この記事では、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)から、次の事項を解説しています。
- 総則(1章)
- 国、事業主及び労働者の責務(11条の2、11条の4)
- 紛争の解決(3章)
- 雑則(4章)
- 罰則(5章)
社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
概要

はじめに、男女雇用機会均等法(均等法)の概要を解説します。
均等法では、おおむね次の問題を扱います。
- 雇用の分野における性別を理由とする差別の禁止
- 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益な取扱いの禁止
- 職場における性的な言動に起因する問題への対応
- 求職活動等における性的な言動に起因する問題への対応(令和8年10月1日施行)
- 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題への対応
- 妊娠中および出産後の健康管理に関する措置を講じること
①②は、事業主に義務付けられた禁止事項です。
③~⑤は、事業主に「雇用管理上の措置」を実施するよう義務付けています。
簡単にいうと、③は労働者へのセクハラ、④は求職者へのセクハラ、⑤は労働者へのマタハラについて、それぞれ相談窓口の設置などが求められています。
⑥は妊婦健診を受けられるよう時間の確保などが義務付けられています。
なお、一般的にマタハラに含まれる「育児」に係るハラスメントについては、育児介護休業法にて事業主が講ずべき措置が定められています。
(介護に係るハラスメントについても育児介護休業法で定められています)
社労士試験の勉強のため条文を載せておきます。
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
1 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
2 事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従って、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならない。
第1条における「法の下の平等を保障する日本国憲法の理念」とは、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定した憲法14条の考え方をいいます(令和8年4月24日 雇均発0424第1号。以下単に「通達」と表記します)
労働者
第2条の「労働者」とは、雇用されて働く者をいい、求職者を含みます(通達)
(均等法5条および7条では、労働者の募集および採用(つまり求職者)についても、性別を理由とする差別を禁止しています)
事業主
「事業主」とは、事業の経営の主体をいい、個人企業の場合はその企業主個人、会社その他の法人組織の場合はその法人をいいます(通達)
なお、事業主以外の従業者が自らの裁量で行った行為についても、事業主から委任された権限の範囲内で行ったものであれば事業主のために行った行為と考えられるため、事業主はその行為につき均等法に基づく責任を有すると解されています(通達)
求職者等
「求職者等」とは、下記の者をいいます(均等法13条1項、均等則2条の3)
- 求職者
- 事業主の実施する労働者の採用に資する活動に参加する者
- 教育実習、看護実習その他の実習を受ける者
「求職者」とは、当該事業主に雇用されようとし、その意思を表示している者をいいます。例えば、事業主が実施する募集に応じた者や当該事業主が実施する採用面接を受ける者が該当します(通達)
「事業主の実施する労働者の採用に資する活動に参加する者」とは、当該事業主が行う就職説明会、インターンシップ、OB・OG訪問などの活動に参加している者を指します。なお、授業の一環としての社会科見学や企業を招いた講演会等の専ら教育を目的として行われるものに参加する者は含まれません(通達)
「教育実習、看護実習その他の実習を受ける者」とは、当該事業主に職場において実習生として受け入れられ、実習活動を行う者をいいます(通達)
また、求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動を「求職活動等」といいます(均等法13条1項。その例は、上記に示した活動を参照)

- 性的言動問題
⇒ 職場における性的な言動に起因する問題 - 求職活動等における性的言動問題
⇒ 求職者等の求職活動等を阻害する性的な言動に起因する問題 - 妊娠・出産等関係言動問題
⇒ 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題
以降、上記の問題を総称して、均等法におけるハラスメント問題と表記しています。
均等法におけるハラスメント問題については、いずれも国、事業主、労働者それぞれの責務(努力義務)が定められています(均等法12条、14条、16条)
国の責務
国については、次の責務が定められています。
- 均等法におけるハラスメント問題について、事業主その他国民一般の関心と理解を深めるために、広報活動、啓発活動などの措置を講じるように努める。
事業主の責務
事業主については、次の責務が定められています。
- 均等法におけるハラスメント問題について、雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、労働者が他の労働者又は求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施などの必要な配慮をするように努める。
- 国の講ずる措置に協力するように努める。
- 事業主(その者が法人の場合は、その役員)自らも、均等法におけるハラスメント問題に対する関心と理解を深め、労働者又は求職者等に対する言動に必要な注意を払うように努める。
事業主に対しては、上記責務(努力義務)の他に、雇用管理上の措置(相談窓口の設置など)を講じる義務(努力ではなく義務)も定められています。
労働者の責務
- 均等法におけるハラスメント問題について理解を深め、他の労働者又は求職者等に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努める。
紛争の解決

簡単にいうと、裁判とは別の解決手段です。
均等法についての紛争が生じた場合は、先ずは、企業内において労使で構成される苦情処理機関にて自主的に解決するよう努力義務が課せられています。
ただし、会社内で紛争を完結するよう義務付けるものではなく、行政による援助も定められています。
事業主は、次の事項(労働者の募集および採用に係る紛争を除く)に関し、労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めなければなりません(均等法21条)
- 労働者の性別を理由とした差別的取扱いの禁止(6条)
- 合理的な理由がない場合の間接差別の禁止(7条)
- 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等(9条)
- 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(17条、18条1項)
苦情処理機関とは、事業主を代表する者および当該事業場の労働者を代表する者を構成員とする、当該事業場の労働者の苦情を処理するための機関をいいます(均等法21条)
労働者と事業主との間の紛争のうち、次の各規定についてのもの(以下、特例対象の紛争)には、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく助言、指導、あっせんは行われません(均等法16条)
- 性別を理由とする差別の禁止(5条、6条)
- 性別以外の事由を要件とする措置(7条)
- 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等(9条)
- 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等(11条1項、2項)
- 求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等(13条1項、2項)
- 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等(15条1項、2項)
- 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(17条、18条1項)
特例対象の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律ではなく、男女雇用機会均等法で定める手段(これから解説します)により解決が図られます。
(行政は特例対象の紛争に関与しない という意味ではありません)
都道府県労働局長は、特例対象の紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、均等法に基づいて、必要な助言、指導、勧告をすることができます(均等法17条1項)
都道府県労働局長による助言、指導又は勧告については、労働者の募集および採用に係る紛争も対象です。
都道府県労働局長は、特例対象の紛争(労働者の募集及び採用についての紛争を除く)について、紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会に調停を行わせる(委任する)ことになっています(均等法18条1項)
紛争調整委員会(労働委員会とは別の機関です)は、都道府県労働局に設置されています。なお、委員は学識経験を有する者から、厚生労働大臣が任命します。
参考|調停とは
調停の趣旨は、次のように説明されています(通達)
- 「調停」とは、紛争の当事者の間に第三者が関与し、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものである。
- 行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものである。
ちなみに、「あっせん」と比較すると、「調停」では合意を促すために調停案の受諾を勧告することができるため、より解決に踏み込んだ制度ともいえます。
労働者による次の行為を理由として、事業主が当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されています(均等法23条2項、24条2項)
- 労働者が都道府県労働局長の援助(助言、指導又は勧告)を求めたこと
- 労働者が調停の申請をしたこと
雑則、罰則

雑則では、次の事項を定めています。
- 職業生活に関し必要な調査研究(34条)
- 報告の徴収と事業主に対する行政指導(35条)
- 勧告に従わない事業主の公表(36条)
- 船員に関する特例(国土交通省の管轄となるよう読替え)(37条)
- 適用除外(国家公務員および地方公務員への一部適用除外など)(38条)
この記事では②と③を解説します。
厚生労働大臣は、均等法の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができます(均等法35条)
上記の報告をせず、または虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処せられます(均等法39条)
ちなみに、行政指導(助言、指導、勧告)に従わないこと自体には、罰則の適用はありません。
(必ずしも法令違反に直結するわけではありませんが、行政指導の対象となった行為そのものは、各規定の違反になり得ます)
厚生労働大臣が、次に掲げる規定に違反している事業主に対して、均等法35条の勧告をした場合の定めです。
上記の勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、厚生労働大臣はその旨を公表することができます(均等法30条)
違反すると公表の対象となる規定は次のとおりです(均等法30条)
- 性別を理由とする差別の禁止(5条、6条)
- 性別以外の事由を要件とする措置(間接差別)の禁止(7条)
- 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(9条1項から3項まで)
- 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(11条1項、2項)
- 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(13条1項、2項)
- 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等(15条1項、2項)
- 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(17条、18条1項)
- 紛争解決の援助を求めたことを理由とする不利益な取扱い(23条2項)
- 調停の申請をしたことを理由とする不利益な取扱い(24条2項)
解説は以上です。
社労士試験では、均等法から出題されたとしても問題数は多くはありません。
試験対策としては、過去問や基本事項を中心に進めてみてください。
実務におかれましては、関連指針も参考にしながら具体的な対応を判断してください。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 男女雇用機会均等法
厚生労働省ホームページ|雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のためによりhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(令和8年4月24日雇均発0424第1号)
- 男女雇用機会均等法のあらまし
- 男女雇用機会均等法Q&A
- 男女雇用機会均等法関係資料


