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まえがき

この記事では、令和6年労使関係総合調査(実態調査)を社労士試験の勉強用に整理しています。

(令和7年6月24日公表ですので、令和8年の社労士試験に対応する調査結果です)

試験勉強の息抜きとして読んでみてください。

当記事は条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。詳しくは免責事項をご確認ください。

調査の概要

労使関係総合調査は、次の二つの調査の総称です。

  • 労使関係総合調査(労働組合基礎調査)
  • 労使関係総合調査(実態調査)

①については、労働組合及び労働組合員の産業、企業規模等、労働組合組織の実態を明らかにすることを目的に、毎年実施される一般統計調査です(毎年「労働組合基礎調査」として行われます)

②については、労使間の意思の疎通を図るためにとられている方法、その運用状況等、事業所側の意識及び労働者の意識等の実態を明らかにすることを目的に、毎年実施される一般統計調査です。

実態調査

②の労使関係総合調査(実態調査)は、毎年テーマを変えて実施され、テーマごとに調査名が次のように変化します。

  • 労使間の交渉等に関する実態調査
  • 労働組合活動等に関する実態調査
  • 労使コミュニケーション調査(5年に1回)

令和6年労使関係総合調査(実態調査)は「労使コミュニケーション調査」 が行われました。

そのため、この記事で取り扱う統計調査は「令和6年労使関係総合調査(実態調査)」であり、「令和6年労使コミュニケーション調査」です。

なお、「労使コミュニケーション調査」の調査事項は、「事業所調査」と「労働者調査」に大別されます。


調査結果の概要(事業所調査)

当該調査は、令和6年6月30日現在の状況について、同年7月に行われています。

簡単にいうと、「労使コミュニケーション調査」のうち、事業所側の認識です。


労使関係についての事業所の認識

労使関係の維持について、事業所の認識です。

  • 「安定的に維持されている」29.8%、「おおむね安定的に維持されている」56.4%、「どちらともいえない」10.5%、「やや不安定である」1.4%、「不安定である」0.2%
  • 企業規模別にみると、5,000 人以上では「安定的に維持されている」が最も多く、5,000 人未満ではそれぞれ「おおむね安定的に維持されている」が最も多い
  • 労働組合の有無別にみると、「労働組合がある」事業所では「安定的に維持されている」が最も多く、「労働組合がない」事業所では「おおむね安定的に維持されている」が最も多い

「安定的に維持されている」と「おおむね安定的に維持されている」を合わせた「安定的」と認識している事業所の割合は、8割を超えています。

事業所が重視する労使コミュニケーションの内容

複数回答です(重視する事項上位三つを抜粋)

  • 「日常業務改善」76.1%が最も多く、次いで「作業環境改善」71.7%、「職場の人間関係」68.6%
  • 「労働組合がある」事業所では「作業環境改善」75.6%、「賃金、労働時間等労働条件」75.1%、「日常業務改善」73.2%
  • 「労働組合がない」事業所では「日常業務改善」77.6%、「職場の人間関係」71.4%、「作業環境改善」69.9%

労使協議機関

  • 「労使協議機関がある」事業所(企業全体にある場合を含む。以下同じ。)の割合は 36.4%
  • 「労使協議機関がある」事業所の割合を企業規模別にみると、300 人未満では2割程度であるが、規模が大きくなるにつれてその割合は大きくなり、5,000 人以上では 80.5%

労使協議機関に付議する事項(複数回答)については、次のとおりです。

  • 「労働時間・休日・休暇に関する事項」86.0%が最も多く、次いで「安全衛生に関する事項」75.9%、「賃金・退職給付に関する事項」72.4%など
  • 専門委員会で取り扱う事項は「安全衛生に関する事項」34.4%が最も多い

職場懇談会

本調査における「職場懇談会」とは、管理者と従業員が職場(課・グループなど)を単位として一定の業務運営、職場環境等について話し合うための会合をいいます。ただし、労働組合が行う団体交渉は該当しません。

  • 「職場懇談会がある」事業所の割合は 49.9%
  • 令和5年1年間に「職場懇談会が開催された」は 86.6%

令和5年1年間に開催された職場懇談会における話合い事項(複数回答)については、次のとおりです。

  • 「日常業務の改善・運営に関すること」85.9%が最も多く、次いで「安全衛生に関すること」65.0%、「経営方針、生産、販売等の計画に関すること」47.4%など

苦情処理機関

本調査における「苦情処理機関」とは、賃金、配置転換、日常の作業条件等について、従業員個人の苦情を解決するための労使代表で構成される常設機関をいいます。

苦情処理の有無

  • 「苦情処理機関がある」事業所の割合は 67.3%、「苦情処理機関がない」は 31.8%
  • 「苦情処理機関がある」事業所の割合を企業規模別にみると、300 人未満では5~6割程度であるが、規模が大きくなるにつれてその割合は大きくなり、5,000 人以上では 82.8%
  • 「苦情処理機関がある」事業所について、その種類(複数回答)をみると、「相談窓口(電子メールでの受付を含む)」86.6%が最も多い

苦情の解決状況

苦情処理機関として「相談窓口」がある事業所については、次のとおりです。

  • 令和5年1年間に「苦情処理機関の利用があった」割合は 42.6%
  • そのうち解決状況をみると、「実際に救済・解決に至ったものが多い」46.9%が最も多く、次いで「話を聞いて納得したものが多い」42.4%、「解決されない苦情が多い」 3.6%

苦情処理機関として「苦情処理委員会」がある事業所については、次のとおりです。

  • 令和5年1年間に「苦情処理機関の利用があった」の割合は 23.2%
  • そのうち解決状況をみると、「実際に救済・解決に至ったものが多い」46.6%が最も多く、次いで「話を聞いて納得したものが多い」44.6%、「解決されない苦情が多い」 7.9%

苦情処理機関を利用した際の苦情の内容

令和5年1年間に苦情処理機関の利用があった事業所における、苦情の内容(複数回答)です。

  • 相談窓口
    「人間関係に関すること」75.3%が最も多く、次いで「日常業務の運営に関すること」43.6%、「賃金、労働時間等労働条件に関すること」30.1%など
  • 苦情処理委員会
    「人間関係に関すること」51.0%が最も多く、次いで「日常業務の運営に関すること」43.7%、「人事(人員配置・出向、昇進・昇格等)に関すること」22.7%など

外部の機関(公共機関を含む)等の利用

本調査における「外部の機関(公共機関を含む)等」とは、都道府県労働局(都道府県労働局の総合労働相談コーナー、雇用環境・均等部(室)、労働基準監督署、公共職業安定所を含む)、都道府県の機関(都道府県の労働相談センター、労政主管事務所、都道府県労働委員会を含む)、裁判所(労働審判制度を利用した場合を含む)、社外の機関や専門家(カウンセラー、弁護士を含む)等をいいます。

利用した機関

  • 令和5年1年間に従業員との紛争を解決するために「外部の機関(公共機関を含む)等を利用したことがある」事業所の割合は 9.0%
  • 利用した機関(複数回答)は、「社外の機関や専門家(カウンセラー、弁護士等)」83.4%が最も多く、次いで「都道府県労働局」17.9%、「裁判所」7.4%など

今後の利用希望

  • 今後の外部の機関等の利用希望の有無をみると、「利用したい」23.6%、「利用したいと思わない」12.5%、「わからない」61.7%
  • 「利用したいと思わない」事業所について、その理由(複数回答)をみると、「自社の実態に即した解決ができない」41.1%が最も多く、次いで「職場の労使関係が不安定になる」32.8%、「解決に費用がかかる」21.6%など

「事業所調査」は以上です。


調査結果の概要(労働者調査)

当該調査も、令和6年6月30日現在の状況について、同年7月に行われています。

簡単にいうと、「労使コミュニケーション調査」のうち、労働者側の認識です。


労使関係についての労働者の認識

事業所での労使コミュニケーションがどの程度良好であるかについて、労働者の認識です。

  • 「良い」55.8%、「どちらともいえない」34.3%、「悪い」8.9%
  • 良好度指数(「良い」-「悪い」)でみると、46.9 ポイント

労働者が重視する労使コミュニケーションの内容

複数回答です(重視する事項上位三つを抜粋)

  • 「職場の人間関係」66.0%が最も多く、次いで「日常業務改善」59.0%、「作業環境改善」52.5%

労働組合に関する意識

本調査における「企業内に労働組合がある」事業所は 42.7%です。

企業内労組への加入状況

「企業内に労働組合がある」事業所の労働者における、企業内の労働組合への加入状況です。

  • 「加入している」81.4%、「加入資格があるが加入していない」5.4%、「加入資格がない」13.1%
  • 就業形態別にみると、労働組合に「加入している」は「正社員」では 84.7%、「パートタイム労働者」では 72.3%

企業内労組に加入しない理由

企業内の労働組合に「加入資格があるが加入しない」理由(複数回答)です。

  • 「加入するメリットが見出せないから」51.8%が最多となり、「労働組合や組合活動に興味がないから」38.0%、「組合費を負担するのが嫌だから」24.5%などと続いている
  • 就業形態別にみると、「正社員」では「加入するメリットが見出せないから」が 62.2%と最多。「パートタイム労働者」では「周囲に加入者がいないから」が 49.6%と最多

企業内労組の必要度

労働者が企業内の労働組合について、どの程度必要と考えているかです。

  • 「必要である」52.6%、「どちらともいえない」26.8%、「必要ではない」14.9%
  • 労働組合が「必要である」は、労働組合がある事業所の労働者では 80.5%、労働組合がない事業所の労働者では 32.1%

労使協議機関

労使協議機関があるとする労働者のうち、労使協議機関での協議内容及びその結果について、どの程度知っているかです。

  • 「大体知っている」49.3%「、一部知っている」37.8%、「ほとんど知らない」11.3%
  • 就業形態別にみると、「ほとんど知らない」は「正社員」では 10.3%、「パートタイム労働者」では14.9%

個人の処遇等

過去3年間(令和3年7月1日から令和6年6月30日までの期間。以下同じ)における、自分自身の処遇等についての調査です。

不平・不満の有無

  • 自分自身の処遇等についての不平・不満の有無をみると、「ある」32.8%、「ない」66.6%
  • 事業所等に不平・不満を伝えたことが「ある」労働者は 12.2%
  • 不平・不満を事業所等に伝えたことが「ある」労働者について、どのような方法で伝えたか(複数回答)をみると、「直接上司へ」74.3%が最も多い

不平・不満の内容、伝達の結果

過去3年間に不平や不満を事業所等に伝えたことが「ある」労働者についての調査結果です。

  • 不平や不満の内容(複数回答)別にみると、「日常業務の運営に関すること」44.0%が最多となり、「人事(人員配置・出向、昇進・昇格等)に関すること」43.2%、「人間関係に関すること(パワハラを含む)」40.5%などと続いている
  • 伝達後どのような結果が得られたかをみると、「納得のいく結果が得られた」11.1%、「検討中のようである」25.7%、「納得のいく結果は得られなかった」55.0%

まとめ

調査結果の概要は以上です。

労使関係総合調査(実態調査)は、調査名(テーマ)が毎年変わります。

ちなみに、令和7年調査(結果の概要は令和8年6月公表予定)は「労使間の交渉等に関する実態調査」となります。

年単位では結果を比較しにくい調査ですが、社労士試験では、数年おきに類似の論点が出題されています(択一式では令和6年、令和元年、平成23年に出題)

試験勉強における暗記を行う程度については、過去問を参考にしてみてください。


(参考資料等)

厚生労働省ホームページ|令和6年労使コミュニケーション調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/18-r06.html