではなく、思い出すという行為の繰り返しです。

「テキストを理解してから問題演習で腕試し!」で結果がでない人は、まずはテキストと問題集を周回する学習方法を試してみてください。

ステップ2|テキストに戻る前に自分の言葉で説明する

勉強の進捗に応じて、問題を解いて解説文を読んだ後に、自分の言葉で「できるだけ思い出す」という負荷を追加します。

自分の言葉で説明する

解説を読んだ後に、正しい定義と間違えた理由を(できれば)声に出して説明します。

(周囲に人がいるならば、メモアプリに入力したり、頭の中で説明します)

ポイントは、解説文を複製するのではなく、自分の言葉で一から文章で説明することです。

ステップ2では、文章で説明するための思い出す行為が、アクティブリコールにあたります。

声に出した説明が成立するならば、問題集の解説文の余白に書き出します。

(説明できたことを忘れても、思い出すヒントになります)

声に出して説明できないならば、解説を読んでも理解していないといえるため、テキストを読み知識を補います。

(理解したつもりにならないために声に出して説明します)

解説文の正誤の理由を読んで覚えるよりも、学んだ(はずの)正しい定義を何度も思い出しながら自分で定義する学習方法です。

自分で説明する方法は、読むよりも時間を費やすというデメリットもあります。

しかし、正解までのプロセスを何度も自分の言葉で考えるため、既に学んだ概念間をつなげる効果が期待できます。

そして、「できるだけ思い出す」勉強方法は、いざ忘れたときに「思い出す」手順になります。

ちなみに、「声に出して説明する」はファインマンテクニックという手法を取り入れています。

説明する人 丸暗記に頼りたくない方は必見!独学にも応用できる理解を深める勉強法「ファインマンテクニック」

参考|テキストに載っていて問題集にはない論点は?

過去問を収録した問題集で起こり得るケースです。

問題集にない論点は、積極的に問題集を解くだけではアクティブリコールできないため、テキストを読み、自分で問題を作成します。

……しかし、なかなか難しい事情もあるでしょう。

作問しない方法を2つ紹介します。

  • テキスト(目)を閉じ、勉強した内容を思い出しながら自分の言葉で声に出して説明する
  • 「テキストを読む⇒覚える」よりも、「勉強した内容を思い出す⇒テキストを読んで確認する」の流れで勉強する

私は、次のように使い分けています。

  • 勉強を始めた段階
    テキストを読む⇒読んだ内容をテキストを閉じて思い出す
  • 勉強が進んだ段階
    目次や索引から(今日これから)勉強する範囲を思い出す⇒テキストで確認する。

上の「勉強が進んだ段階」における「思い出す」は、交通機関を利用する際の時間、掃除や入浴など、何かと合わせて行えます。

事前に思い出しておけば、テキストを読む時間は思い出した(または出せなかった)ことを確認する時間に変わります。

まとめ

ここまで、アクティブ・リコールが有効な理由と、アクティブ・リコールを取り入れた勉強方法を紹介しました。

アクティブ・リコール勉強法とはその名の通り、能動的に思い出す勉強法です。

思い出すというアウトプットは、テキストを読むよりも負担がかかります。

しかし、単に読むよりも記憶を定着させる効果が高いことが研究で示されています。

テキストを読む勉強も大切ですが、「何周読んでも覚えられない…」と行き詰った際は「読むこと」よりも「思い出す」比率を上げてみてください。

そして、アクティブ・リコールはあくまで学習手段であり、1度行えば勉強が完結するものではありません。

アクティブ・リコールが「思い出す」を繰り返すように、勉強は繰り返し(継続)が大切です。

何かを独学する際は陰ながら応援しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。


(参考)

Retrieval Practice Produces More Learning than Elaborative Studying with Concept Mapping|https://www.science.org/doi/10.1126/science.1199327

Repeated testing produces superior transfer of learning relative to repeated studying.|
https://www.semanticscholar.org/paper/Repeated-testing-produces-superior-transfer-of-to-Butler/f0e926efa384f3c5a12071cfe393ce6c59d881d7?p2df