同一労働同一賃金ガイドライン(平成30年12月28日厚労告430号。以下、ガイドライン)は、次の①~③に関して定められています。
- パートタイム・有期雇用労働法8条および9条
- 労働者派遣法30条の3および30条の4
- 所定労働時間が通常の労働者と同一であり、かつ、事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者等
当記事では、令和8年10月1日から適用されるガイドラインから①に係る部分を掲載しています。
ちなみに、パートタイム・有期雇用労働法8条および9条を未学習の方は、以降を読み進めると、待遇の差が問題と「なる」「ならない」の区別が分かりにくいかもしれません。先にこちらの記事で概要を学ぶことをお勧めします。
②に係るガイドラインはこちらに掲載しています。
③については、短時間・有期雇用労働法2条3項に規定する「短時間・有期雇用労働者」に該当しないものの、ガイドラインにて留意事項(労働契約法3条2項における「均衡を考慮し」については、ガイドラインを考慮するよう求める旨)が示されています(このブログでは省略します)
なお、ガイドラインそのもの(原文)は、下記のリンクをご参照ください。
参考|厚生労働省(外部サイトへのリンク)|短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針
目次 非表示
短時間・有期雇用労働者の待遇の考え方
問題と「なる」「ならない」の具体例の前に、ガイドラインの「考え方」を抜粋して掲載しておきます。
- ガイドラインに原則となる考え方が示されていない待遇についても、不合理と認められる相違の解消等が求められています(ガイドライン「基本的な考え方」より)
- また、待遇の相違の解消等に当たっては、通常の労働者の労働条件を不利益に変更することなく、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者の労働条件の改善を図ることが求められています(ガイドライン「基本的な考え方」より)
(ガイドライン「基本的な考え方」より)
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に基本給、賞与、各種手当等の賃金その他の待遇に相違がある場合において、その要因として通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の待遇の決定基準・ルールの相違があるときであっても、当該待遇の相違は短時間・有期雇用労働法第8条の適用を受けるものであるが、その相違については、「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で将来の役割期待が異なるため、待遇の決定基準・ルールが異なる」等の主観的又は抽象的な説明では足りず、待遇の決定基準・ルールの相違は、短時間・有期雇用労働法第8条の規定に基づき、客観的及び具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならない。
派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者との間の待遇の相違の要因として派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者の待遇の決定基準・ルールの相違があるときも同様である。
(ガイドライン「第3 短時間・有期雇用労働者 2」より)
定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法の適用を受けるものである。このため、通常の労働者と定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者との間の待遇の相違については、実際に両者の間に職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情の相違がある場合は、その相違に応じた待遇の相違は許容される。
さらに、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。
定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合のそれぞれの待遇について、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。
したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない。
(ガイドライン「第3 短時間・有期雇用労働者 3」より)
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に基本給、賞与、各種手当等の待遇に相違がある場合において、その要因として当該待遇を行う目的に「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的があったとしても、当該待遇の相違が不合理と認められるか否かは、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の他の性質及び当該待遇を行う他の目的にも照らして適切と認められるものの客観的及び具体的な実態に照らして判断されるものであり、「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的があることのみをもって直ちに当該待遇の相違が不合理ではないと当然に認められるものではない。
具体例、留意事項
ここからは、短時間・有期雇用労働者の待遇に関して、原則となる考え方及び具体例並びに留意すべき事項となります。
(以降は、「補足」と示して追記した部分を除いて、ガイドラインの原文のままです)
① 基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給するもの
基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の能力又は経験を有する短時間・有期雇用労働者には、能力又は経験に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給しなければならない。また、能力又は経験に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- 基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、ある能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。通常の労働者であるXは、このキャリアコースを選択し、その結果としてその能力を習得した。短時間労働者であるYは、その能力を習得していない。A社は、その能力に応じた基本給をXには支給し、Yには支給していない。
- A社においては、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している。A社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給している。
- A社においては、同一の職場で同一の業務に従事している有期雇用労働者であるXとYのうち、能力又は経験が一定の水準を満たしたYを定期的に職務の内容及び勤務地に変更がある通常の労働者として登用し、その後、職務の内容や勤務地に変更があることを理由に、Xに比べ基本給を高く支給している。
- A社においては、同一の能力又は経験を有する通常の労働者であるXと短時間労働者であるYがいるが、XとYに共通して適用される基準を設定し、就業の時間帯や就業日が日曜日、土曜日又は国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日(以下「土日祝日」という。)か否か等の違いにより、時間当たりの基本給に差を設けている。
(問題となる例)
- 基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの経験を有することを理由として、Xに対し、Yよりも基本給を高く支給しているが、Xのこれまでの経験はXの現在の業務に関連性を持たない。
② 基本給であって、労働者の業績又は成果に応じて支給するもの
基本給であって、労働者の業績又は成果に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の業績又は成果を有する短時間・有期雇用労働者には、業績又は成果に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給しなければならない。また、業績又は成果に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。
なお、基本給とは別に、労働者の業績又は成果に応じた手当を支給する場合も同様である。
(問題とならない例)
- 基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、所定労働時間が通常の労働者の半分の短時間労働者であるXに対し、その販売実績が通常の労働者に設定されている販売目標の半分の数値に達した場合には、通常の労働者が販売目標を達成した場合の半分を支給している。
- A社においては、通常の労働者であるXは、短時間労働者であるYと同様の業務に従事しているが、Xは生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、待遇上の不利益を課されている。その一方で、Yは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、待遇上の不利益を課されていない。A社は、待遇上の不利益を課していることとの見合いに応じて、XにYに比べ基本給を高く支給している。
(問題となる例)
- 基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、通常の労働者が販売目標を達成した場合に行っている支給を、短時間労働者であるXについて通常の労働者と同一の販売目標を設定し、それを達成しない場合には行っていない。
(補足)
問題となる例では短時間労働者の販売目標が通常の労働者と同一に設定されています。
所定労働時間が短いにもかかわらず、通常の労働者と同一の販売目標を達成しないと「労働者の業績又は成果に応じて支給する基本給」が支給されないため、フェアな取扱いとはいえないでしょう。
(問題とならない例は、販売目標が所定労働時間に応じて設定されています)
③ 基本給であって、労働者の勤続年数に応じて支給するもの
基本給であって、労働者の勤続年数に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の勤続年数である短時間・有期雇用労働者には、勤続年数に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給しなければならない。また、勤続年数に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- 基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価した上で支給している。
(問題となる例)
- 基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価せず、その時点の労働契約の期間のみにより勤続年数を評価した上で支給している。
④ 昇給であって、労働者の勤続による能力の向上に応じて行うもの
昇給であって、労働者の勤続による能力の向上に応じて行うものについて、通常の労働者と同様に勤続により能力が向上した短時間・有期雇用労働者には、勤続による能力の向上に応じた部分につき、通常の労働者と同一の昇給を行わなければならない。また、勤続による能力の向上に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた昇給を行わなければならない。
賞与であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- 賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXと同一の会社の業績等への貢献がある有期雇用労働者であるYに対し、Xと同一の賞与を支給している。
- A社においては、通常の労働者であるXは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、待遇上の不利益を課されている。その一方で、通常の労働者であるYや、有期雇用労働者であるZは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、待遇上の不利益を課されていない。A社は、Xに対しては、賞与を支給しているが、YやZに対しては、待遇上の不利益を課していないこととの見合いの範囲内で、賞与を支給していない。
(問題となる例)
- 賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXと同一の会社の業績等への貢献がある有期雇用労働者であるYに対し、Xと同一の賞与を支給していない。
- 賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。
(注) (補足:当該注記は、長澤運輸事件最高裁判決を踏まえて追加されています)
賞与については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の労働意欲の向上等の様々な性質及び目的が含まれうるものであるが、通常の労働者と同様に短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず、短時間・有期雇用労働者に対し、通常の労働者との間の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの相違に応じた均衡のとれた内容の賞与を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当しない他の短時間・有期雇用労働者に比べ基本給を高く支給している等の事情もない場合、当該賞与の相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべきである。
(補足:退職手当については、メトロコマース事件最高裁判決を踏まえて追加されています)
退職手当については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、労務の対価の後払い、功労報償等の様々な性質及び目的が含まれうるものであるが、通常の労働者と同様に短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず、短時間・有期雇用労働者に対し、通常の労働者との間の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの相違に応じた均衡のとれた内容の退職手当を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当しない他の短時間・有期雇用労働者に比べ基本給を高く支給している等の事情もない場合、当該退職手当の相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべきである。
① 役職手当であって、役職の内容に対して支給するもの
役職手当であって、役職の内容に対して支給するものについて、通常の労働者と同一の内容の役職に就く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の役職手当を支給しなければならない。また、役職の内容に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた役職手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- 役職手当について、役職の内容に対して支給しているA社において、通常の労働者であるXの役職と同一の役職名(例えば、店長)であって同一の内容(例えば、営業時間中の店舗の適切な運営)の役職に就く有期雇用労働者であるYに対し、同一の役職手当を支給している。
- 役職手当について、役職の内容に対して支給しているA社において、通常の労働者であるXの役職と同一の役職名であって同一の内容の役職に就く短時間労働者であるYに、所定労働時間に比例した役職手当(例えば、所定労働時間が通常の労働者の半分の短時間労働者にあっては、通常の労働者の半分の役職手当)を支給している。
(問題となる例)
- 役職手当について、役職の内容に対して支給しているA社において、通常の労働者であるXの役職と同一の役職名であって同一の内容の役職に就く有期雇用労働者であるYに、Xに比べ役職手当を低く支給している。
② 業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊作業手当
通常の労働者と同一の危険度又は作業環境の業務に従事する短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の特殊作業手当を支給しなければならない。
③ 交替制勤務等の勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当
通常の労働者と同一の勤務形態で業務に従事する短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の特殊勤務手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、通常の労働者か短時間・有期雇用労働者かの別を問わず、就業する時間帯又は曜日を特定して就業する労働者には労働者の採用が難しい早朝若しくは深夜又は土日祝日に就業する場合に時給に上乗せして特殊勤務手当を支給するが、それ以外の労働者には時給に上乗せして特殊勤務手当を支給していない。
- A社においては、通常の労働者であるXについては、入社に当たり、交替制勤務に従事することは必ずしも確定しておらず、業務の繁閑等生産の都合に応じて通常勤務又は交替制勤務のいずれにも従事する可能性があり、交替制勤務に従事した場合に限り特殊勤務手当が支給されている。短時間労働者であるYについては、採用に当たり、交替制勤務に従事することを明確にし、かつ、基本給に、通常の労働者に支給される特殊勤務手当と同一の交替制勤務の負荷分を盛り込み、通常勤務のみに従事する短時間労働者に比べ基本給を高く支給している。A社はXには特殊勤務手当を支給しているが、Yには支給していない。
④ 精皆勤手当
通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の精皆勤手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、考課上、欠勤についてマイナス査定を行い、かつ、そのことを待遇に反映する通常の労働者であるXには、一定の日数以上出勤した場合に精皆勤手当を支給しているが、考課上、欠勤についてマイナス査定を行っていない有期雇用労働者であるYには、マイナス査定を行っていないこととの見合いの範囲内で、精皆勤手当を支給していない。
⑤ 時間外労働に対して支給される手当
通常の労働者の所定労働時間を超えて、通常の労働者と同一の時間外労働を行った短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者の所定労働時間を超えた時間につき、通常の労働者と同一の割増率等で、時間外労働に対して支給される手当を支給しなければならない。
⑥ 深夜労働又は休日労働に対して支給される手当
通常の労働者と同一の深夜労働又は休日労働を行った短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の割増率等で、深夜労働又は休日労働に対して支給される手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、通常の労働者であるXと時間数及び職務の内容が同一の深夜労働又は休日労働を行った短時間労働者であるYに、同一の深夜労働又は休日労働に対して支給される手当を支給している。
(問題となる例)
- A社においては、通常の労働者であるXと時間数及び職務の内容が同一の深夜労働又は休日労働を行った短時間労働者であるYに、深夜労働又は休日労働以外の労働時間が短いことから、深夜労働又は休日労働に対して支給される手当の単価を通常の労働者より低く設定している。
⑦ 無事故手当
(補足:無事故手当については、ハマキョウレックス事件最高裁判決を踏まえて追加されています)
通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給しなければならない。
⑧ 通勤手当及び出張旅費
短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当及び出張旅費を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、本社の採用である労働者に対しては、交通費実費の全額に相当する通勤手当を支給しているが、それぞれの店舗の採用である労働者に対しては、当該店舗の近隣から通うことができる交通費に相当する額に通勤手当の上限を設定して当該上限の額の範囲内で通勤手当を支給しているところ、店舗採用の短時間労働者であるXが、その後、本人の都合で通勤手当の上限の額では通うことができないところへ転居してなお通い続けている場合には、当該上限の額の範囲内で通勤手当を支給している。
- A社においては、通勤手当について、所定労働日数が多い(例えば、週4日以上)通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者には、月額の定期券の金額に相当する額を支給しているが、所定労働日数が少ない(例えば、週3日以下)又は出勤日数が変動する短時間・有期雇用労働者には、日額の交通費に相当する額を支給している。
⑨ 家族手当
(補足:家族手当については、日本郵便(大阪)事件最高裁判決を踏まえて追加されています)
労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、通常の労働者であるXに対しては家族手当を支給しているが、労働契約の更新を繰り返していない等、相応に継続的な勤務が見込まれない有期雇用労働者であるYに対しては、家族手当を支給していない。
(問題となる例)
- A社においては、通常の労働者であるXに対しては家族手当を支給しているが、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる有期雇用労働者であるYに対しては、家族手当を支給していない。
(注) 配偶者の収入要件があるいわゆる「配偶者手当」については、特に女性の短時間労働者の就業調整の要因となっていると指摘されていることから、各事業主において、労使の話合いによって、働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれる。
⑩ 住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの
(補足:転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給される住宅手当については、ハマキョウレックス事件最高裁判決等を踏まえて追加されています)
住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、転居を伴う配置の変更が見込まれる通常の労働者であるXには住宅手当を支給している。一方で、有期雇用労働者であるYには転居を伴う配置の変更が見込まれないため、住宅手当を支給していない。
(問題となる例)
- A社においては、転居を伴う配置の変更が見込まれることを理由として、通常の労働者であるXに対し、住宅手当を支給しており、当該変更が見込まれないことを理由として、有期雇用労働者であるYには住宅手当を支給していないが、A社では実態として通常の労働者に対しても、転居を伴う配置の変更を命じていない。
(注) 住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給されるものについても、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないことに留意すべきである。
⑪ 労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助として支給される食事手当
短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の食事手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、その労働時間の途中に昼食のための休憩時間がある通常の労働者であるXに支給している食事手当を、その労働時間の途中に昼食のための休憩時間がない(例えば、午後2時から午後5時までの勤務)短時間労働者であるYには支給していない。
(問題となる例)
- A社においては、通常の労働者であるXには、有期雇用労働者であるYに比べ、食事手当を高く支給している。
⑫ 単身赴任手当
通常の労働者と同一の支給要件を満たす短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の単身赴任手当を支給しなければならない。
⑬ 特定の地域で働く労働者に対する補償として支給される地域手当
通常の労働者と同一の地域で働く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の地域手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、通常の労働者であるXについては、全国一律の基本給の体系を適用し、転勤があることから、地域の物価等を勘案した地域手当を支給しているが、一方で、有期雇用労働者であるYと短時間労働者であるZについては、それぞれの地域で採用し、それぞれの地域で基本給を設定しており、その中で地域の物価が基本給に盛り込まれているため、地域手当を支給していない。
(問題となる例)
- A社においては、通常の労働者であるXと有期雇用労働者であるYにはいずれも全国一律の基本給の体系を適用しており、かつ、いずれも転勤があるにもかかわらず、Yには地域手当を支給していない。
① 福利厚生施設
(補足:「また~」の記述が追加されています)
通常の労働者と同一の事業所で働く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の給食施設、休憩室及び更衣室の利用を認めなければならない。
また、福利厚生施設の利用料金・割引率等の利用条件についても短時間・有期雇用労働法第8条の適用を受けるものであり、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
② 転勤者用社宅
通常の労働者と同一の支給要件(例えば、転勤の有無、扶養家族の有無、住宅の賃貸又は収入の額)を満たす短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の転勤者用社宅の利用を認めなければならない。
③ 慶弔休暇並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障
健康診断を勤務時間中に受診する場合の当該受診時間に係る給与の保障をこの③において「有給の保障」という。
短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、通常の労働者であるXと同様の出勤日が設定されている短時間労働者であるYに対しては、通常の労働者と同様に慶弔休暇を付与しているが、週2日の勤務の短時間労働者であるZに対しては、勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与している。
④ 病気休職(療養への専念を目的として付与する病気休暇を含む。以下この④において同じ。)
(補足:「さらに~」の記述及び「問題となる例」については、日本郵便(東京)事件最高裁判決を踏まえて追加されています)
短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない。
さらに、通常の労働者に病気休職期間に係る給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の給与の保障を行わなければならない。
(問題とならない例)
- A社においては、労働契約の期間が1年である有期雇用労働者であるXについて、病気休職の期間は労働契約の期間が終了する日までとしている。
(問題となる例)
- A社においては、通常の労働者であるXには、病気休職期間に係る給与の保障を行っているが、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる有期雇用労働者であるYには、病気休職期間に係る給与の保障を行っていない。
⑤ 夏季冬季休暇
(補足:夏季冬季休暇については、日本郵便(佐賀)事件最高裁判決を踏まえて追加されています)
短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない。
(問題となる例)
- A社においては、繁忙期に限定された短期間の勤務ではない有期雇用労働者であるXに対し、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与していない。
⑥ 法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇、療養への専念を目的として付与する病気休暇及び夏季冬季休暇を除く。)であって、勤続期間に応じて取得を認めているもの
法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇、療養への専念を目的として付与する病気休暇及び夏季冬季休暇を除く。)であって、勤続期間に応じて取得を認めているものについて、通常の労働者と同一の勤続期間である短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇、療養への専念を目的として付与する病気休暇及び夏季冬季休暇を除く。)を付与しなければならない。なお、期間の定めのある労働契約を更新している場合には、当初の労働契約の開始時から通算して勤続期間を評価することを要する。
(問題とならない例)
- A社においては、長期勤続者を対象とするリフレッシュ休暇について、業務に従事した時間全体を通じた貢献に対する報償という趣旨で付与していることから、通常の労働者であるXに対しては、勤続10年で3日、20年で5日、30年で7日の休暇を付与しており、短時間労働者であるYに対しては、所定労働時間に比例した日数を付与している。
⑦ 褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するもの
(補足:一定の期間勤続した労働者に付与する褒賞については、メトロコマース事件高裁判決を踏まえて追加されています。なお、最高裁は褒賞について直接判断を示していませんが、労働政策審議会の部会における議論を踏まえて記載されています)
褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するものについて、通常の労働者と同一の期間勤続した短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与しなければならない。
① 教育訓練であって、現在の職務の遂行に必要な技能又は知識を習得するために実施するもの
教育訓練であって、現在の職務の遂行に必要な技能又は知識を習得するために実施するものについて、通常の労働者と職務の内容が同一である短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の教育訓練を実施しなければならない。また、職務の内容に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた教育訓練を実施しなければならない。
② 安全管理に関する措置及び給付
通常の労働者と同一の業務環境に置かれている短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の安全管理に関する措置及び給付をしなければならない。
以上です。
派遣労働者に係る部分はこちらの記事をご参照ください。
(参考資料)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 平成30年12月28日厚生労働省告示430号(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)
厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
- 同一労働同一賃金ガイドライン 新旧対照表(解説付き)
- 同一労働同一賃金ガイドライン及び雇用管理指針に関するQ&A(令和8年改正)


