社労士試験の独学|健康保険法|資格取得時の決定

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まえがき

この記事では、健康保険の標準報酬月額について、被保険者の資格を取得した際の決定(法42条)を解説しています。

社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。

なお「報酬とは」については、こちらをご参照ください。

記事中の略語はそれぞれ次の意味で使用しています。

  • 法 ⇒ 健康保険法
  • 則 ⇒ 健康保険法施行規則
  • 保険者等 ⇒ 協会管掌の健康保険は厚生労働大臣(実務については機構)、組合管掌の健康保険は各健康保険組合
  • 機構 ⇒ 日本年金機構

当記事は条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。詳しくは免責事項をご確認ください。

被保険者の資格を取得した際の決定

この記事の「被保険者」は、日雇特例被保険者、任意継続被保険者を除きます。


決定方法

資格取得時の決定

保険者等は、被保険者の資格を取得した者について、次の①~④の額を報酬月額として、標準報酬月額を決定します(法42条1項)

  • 、週その他一定期間によって報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した日の現在の報酬の額をその期間の総日数で除して得た額の30倍に相当する額
  • 日、時間、出来高又は請負によって報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した月前1か月間に当該事業所で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額
  • ①②によって算定することが困難な場合には、被保険者の資格を取得した月前1か月間に、その地方で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額
  • ①~③のうち二つ以上の報酬を受ける場合には、①~③によって算定した額の合算額

留意事項を整理しておきます。

  • ①〜④により算定した額そのものは「標準報酬月額」ではなく、「報酬月額」となります(①~④で計算した報酬月額を標準報酬月額の等級区分に当てはめて、標準報酬月額が決定されます)
  • ①は「所定労働日数」ではなく、「期間の総日数」で割った額に30を乗じます。
  • いわゆる残業代(時間外労働に対する割増賃金など)も「報酬」に含まれるため、「時間」によって定められる場合は、②による見込額を算定します。
  • ③は「その地方」の報酬です。

有効期間

資格取得時の決定による標準報酬月額の有効期間

資格取得時の決定による標準報酬月額は、被保険者の資格を取得した月からその年の8月(*1)までの各月の標準報酬月額となります(法42条2項)

(*1)6月1日から12月31日までの間に被保険者の資格を取得した者については、翌年の8月

  • 「定時決定」による標準報酬月額は、原則として、その年の9月から翌年の8月まで有効になります(*2)。そのため、資格取得時の決定による標準報酬月額は、定時決定が有効になるまで(つまり取得した年の8月まで)となります。
  • また、その年の6月1日以降に資格を取得した場合は、その年の定時決定は不要になります。そのため、(*1)については、翌年の8月まで(つまり次回の定時決定が有効になるまで)となります。

(*2)例外は、随時改定、育児休業等を終了した際の改定、産前産後休業を終了した際の改定いずれかに該当し、7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額が改定される(又は改定される予定を含む)場合です。

定時決定はこちら、随時改定はこちら、育児休業等・産前産後休業を終了した際の改定はこちらで解説しています。


資格取得届

適用事業所の事業主は、被保険者の資格の取得に関する事項を保険者等に届け出なければなりません(法48条)

具体的には、当該事実があった日から5日以内に、被保険者資格取得届を機構又は健康保険組合に提出します(則24条1項)

「被保険者の報酬月額」は、資格取得届の記載事項に含まれています(則24条1項8号)


事例集

令和5年6月27日機構あて事務連絡(*3)を中心に、資格取得時の決定について事例を交えて解説します。

(*3)標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集(以下、機構あて事務連絡)をいいます。


取得時の標準報酬月額の訂正

健保|資格取得届の訂正

資格取得時に決定された標準報酬月額の訂正は、次のように可否が分かれます(機構あて事務連絡)

  • 固定的賃金(基本給など)の算定誤りがあった場合は、訂正できる
  • 非固定的賃金(残業代など)の見込みが当初の算定額より増減した場合は、訂正できない

初日から自宅待機のケース

新たに使用される者が当初から自宅待機(採用したものの一定期間就労させない措置)とされた場合は、次のいずれも満たすならば、休業手当等(*4)の支払の対象となった日の初日に被保険者の資格を取得します(昭和50年3月29日保険発25号)

  • 雇用契約が成立している
  • 休業手当等(*4)が支払われる

(*4)労基法26条に基づく休業手当又は労働協約等に基づく報酬をいいます(前掲通達)。以降の解説において同じ。

自宅待機に係る者の資格取得時の決定については、現に支払われる休業手当等に基づき報酬月額を算定し、標準報酬月額を決定します(前掲通達)

(自宅待機が解消したときは、随時改定の対象です)


まとめ

解説は以上です。

資格取得時の決定は、後の定時決定、随時改定とも関係します。

報酬月額の算定方法や、標準報酬月額の有効期間は、場合分けや数字を含むため、作問しやすいといえるでしょう。試験対策としては、過去問を中心に復習してみてください。

実務につきましては、算定方法というより「報酬」の範囲の判断が難しいケースもあるでしょう。

後に訂正となると保険料にも影響するため、疑義については、保険者等(各健保組合又は機構)に確認しながら進めてみてください。


(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 健康保険法
  • 令和5年6月27日事務連絡(「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について〔健康保険法〕)
  • 昭和50年3月29日保険発25号(一時帰休等の措置がとられた場合における健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格及び標準報酬の取扱いについて)