この記事では、令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査(令和6年10月28日公表)を社労士試験の勉強用に整理しています。
試験勉強の息抜きとして読んでみてください。
当記事は条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
調査の概要
認識の相違を避けるために前置きします。
「賃金引上げ等の実態に関する調査」の調査対象となる(企業ではなく)労働者は、「雇用期間を定めず雇用されている労働者」です。
そのため、有期雇用労働者の賃金引上げについては、本調査では分かりません。
調査の概要
賃金引上げ等の実態に関する調査は、民間企業(労働組合のない企業を含む)における賃金・賞与の改定額、改定率、 賃金・賞与の改定方法、改定に至るまでの経緯等の把握を目的とする、一般統計調査です。
調査の対象となる企業
調査の対象となる企業は、常用労働者(*注)100人以上になる会社組織の民営企業のうちから、産業、企業規模別に層化して無作為に抽出されます。
(*注)期間を定めずに雇われている者、1か月以上の期間を定めて雇われている者のいずれかに該当する労働者とされています。抽出された企業が回答するときの「調査票」にある常用労働者とは、定義が異なります。
ちなみに、令和6年の調査対象企業数は3,622社、有効回答企業数は1,783社で、有効回答率は49.2%です。
調査の対象となる労働者
本調査における用語の定義です(主な用語の定義より)
(各調査事項の対象となる)「常用労働者」は、「雇用期間を定めず雇用されている労働者」をいいます。
調査対象となる常用労働者には、「雇用期間に定めのある労働者」「雇用期間に定めがあって契約期間を更新している労働者」はいずれも含まれません。
なお、「パート・アルバイトで無期雇用」の労働者は、雇用期間を定めず雇用されている労働者です。
調査結果の概要
令和6年の調査事項は次のとおりです。
- 賃金の改定の実施状況
- 賃金の改定額及び改定率
- 定期昇給制度、ベースアップ等の実施状況
- 賃金の改定事情
- 夏の賞与の支給状況、労働組合からの賃上げ要求状況
以降、調査結果の概要より一部を抜粋して、社労士試験の勉強用に整理(数値を変えず文章の表現を編集・加工)しています。
数値の暗記は置いておいて、気軽に読んでみてください。
参考|厚生労働省ホームページ(外部サイトへのリンク)|令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況
(令和6年調査の時期は、令和6年7月20日〜8月10日です)
令和6年中における賃金の改定の実施状況(9〜12月の予定を含む)については、企業の割合として次の内容が公表されています。
- 「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」は91.2%
- 「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」は0.1%
- 「賃金の改定を実施しない」は2.3%
- 「未定」は6.4%
賃金の改定の実施状況を企業規模別にみると、すべての規模で「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合が9割を超えています(いずれも前年の割合を上回る)
なお、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業を産業別にみると、各産業における割合は7割~10割の間で幅があります(第1表)
用語の定義
本調査における用語の定義です(主な用語の定義より)
「1人平均賃金」とは、所定内賃金の1か月1人当たりの平均額をいいます。
「所定内賃金」には能率手当、家族手当、通勤手当などの「諸手当」を含みますが、時間外・休日、深夜の割増手当、慶弔手当などの「特別手当」は含めません。
「賃金の改定」とは、常用労働者(すべて又は一部)を対象とした定期昇給、ベースアップ、諸手当の改定などをいいます。なお、ベースダウンや賃金カットなど賃金の減額も含みます。
(賃金の改定にはマイナス改定も含まれます。ただし、当記事中の数値はすべてプラスです)
令和6年中に「賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業」及び「賃金の改定を実施しない企業」について、賃金の改定状況(9~12月の予定を含む)をみると、次の内容が公表されています。
- 「1人平均賃金の改定額」は11,961円
- 「1人平均賃金の改定率」は4.1%
賃金の改定状況を企業規模別にみると、「1人平均賃金の改定額」「1人平均賃金の改定率」ともに、すべての企業規模で前年を上回っています。
また、労働組合の有無別にみると、次の内容が公表されています。
- 労働組合ありでは「1人平均賃金の改定額」は13,668円、「1人平均賃金の改定率」は4.5%
- 労働組合なしでは「1人平均賃金の改定額」は10,170円、「1人平均賃金の改定率」は3.6%
年次推移

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/24/index.html
賃金の改定状況の年次推移としては、「1人平均賃金の改定額」「1人平均賃金の改定率」ともに、平成23年の調査以降は増加傾向で推移して令和2年、3年調査で低下しましたが、令和4年、5年、6年調査では上昇しています。
定期昇給制度の有無及び実施状況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/24/index.html
令和6年中に「賃金の改定を実施した又は予定している企業」及び「賃金の改定を実施しない企業」について、定期昇給(以下「定昇」という)制度のある企業の定昇の実施状況をみると、次の内容が公表されています。
- 管理職について定昇を「行った・行う」企業の割合は76.8%、「行わなかった・行わない」は4.3%
- 一般職について定昇を「行った・行う」企業の割合は83.4%、「行わなかった・行わない」は2.6%
定昇(定期昇給)とは、あらかじめ労働協約、就業規則等で定められた制度に従って行われる昇給で、一定の時期に毎年増額することをいいます(主な用語の定義より)
ベースアップ等の実施状況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/24/index.html
令和6年中に「賃金の改定を実施した又は予定している企業」及び「賃金の改定を実施しない企業」のうち定昇制度がある企業について、ベースアップ(以下「ベア」という)等の実施状況をみると、次の内容が公表されています。
- 管理職について「ベアを行った・行う」企業の割合は47.0%、「ベアを行わなかった・行わない」は18.1%
- 一般職について「ベアを行った・行う」企業の割合は52.1%、「ベアを行わなかった・行わない」は14.9%
ベア(ベースアップ)とは、賃金表(学歴、年齢、勤続年数、職務などの要素を用いて賃金の基準を定めた表)の改定による賃金水準の引き上げをいいます(主な用語の定義より)
賃金の改定に当たり最も重視した要素
令和6年中に「賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業」について、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素をみると、次の内容が公表されています。
- 「企業の業績」の割合が35.2%と最も多い
- 次いで「労働力の確保・定着」が14.3%、「雇用の維持」が12.8%
企業の業績評価及び業績評価の理由
令和6年中に「賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業」のうち、賃金の改定の決定に当たり「企業の業績」を重視したと回答した企業(複数回答)について、企業の業績評価をみると、次の内容が公表されています。
- 「良い」と回答した企業が 45.6%、「悪い」と回答した企業が 15.2%、「どちらともいえない」と回答した企業が 37.9%
- 「良い」と回答した企業について、評価の理由をみると、「販売数の増加・減少」が 35.0%で最も多い
- 「悪い」と回答した企業について、評価の理由をみると、「販売数の増加・減少」が 9.1%で最も多い
夏の賞与の支給状況
令和6年における夏の賞与の支給状況について企業の割合をみると、次の内容が公表されています。
- 「支給した又は支給する(額決定)」は88.1%、「支給するが額は未定」は3.9%、「支給しない」は6.5%
- 産業別にみると、「支給しない」では、「宿泊業、飲食サービス業」が17.8%と最も高い
労働組合からの賃上げ要求状況
労働組合からの賃上げ要求状況については、次の内容が公表されています。
- 令和6年における労働組合がある企業の割合は24.5%(本調査における割合です)
- 労働組合がある企業を100とした場合の、「賃上げ要求交渉があった」企業の割合は80.2%、「賃上げ要求交渉がなかった」企業の割合は15.6%
令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査は以上です。
賃上げへの関心は高まっていますので、社労士試験の勉強としても次の二つは覚えておいて損はないでしょう。
- 1人平均賃金を「引き上げた・引き上げる」企業の割合は、すべての企業規模で9割を超えている(いずれも前年の割合を上回る)
- 1人平均賃金の「改定率」は4.1%となっている
なお、繰り返しになりますが、調査対象は「雇用期間を定めず雇用されている労働者」です。
(参考資料)
厚生労働省ホームページ|令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/24/index.html