この記事では、社労士試験の勉強用として、令和6年度の能力開発基本調査の概要(令和7年6月27日公表の資料)を整理しています。
なお、試験日時点では、おそらく最新の調査結果(令和7年度)が公表されています。
この記事は、令和8年度の社労士試験が終了するまで数値を更新しないため、ご了承ください。
調査結果の概要そのものは、下記のリンクをご参照ください。
参考|厚生労働省(外部サイトへのリンク)|能力開発基本調査:結果の概要
当記事は条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。詳しくは免責事項をご確認ください。
調査の概要
能力開発基本調査は、統計法に基づく一般統計調査です。企業、事業所及び労働者(個人)の能力開発の実態を調査し、その調査結果は「労働経済白書」などに活用されています。
調査対象
調査は次の三つに大別されます。
- 企業調査
企業の教育訓練費用、従業員に対する能力開発の方針など - 事業所調査
教育訓練の実施状況、人材育成、能力評価の実施状況、技能継承など - 個人調査
OFF-JTの受講状況、自己啓発の実施状況、これからの職業生活設計など
社労士試験では「事業所調査」から過去2回出題されています。
各調査は単独でも調査項目が多いため、当記事では「事業所調査」のみを掲載しています。
また、過去に出題された論点には既出論点と表示しています。試験勉強の目安にしてください。
調査結果の概要
主な用語の定義です。
- 「事業所」は、30人以上の常用労働者を雇用する事業所のうちから一定の方法により抽出されています。
- 「OFF-JT」とは、業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)を意味します。
- 「自己啓発」とは、職業生活を継続するために行われる、職業に関する能力を自発的に開発・向上させるための活動をいいます。職業に関係ない趣味 、娯楽、スポーツ(健康増進)などは含まれません。
「事業所調査」は、令和6年10月1日時点の状況について、令和6年10月1日から令和6年10月31日までの間に実施されています。
正社員または正社員以外に対してOFF-JTを実施した事業所の割合は7割超(73.8%)です。
その内訳は下記になります。
- 「正社員と正社員以外、両方実施した」 29.0%
- 「正社員のみ実施した」 42.6%
- 「正社員以外のみ実施した」 2.2%。
「正社員」にOFF-JTを実施した事業所の割合は約7割(① + ②)です。
「正社員以外」にOFF-JTを実施した事業所の割合は約3割(① + ③)です。
産業別・企業規模別
(高い・低いの表現や、抽出する項目数は、結果の概要に沿って掲載しています。以下同じ)
産業別にみた「OFF-JTを実施した事業所の割合」は下表になります。
| 項目 | 実施率が高い | 実施率が低い |
| 正社員 | 複合サービス事業(93.3%) 電気・ガス・熱供給・水道業(88.2%) 学術研究、専門・技術サービス業(86.4%) | 生活関連サービス業、娯楽業(50.1%) 教育、学習支援業(52.3%) |
| 正社員以外 | 複合サービス事業(76.0%) サービス業(他に分類されないもの)(45.1%) 宿泊業、飲食サービス業(44.3%) | 建設業(21.2%) 運輸業、郵便業(21.9%) |
また、実施率を企業規模(企業全体の常用労働者数)別にみると、下記の特徴がみられます。
- 正社員については、事業所の規模が大きくなるに従って高くなり、「1,000 人以上」では8割を超えている。
- 正社員以外についても、規模が大きくなるに従って高くなり、「 1,000 人以上」では4割を超えている。
ちなみに、「複合サービス事業」は、郵便局(郵便のみならず貯金、保険を複合的にあつかう事業)、農協、漁協に置き換えるとイメージしやすいかもしれません。
また、「運輸業、郵便業」の「郵便業」は、赤い帽子のサービス(特定信書便)をイメージすると「郵便局」と区別しやすいかもしれません。
OFF-JTの実施機関・内容
実施したOFF-JTの教育訓練機関(複数回答)は、正社員、正社員以外ともに、「自社」の割合が最も高く、次いで、「民間教育訓練機関(民間教育研修会社、民間企業主催のセミナー等)」となっています。
「実施した」OFF-JTの内容は、下記になります(複数回答。高いものから上位三つ。数値は省略)
- 新規採用者など初任層を対象とする研修
- 新たに中堅社員となった者を対象とする研修
- マネジメント(管理・監督能力を高める内容など )
また、「今後実施したい」OFF-JTの内容は下記になります(高いものから上位三つ。数値は省略)
- 新たに管理職となった者を対象とする研修
- マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)
- 新たに中堅社員となった者を対象とする研修
「計画的なOJT」とは、日常の業務に就きながら行われる教育訓練(OJT)のうち、教育訓練に関する計画書を作成するなどして教育担当者、対象者などを具体的に定めて、段階的・継続的に実施する教育訓練をいいます。
正社員または正社員以外に対して「計画的なOJT」を実施した事業所は64.7%です。
(正社員に対しては約6割、正社員以外に対しては3割に満たない)
産業別にみた「計画的なOJTを実施した事業所の割合」は下表になります。
| 項目 | 実施率が高い | 実施率が低い |
| 正社員 | 金融業、保険業(86.1%) 電気・ガス・熱供給・水道業(85.9%) 複合サービス事業(85.7%) | 生活関連サービス業、娯楽業(43.0%) 教育、学習支援業(47.3%) |
| 正社員以外 | 複合サービス事業(64.4%) 教育、学習支援業(38.0%) | 情報通信業(11.2%) 建設業(12.2%) |
また、実施率を企業規模別にみると、下記の傾向がみられます。
- 正社員については、規模が大きくなるほど高くなる。
- 正社員以外についても、おおむね規模が大きくなるほど高くなる。
既出論点能力開発や人材育成に関して「何らかの問題がある」とする事業所は約8割(79.9%)です。
既出論点問題点の内訳は、下記になります(複数回答。高いものから上位三つ)
- 指導する人材が不足している(59.5%)
- 人材を育成しても辞めてしまう(54.7%)
- 人材育成を行う時間がない(47.4%)
正社員または正社員以外に対してキャリアコンサルティングを行う仕組みを導入している事業所は5割(50.0%)です。
(正社員に対しては約5割、正社員以外に対しては約3割)
仕組みを導入している事業所の割合を産業別・企業規模別にみると、次の特徴がみられます(数値は省略)
- 産業別|正社員、正社員以外ともに、「金融業、保険業」、「複合サービス事業」が高い。
- 企業規模別|正社員、正社員以外ともに、「1,000 人以上」の規模が最も高い。
ちなみに、労働者からの相談を受ける側の人が「キャリアコンサルタントである」割合は11.2%、「そうではない」割合は72.7%となっています。
実施時期
キャリアコンサルティングの実施のタイミングは、正社員については下記になります(複数回答。高いものから上位三つ。数値は省略)
- 1年に1回、3年に1回など、定期的に実施する
- 労働者から求めがあった時に実施する
- 人事評価のタイミングに合わせて実施する
また、正社員以外については下記になります(高いものから上位三つ。数値は省略)
- 労働者から求めがあった時に実施する
- 1年に1回、3年に1回など、定期的に実施する
- 人事評価のタイミングに合わせて実施する
目的・効果
キャリアコンサルティングの目的・効果については下記になります(複数回答。数値は省略)
- 行う目的は、正社員、正社員以外ともに、「労働者の仕事に対する意識を高め、職場の活性化を図るため」が最も高く、次いで「労働者の自己啓発を促すため」となっている。
- 行った効果については、「労働者の仕事への意欲が高まった」が最も高く、次いで「自己啓発する労働者が増えた」となっている。
問題点
キャリアコンサルティングを行う上で「問題がある」とする事業所の割合は、「正社員」「正社員以外」ともに約7割です。
既出論点問題の内訳をみると、「正社員」「正社員以外」ともに次の割合が高くなっています(複数回答。数値は省略)
- キャリアに関する相談を行っても、その効果が見えにくい
- 労働者からのキャリアに関する相談件数が少ない
仕組みを導入していない理由
キャリアコンサルティングを行う仕組みがない事業所のうち、行っていない理由としては、「正社員」「正社員以外」ともに下記の割合が高くなっています(複数回答。数値は省略)
- 労働者からの希望がない
- キャリアコンサルタント等相談を受けることのできる人材を内部で育成することが難しい
ジョブ・カードの認知状況は、次のとおりです。
- 「内容を含めて知っており活用している」 1.9%
- 「内容を含めて知っているが活用していない」 18.5%
- 「名称(言葉)は聞いたことがあるが内容は知らない」 40.9%
- 「名称(言葉)を聞いたことがなく、内容も知らない」 38.5%
用語の説明によると、「ジョブカード」は、職業能力開発促進法に基づく労働者のキャリアプランに即した自発的な職業能力開発を促進するための「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」のツールであり、事業所にとっては主に採用活動や雇用型訓練等の場面で活用されるもの と説明されています。
もう少し直感的にいうと、共通のルール(所定の様式)によって自分の職業能力(自己分析、職務経歴、免許・資格など)を整理し、可視化したもの(データ)です。
既出論点労働者の主体的なキャリア形成に向けて(事業所が)実施した取組は、下記になります(複数回答。割合の高いものから上位三つ。数値は省略)
- 上司による定期的な面談の実施(1 on 1ミーティング等)
- 職務の遂行に必要なスキル・知識等に関する情報提供
- 自己啓発に対する支援
また、今後実施したい取り組みの内容は、下記になります(複数回答。割合の高いものから上位三つ。数値は省略)
- 職務の遂行に必要なスキル・知識等に関する情報提供
- 上司による定期的な面談の実施(1 on 1ミーティング等)
- 自己啓発に対する支援
自己啓発に対する支援
既出論点労働者の自己啓発に対する支援を行っている事業所は8割超(85.4%)です。
(正社員に対しては8割超、正社員以外に対しては6割超)
既出論点自己啓発に対する支援の内容(複数回答)としては、「受講料などの金銭的援助」が最多です。
(上記は正社員 74.7%、正社員以外58.7%となり、他の項目より突出しています)
一方、下記の割合は少なくなっています。
- 教育訓練休暇(有給、無給の両方を含む)の付与
- 兼業・副業の推進・容認
(上段については正社員 17.4%、正社員以外 15.5%。下段については正社員15.5%、正社員以外 20.5%)
労働者の能力開発を処遇に反映させている事業所は約7割(71.8%)です。
どのような形で処遇に反映させているか(複数回答)については、下記になります。
正社員(割合の高いもの順。数値は省略)
- 「賃金(賞与・給与)の引上げ(一時金又は手当の支給を含む)」
- 「役職等の昇進・昇格」
- 「能力開発の成果を活かすことができる部署・担当への異動・配置転換(実践の場の提供)」
正社員以外(割合の高いもの順。数値は省略)
- 「賃金(賞与・給与)の引上げ(一時金又は手当の支給を含む)」
- 「正社員への転換」
- 「能力開発の成果を活かすことができる部署・担当への異動・配置転換(実践の場の提供)」
- 「役職等の昇進・昇格」
ここでの「職業能力評価」とは、職業に必要な技能や能力の評価のうち、会社が独自に作成した評価基準や業界団体で作成した評価基準など、一定の基準により評価が行われているものをいいます。
既出論点職業能力評価を実施している事業所は約5割(54.1%)です。
(正社員に対しては5割台、正社員以外に対しては3割台)
実施している事業所の割合を産業別にみると、下記の特徴がみられます(数値は省略)
- 正社員では、「電気・ガス・熱供給・水道業」が最も高く、「複合サービス事業」、「医療、福祉」と続いている。
- 正社員以外では、「複合サービス事業」が最も高く、次いで「電気・ガス・熱供給・水道業」となっている。
また、企業規模別では、正社員、正社員以外ともに「1,000 人以上」における実施率が最も高くなっています。
評価の活用方法
既出論点職業能力評価の活用方法は、下記になります(複数回答。割合の高いものから上位三つ。数値は省略)
- 人事考課(賞与、給与、昇格・降格、異動・配置転換等)の判断基準
- 人材配置の適正化
- 労働者に必要な能力開発の目標
(人事考課の判断基準が8割超となり、他の項目より突出しています)
検定・資格
職業能力評価について、検定・資格を利用している事業所の割合は約8割(79.9%)です。
評価に利用している検定・資格については、下記になります(複数回答。割合の高いもの順。数値は省略)
- 国家検定・資格(技能検定を除く)又は公的検定・資格(国の認定を受けた団体等検定・社内検定を含む)
- 民間団体が認定する民間検定・資格
- 技能検定
- 事業主等が認定する社内検定・資格
(国家検定・資格又は公的検定・資格が7割超となり、他の項目より突出しています)
また、検定・資格を利用している事業所のうち、検定・資格を「賃金の引上げに反映させている」とする事業所は83.0%となっています。
(省略していない数値は、暗記の推奨ではなく、他の項目と比較しやすいよう掲載しています)
「技能検定」とは、職業能力開発促進法に基づき、労働者の有する技能の程度を検定し、これを公証する国家検定をいいます。
技能検定に合格すると、技能士(例えば、FP技能士など)と称することができます(職業能力開発促進法50条)
- 技能検定を知っている事業所の割合は総数で47.1%
- 産業別にみると、「建設業」(66.3%)、「製造業」(63.5%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(52.2%)」の順に高くなっている。
- 最も低いのは「教育、学習支援業」(23.8%)
- 企業規模別にみると、「100〜299 人」(50.7%)で最も高い。ただし、最も低い「1,000 人以上」(45.6%)と大きな差はない。
技能検定の利点
- 技能検定に利点を感じるとした事業所は総数で86.0%
- 産業別にみると、「サービス業(他に分類されないもの)」(91.8%)、「建設業」(90.7%)、「製造業」(90.4%)の順に高くなっている。
- 最も低いのは「教育,学習支援業」(36.5%)
- 企業規模別にみると、「30〜49 人」(87.3%)で最も高く、すべての企業規模で8割を超えている。
また、技能検定の利点、活用方法の内容としては、下記になります(複数回答。高いもの上位三つ)
- 「労働者の職業意識や職業能力の向上に役立つ」(79.1%)
- 「資格手当や報奨金等の支給根拠として活用している」(40.9%)
- 「採用、配置転換、昇進などに活用できる」(39.2%)
技能検定の問題点
- 技能検定に問題を感じるとした事業所は総数で69.7%
- 産業別にみると、「医療、福祉」(89.6%)が最も高く、次いで「宿泊業、飲食サービス業」(73.2%)、となっている。
- 最も低いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」(44.1%)
- 企業規模別にみると、「30〜49 人」(73.0%)で最も高く、次いで「100〜299 人」(71.3%)となっている。
また、技能検定の問題点の内容としては、下記になります(複数回答。割合の高いもの上位三つ)
- 「技能検定の試験実施回数や試験地が限られている」(41.9%)
- 「技能検定の対象や試験内容が現場で必要な技能と合っていない」(39.0%)
- 「試験の準備や受検する時間等の労働者の拘束時間が長い」(36.9%)
- 技能継承の取組を行っている事業所の割合は、総数で84.6%
- 産業別にみると、「製造業」(94.9%)、「建設業」(94.3%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(93.4%)で9割を超えている。
- 企業規模別にみると、「300〜999 人」(88.8%)で最も高く、いずれの企業規模でも8割を超えている。
既出論点技能継承の取組の内容としては、下記になります(複数回答。割合の高いもの上位三つ)
- 「中途採用を増やしている」( 56.4%)
- 「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」(49.6%)
- 「新規学卒者の採用を増やしている」(33.8%)
なお、上記は、「技能をどのような手段で継承していますか」ではなく、「技能継承への対応としてどのような取組を行っていますか」に対する回答です。
上記三つには及びませんが、事業所外への外注を活用しているや、高度な技能・ノウハウ等が不要なように仕事のやり方、設計等を変更しているとの回答も15%前後あります。
令和6年度の能力開発基本調査(事業所調査)は以上です。
調査項目の多い調査ですので、暗記は過去問の論点に絞って進めてみてください。
以降は、報道関係資料(厚生労働省)から「企業調査」「個人調査」の結果を一部掲載しておきます。
参考|企業調査
- 教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は54.9%
- OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額(令和5年度実績)は1.5万円
- 自己啓発支援に支出した費用の労働者一人当たり平均額(令和5年度実績)は0.4万円
- 教育訓練について「休暇制度」「短時間勤務制度」「所定外労働時間免除制度」を導入している企業は、いずれも1割未満
参考|個人調査
- OFF-JTを受講した労働者は37.0%
- 自己啓発を実施した労働者は36.8%
- OFF-JTまたは自己啓発を実施した労働者の割合は46.9%
(参考資料等)
厚生労働省|能力開発基本調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/104-1.html
厚生労働省|令和6年度「能力開発基本調査」の結果を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00202.html
総務省|日本標準産業分類
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/index.htm

