この記事では、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、育児介護休業法)から次の制度を解説しています。
- 子の看護等休暇(4章)
- 介護休暇(5章)
記事中の略語はそれぞれ次の意味で使用しています。
- 育介法、法 ⇒ 育児介護休業法
- 則 ⇒ 育児介護休業法施行規則
- 通達 ⇒ 令和7年1月20日 職発0120第2号
社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
子の看護等休暇

子の看護等休暇とは、労働者(日々雇用される者を除く)が、その養育する子のために取得できる休暇です。
特にことわりがなければ、以降の労働者は「日々雇用される者を除く」を省略しています。
制度の対象になる「子」は、小学校3年生修了までの子です。
休暇の理由としては、子の看護や入園式への参加などが定められています。
令和7年4月1日施行の要点は、下表に整理しておきます。
改正内容 | 改正前 | 改正後 |
名称の変更 | 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
子の範囲を拡大 | 小学校に入学するまで | 小学校3年生の修了まで |
取得事由の追加 | 負傷 疾病 予防接種 健康診断 | 左記に次の二つを追加 感染症に伴う学級閉鎖 入(卒)園式、入学式への参加 |
継続雇用期間6か月未満の者を除外できる規定の廃止 | 労使協定の締結により可 | 廃止 |
以降、法改正(令和7年4月1日施行)に対応させて制度を解説していきます。

申出
子の看護等休暇の取得には、労働者から事業主への申出(看護等休暇申出といいます)が必要です(法16条の2第1項)
申出の対象は、9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子(小学校第三学年修了前の子といいます)を養育する労働者です(法16条の2第1項)
以降の「子」は、「小学校第三学年修了前の子」の意味で使用しています。
休暇の取得理由として、次の①から④までが認められています。
- 負傷し、又は疾病にかかった子の世話
- 子に予防接種または健康診断を受けさせること(則32条)
- 学校の休業、感染症予防のための臨時休業などに伴う子の世話(則33条)
- 子の教育または保育に係る行事(入園、卒園又は入学の式典その他これに準ずる式典)への参加(則33条の2)
令和7年4月1日からは、上記③④を理由に子の看護等休暇の取得が可能です。
ちなみに、通達によると、④の「その他これに準ずる式典」は、「入園」「卒園」「入学」と同じ性質の式典が想定されているため、授業参観日や運動会は含まれない解されています。
(もちろん、事業主が法の基準を上回る休暇制度を認めることは可能です)
申出事項
看護等休暇申出には、子の看護等休暇を取得する年月日(時間単位で取得するときは開始および終了の年月日時)などが必要です(法16条の2第3項、則35条1項)
事業主は、申出があったときは、労働者に対して、取得理由(直前の①~④を参照)の事実を証明できる書類の提出を求めることができます(則35条2項)
ただし、事業主が労働者に対して証明書類の提出を求め、その提出を労働者が拒んだ場合にも、申出自体の効力には影響しません(通達)
休暇の日数

子の看護等休暇を取得できる日数は、一つの年度において5労働日(小学校第三学年修了前の子が2人以上の場合には、10労働日)です(法16条の2第1項)
(労働契約の期間にかかわらず5労働日または10労働日です)
「年度」は事業主が別段の定めをする場合を除き、4月1日に始まり、翌年3月31日に終わります(法16条の2第4項)
子の看護等休暇は時間単位でも取得できます。ただし、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続するものが、法所定の休暇とされています(法16条の2第2項、則34条1項)
いわゆる「中抜け」を認めることまでは、事業主に義務付けられていません。
休暇1日あたりの時間数は、1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における一日平均所定労働時間数)です。なお、1時間に満たない端数は、1時間に切り上げます(則34条2項)
ちなみに、育介法16条の2第2項によると、子の看護等休暇の時間単位での取得は、「1日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの」以外の者を対象としています。
ただし、厚生労働省令は上記「厚生労働省令で定めるもの」を規定していないため、1日の所定労働時間数にかかわらず、時間単位で子の看護等休暇を取得できます(通達)
申出に対する事業主の義務
事業主は、労働者から子の看護等休暇について申出があったときは、申出を拒むことができません(法16条の3第1項)
ただし、例外があります。
申出を拒むことが可能なケース
次の労働者については、労使協定の締結を要件に、子の看護等休暇の対象者から除くことができます(則36条、法16条の2第2項)
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(平成23年厚労告58号)
- 業務の性質または業務の実施体制に照らして、時間単位で子の看護等休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(時間単位で取得しようとする者に限る)
令和7年4月1日以降は、「引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者」を休暇の対象から除くことはできません。
事業主に申出を拒まれた労働者は、法16条の2第1項の規定にかかわらず、子の看護等休暇を取得できません。
なお、事業主は、経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっても、労使協定で除外されていない労働者からの(適法な)申出は拒むことはできません(通達)
また、育児休業や介護休業とは異なり、事業主には子の看護等休暇を取得する日を変更する権限は認められていません(通達)
労使協定
労使協定を締結する労働者側の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合の有無で分れています。
- ある場合 ⇒ その労働組合(以下、過半数労働組合)
- ない場合 ⇒ 労働者の過半数を代表する者(以下、過半数代表者)
「労働者の過半数」における「労働者」には、日々雇用される者、休暇の対象者から除かれた労働者も含まれます(通達)
以降の「労使協定」も、過半数労働組合または(ない場合は)過半数代表者と締結したものを意味します。
介護休暇
介護休暇とは、労働者(日々雇用される者を除く。以下同じ)が、要介護状態にある対象家族の介護、通院等の付き添いなどを理由に取得できる休暇です。
制度の対象となるのは、要介護状態にある対象家族です(用語の定義はこちらで解説しています)
令和7年4月1日施行の要点は、下表のどおりです。
改正内容 | 改正前 | 改正後 |
継続雇用期間6か月未満の者を除外できる規定の廃止 | 労使協定の締結により可 | 廃止 |
子の看護等休暇と同様に、令和7年4月1日以降は、労使協定によっても「引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者」を休暇の対象から除くことはできません。
法改正(令和7年4月1日施行)に対応させて制度を解説していきます。

申出
介護休暇を取得するためには、労働者から事業主への申出(介護休暇申出といいます)が必要です(法16条の5第1項)
申出が可能なのは、要介護状態にある対象家族について、介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者です(法16条の5第1項)
「厚生労働省令で定める世話」は、次のとおりです(則38条)
- 介護
- 通院等の付添い、介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行その他の必要な世話
申出事項

介護休暇申出には、介護休暇申出に係る対象家族が要介護状態にある事実、介護休暇を取得する年月日などが必要です(法16条の5第3項、則41条1項)
事業主は、介護休暇申出があったときは、労働者に対して、次の事項を証明できる書類の提出を求めることができます(則41条2項)
- 介護休暇申出に係る対象家族の氏名、労働者との続柄
- 介護休暇申出に係る対象家族が要介護状態にある事実
ただし、事業主が労働者に対して証明書類の提出を求め、その提出を労働者が拒んだ場合でも、申出自体の効力には影響しません(通達)
なお、子の看護等休暇と異なり、休暇の取得理由(直前の①②を参照)の事実を証明できる書類は、提出を求めることができる書類に含まれていません(通達)
休暇の日数

介護休暇を取得できる日数は、一つの年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合には、10労働日)です(法16条の5第1項)
年度は、事業主が別段の定めをする場合を除き、4月1日に始まり、翌年3月31日に終わります(法16条の5第4項)
休暇は時間単位でも取得できます。ただし、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続するものが、法所定の休暇とされています(法16条の5第2項、則40条1項)
介護休暇についても、いわゆる「中抜け」を認めることまでは、事業主に義務付けられていません。
休暇1日あたりの時間数は、1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における一日平均所定労働時間数)です。1時間に満たない端数は、1時間に切り上げます(則40条2項)
介護休暇についても「1日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者」が対象ですが、厚生労働省令は規定していないため、1日の所定労働時間数にかかわらず、時間単位で介護休暇を取得できます(通達)
申出に対する事業主の義務
事業主は、労働者から介護休暇について申出があったときは、申出を拒むことができません(法16条の6第1項)
ただし、例外があります。
申出を拒むことが可能なケース
次の労働者については、労使協定を締結することを要件に、介護休暇の対象者から除くことができます(法16条の6第2項、則42条)
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(平成23年厚労告58号)
- 業務の性質または業務の実施体制に照らして、時間単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(時間単位で取得しようとする者に限る)
子の看護等休暇と同様に、令和7年4月1日以降は、「引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者」を休暇の対象から除くことはできません。
事業主に申出を拒まれた労働者は、16条の5第1項の規定にかかわらず、介護休暇を取得できません。
事業主は、経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっても、労使協定で除外されていない労働者からの(適法な)申出は拒むことはできません(通達)
また、事業主には介護休暇を取得する日を変更する権限は認められていません(通達)
その他
最後は、子の看護等休暇および介護休暇休暇に関する不利益な取扱いを禁止する規定です。
労働者が次に掲げる事項に該当したことを理由として、事業主が当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されています(法16条の4、16条の7)
- 子の看護等休暇または介護休暇について申出をしたこと
- 子の看護等休暇または介護休暇をしたこと
なお、派遣労働者の就業については、労働者派遣法に特例が設けられているため、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主にも子の看護等休暇または介護休暇について不利益な取扱いの禁止が義務付けられています(労働者派遣法47条の3)
ここまで、育児介護休業法の3章から、子の看護等休暇、介護休暇を解説しました。
令和7年4月1日以降はどちらの休暇も要件が緩和され、「引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者」を休暇の対象から除くことはできません。
また、子の看護についての休暇は「子の看護等休暇」に名称が変わり、制度の対象が拡大されます。
令和7年度以降の社労士試験で出題された際は、ケアレスミスに気をつけてください。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 育児介護休業法
厚生労働省ホームページ|育児・介護休業法についてより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
- リーフレット「育児・介護休業法改正のポイント」
- 育児・介護休業法のあらまし
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について(令和7年1月20日 職発0120第2号)