この記事では、離婚時の年金分割のうち3号分割を解説しています。
記事中の略語は、それぞれ次の意味で使用しています。
- 法 ⇒ 厚生年金保険法
- 令 ⇒ 厚生年金保険法施行令
- 則 ⇒ 厚生年金保険法施行規則
- 機構 ⇒ 日本年金機構
- 実施機関 ⇒ 法2条の5で定める実施機関
- 事実婚関係 ⇒ 婚姻の届出をしていなくとも事実上は婚姻関係と同様の事情にあること
- 被保険者 ⇒ 厚生年金保険の被保険者
- 第3号被保険者 ⇒ 国民年金法7条1項3号の第三号被保険者
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
目次 非表示
制度の全体像
はじめに制度の概要と用語の定義を解説します。
なお、以降の解説(解説中のイラストやそれに使用している色を含む)は、男女を入れ替えても同じです。
年金分割

ごくごく単純化すると、離婚時の年金分割は、次のように区別されます。
- 合意分割
分割する割合(上限50%)を当事者で決めて、「婚姻期間の標準報酬」をその割合で分割する制度 - 3号分割
分割する割合を50%に固定して、「婚姻期間かつ第3号被保険者であった期間の標準報酬」を50%ずつで分け合う制度
「合意分割」は、夫婦(であった者)が共に厚生年金保険の被保険者であった期間を含めて分割します。
「3号分割」は、一方が厚生年金保険の被保険者、他方が国民年金の第3号被保険者であった期間に係る分割です。
ちなみに、第3号被保険者であった期間を含めた「合意分割」の請求は、「3号分割」を請求したとみなします。
この記事で解説するのは「3号分割」です。

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必要に応じて開閉してください。
特定被保険者の被扶養配偶者は、特定被保険者と離婚等をしたときは、実施機関に対し、特定期間に係る被保険者期間(既に3号分割による改定及び決定がされた被保険者期間を除く)の標準報酬の改定及び決定を請求(3号分割標準報酬改定請求)できます(法78条の14第1項、則78条の14)
ただし、次の①に該当する場合は、請求できません。また、次の②に該当する場合は、請求を制限されます(法78条の14第1項、則78条の17)
- 離婚が成立した日の翌日から起算して5年(*1)を経過したときなど、請求期限を経過した場合
- 3号分割の請求をした日において特定被保険者が障害厚生年金(*2)の受給権者であるとき
(*1)改正省令施行日(令和8年4月1日)より前に「離婚が成立した」「婚姻が取り消された」又は「事実婚関係が解消したと認められる」場合は、それらの日の翌日から起算して2年(令和8年3月27日改正省令2項。以下同じ)
(*2)特定期間の全部又は一部をその額の計算の基礎とするものに限る。
厚生年金保険法
第七十八条の十四(特定被保険者及び被扶養配偶者についての標準報酬の特例)
1 被保険者(被保険者であった者を含む。以下「特定被保険者」という。)が被保険者であった期間中に被扶養配偶者(当該特定被保険者の配偶者として国民年金法第七条第一項第三号に該当していたものをいう。以下同じ。)を有する場合において、当該特定被保険者の被扶養配偶者は、当該特定被保険者と離婚又は婚姻の取消しをしたときその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定めるときは、実施機関に対し、特定期間(当該特定被保険者が被保険者であった期間であり、かつ、その被扶養配偶者が当該特定被保険者の配偶者として同号に規定する第三号被保険者であった期間をいう。以下同じ。)に係る被保険者期間(次項及び第三項の規定により既に標準報酬が改定され、及び決定された被保険者期間を除く。以下この条において同じ。)の標準報酬(特定被保険者及び被扶養配偶者の標準報酬をいう。以下この章において同じ。)の改定及び決定を請求することができる。ただし、当該請求をした日において当該特定被保険者が障害厚生年金(当該特定期間の全部又は一部をその額の計算の基礎とするものに限る。第七十八条の二十において同じ。)の受給権者であるときその他の厚生労働省令で定めるときは、この限りでない。
(以下省略)
平成16年6月11日改正法
附則第四十九条(対象となる特定期間)
第十三条の規定による改正後の厚生年金保険法第七十八条の十四第一項の規定の適用については、平成二十年四月一日前の期間については、同項に規定する特定期間に算入しない。
厚生年金保険法では、別段の定めがなければ、用語の定義は下記になります。
- 「被保険者期間」とあれば、厚生年金の被保険者期間を意味します。
- 「標準報酬」とは、標準報酬月額及び標準賞与額をいいます(法28条)
- 「配偶者」、「夫」及び「妻」には、事実上婚姻関係にある者を含みます(法3条2項)
法78条の14第1項による3号分割標準報酬改定請求が、いわゆる3号分割の請求です。
この記事では単に「3号分割」と表記して解説します。
3号分割の請求者は、合意分割の請求者(当事者又はその一方)と異なり、特定被保険者の被扶養配偶者(一方のみ)となるのがポイントです。
以降、特定被保険者の被扶養配偶者を単に「被扶養配偶者」と表記します。
特定被保険者、被扶養配偶者

- 「特定被保険者」とは、厚生年金保険の被保険者(被保険者であった者を含む)をいいます(法78条の14第1項)
- 「被扶養配偶者」とは、特定被保険者の配偶者として国民年金の第3号被保険者に該当していたものをいいます(法78条の14第1項)
特定期間(婚姻期間のうち第3号被保険者であった期間)については、特定被保険者の標準報酬を\(\frac{1}{2}\)に減額改定し、その減額改定した分だけ被扶養配偶者の標準報酬を決定します。
ちなみに、被扶養配偶者の標準報酬は、分割される期間を被扶養配偶者の(厚年の)被保険者期間とみなして、決定されます。
(上記のみなされた期間を「被扶養配偶者みなし被保険者期間」といいます)
以降、第3号被保険者は、特定被保険者の配偶者としての第3号被保険者という前提で解説します。
基本的認識
被扶養配偶者に対する(厚生年金の)年金たる保険給付に関しては、被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料について、被扶養配偶者が共同して負担したという基本的認識の下に、制度設計されています(法78条の13)
つづいて、頻出の用語を解説します。

この記事では、次の①〜⑤を総称して「離婚等」と表記しています(同旨 法78条の14第1項、則78条の14)
- 離婚(事実婚関係の解消を除く。以下同じ)
- 婚姻の取消し
- 事実婚関係にあった被扶養配偶者が、第3号被保険者の資格を喪失したため、事実婚関係が解消したと認められる(当該事実婚関係にあった者との婚姻の届出により事実婚関係が解消した場合を除く)
- 3号分割の請求日に、特定被保険者が行方不明となって3年が経過していて(離婚の届出をしていない場合に限る)、かつ、被扶養配偶者が第3号被保険者の資格を喪失している
- 3号分割の請求日に、離婚の届出をしていないが、夫婦としての共同生活が営まれておらず、事実上離婚したと同様の事情にあると認められ、かつ、3号分割の請求をするにつき特定被保険者及び被扶養配偶者がともに当該事情にあると認めている場合において、被扶養配偶者が第3号被保険者の資格を喪失している
①〜⑤は厳密には「離婚等」ではなく、「離婚又は婚姻の取消しをしたときその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定めるとき」といいます。
厚生年金保険法
(再掲)第七十八条の十四(特定被保険者及び被扶養配偶者についての標準報酬の特例)
1 被保険者(略)が被保険者であった期間中に被扶養配偶者(略)を有する場合において、当該特定被保険者の被扶養配偶者は、当該特定被保険者と離婚又は婚姻の取消しをしたときその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定めるときは、実施機関に対し、特定期間(略)に係る被保険者期間(略)の標準報酬(略)の改定及び決定を請求することができる。(以下省略)
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の十四(法第七十八条の十四第一項に規定する厚生労働省令で定めるとき)
法第七十八条の十四第一項に規定する厚生労働省令で定めるときは、次の各号に掲げる場合とする。
一 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった特定被保険者(法第七十八条の十四第一項に規定する特定被保険者をいう。以下この章において同じ。)及び被扶養配偶者(同項に規定する被扶養配偶者をいう。以下この章において同じ。)について、当該被扶養配偶者が第三号被保険者としての国民年金の被保険者の資格(当該特定被保険者の配偶者としての当該資格に限る。)を喪失し、当該事情が解消したと認められる場合(当該特定被保険者及び被扶養配偶者が婚姻の届出をしたことにより当該事情が解消した場合を除く。)
二 法第七十八条の十四第一項の規定による標準報酬の改定及び決定の請求(以下「三号分割標準報酬改定請求」という。)のあった日に、次のイ又はロに掲げる場合に該当し、かつ、特定被保険者の被扶養配偶者が第三号被保険者としての国民年金の被保険者の資格(当該特定被保険者の配偶者としての当該資格に限る。)を喪失している場合
イ 特定被保険者が行方不明となって三年が経過していると認められる場合(離婚の届出をしていない場合に限る。)
ロ 離婚の届出をしていないが、夫婦としての共同生活が営まれておらず、事実上離婚したと同様の事情にあると認められる場合であって、かつ、三号分割標準報酬改定請求をするにつき特定被保険者及び被扶養配偶者がともに当該事情にあると認めている場合
この記事では、③を単に「事実婚関係が解消したと認められる」と表記しています。
また、④を「特定被保険者が行方不明となって3年経過した」と、⑤を「事実上離婚したと同様の事情にある」と表記しています。
なお、④及び⑤は、「合意分割における離婚等」には含まれないため、試験問題を解く際は用語の定義を確認してください。

「特定期間」とは、次の①かつ②の期間をいいます(法78条の14第1項)
- 特定被保険者が(厚年の)被保険者であった期間
- 被扶養配偶者が(当該特定被保険者の配偶者として)第3号被保険者であった期間
なお、平成20年4月1日(施行日)前の期間は、特定期間に算入されません(平成16年改正法附則49条)
計算に算入する被保険者期間(月)の基準
原則論としては、3号分割の計算に「特定期間の初日が属する月」は算入します。一方、「特定期間の末日が属する月」は算入しません。
- 被保険者期間は、月を単位として、(同月得喪を除き)被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までを算入します(法19条)
- 特定期間は、日を単位とした期間です。
(資格取得日から資格喪失日の前日までの期間は「被保険者であった期間」といいます)
標準報酬を分割するためには、日を単位とする特定期間を月を単位とする被保険者期間に換算する必要があります。

被保険者期間を「特定期間に係る被保険者期間」に算入するか否かは、次の基準で判定します(令3条の12の12)
- 「特定期間の初日の属する月」は、算入する。
- 「特定期間の末日の属する月」は、算入しない。
- 「特定期間の初日と末日が同一の月」に属するときは、その月を算入しない。
厚生年金保険法施行令
第三条の十二の十(特定期間に係る被保険者期間)
特定被保険者(法第七十八条の十四第一項に規定する特定被保険者をいう。以下同じ。)の被扶養配偶者(同項に規定する被扶養配偶者をいう。以下同じ。)が同項の規定による標準報酬の改定及び決定の請求(以下「三号分割標準報酬改定請求」という。)をする場合における特定期間(同項に規定する特定期間をいう。以下同じ。)に係る被保険者期間(同項に規定する被保険者期間をいう。以下この条及び次条において同じ。)については、当該被扶養配偶者が当該三号分割標準報酬改定請求の事由である離婚又は婚姻の取消しその他厚生労働省令で定めるこれらに準ずるものをした場合における特定期間に係る被保険者期間とする。
第三条の十二の十二(特定期間に係る被保険者期間の計算)
特定期間に係る被保険者期間については、厚生労働省令で定めるところにより、特定期間の初日の属する月はこれに算入し、特定期間の末日の属する月はこれに算入しない。ただし、特定期間の初日と末日が同一の月に属するときは、その月は、特定期間に係る被保険者期間に算入しない。
第三条の十二の十一(特定被保険者が障害厚生年金の受給権者である場合の特定期間に係る被保険者期間)
障害厚生年金の受給権者である特定被保険者の被扶養配偶者が三号分割標準報酬改定請求をする場合における特定期間に係る被保険者期間については、当該障害厚生年金の額の計算の基礎となった特定期間に係る被保険者期間を除くものとする。
厚生年金保険法施行規則
則七十八条の十五(令第三条の十二の十に規定する厚生労働省令で定める事由)
令第三条の十二の十に規定する厚生労働省令で定める事由は、次の各号に掲げるものとする。
一 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった特定被保険者及び被扶養配偶者について、当該被扶養配偶者が第三号被保険者としての国民年金の被保険者の資格(当該特定被保険者の配偶者としての当該資格に限る。)を喪失し、当該事情が解消したと認められること(当該特定被保険者及び被扶養配偶者が婚姻の届出をしたことにより当該事情が解消した場合を除く。)。
二 三号分割標準報酬改定請求のあった日に、次のイ又はロに掲げる事由に該当し、かつ、特定被保険者の被扶養配偶者が第三号被保険者としての国民年金の被保険者の資格(当該特定被保険者の配偶者としての当該資格に限る。)を喪失していること。
イ 特定被保険者が行方不明となって三年が経過していると認められること(離婚の届出をしていない場合に限る。)。
ロ 離婚の届出をしていないが、夫婦としての共同生活が営まれておらず、事実上離婚したと同様の事情にあると認められ、かつ、三号分割標準報酬改定請求をするにつき特定被保険者及び被扶養配偶者がともに当該事情にあると認めていること。
第七十八条の十六(特定期間に係る被保険者期間の計算)
1 婚姻が成立した日前から婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった特定被保険者及び被扶養配偶者について、婚姻の届出をしたことにより当該事情が解消し、その後三号分割標準報酬改定請求の事由である離婚、婚姻の取消し又は前条第二号に掲げるものをした場合における特定期間(法第七十八条の十四に規定する特定期間をいう。以下この章において同じ。)に係る被保険者期間は、当該特定被保険者及び被扶養配偶者が婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった特定期間(第七十八条の十九第二項第三号において「事実婚特定期間」という。)に係る被保険者期間と当該離婚、婚姻の取消し又は前条第二号に掲げるものをした場合における特定期間に係る被保険者期間を通算したものとする。
2 特定期間の初日が属する月が、法第十九条第二項本文の規定により被扶養配偶者の被保険者期間に算入される月であって、当該特定期間の末日がその月の翌月以後に属するときは、令第三条の十二の十二本文の規定にかかわらず、その月は、特定期間に係る被保険者期間に算入しない。
3 三号分割標準報酬改定請求の事由である離婚、婚姻の取消し又は前条各号の掲げるものをした場合における特定期間に係る被保険者期間については、当該場合における特定期間が複数ある場合であって、一の特定期間の末日と当該一の特定期間以外の特定期間(当該一の特定期間後の特定期間に限る。次項において同じ。)の初日とが同一の月に属するときは、令第三条の十二の十二本文の規定にかかわらず、その月は、特定期間に係る被保険者期間に算入する。ただし、その月が法第十九条第二項本文の規定により被扶養配偶者の被保険者期間に算入される月である場合は、この限りでない。
4 三号分割標準報酬改定請求の事由である離婚、婚姻の取消し又は前条各号に掲げるものをした場合における特定期間に係る被保険者期間については、当該場合における特定期間が複数あり、一の特定期間の初日と末日が同一の月に属し、その月に当該一の特定期間以外の特定期間の初日が属する場合であって、当該一の特定期間以外の特定期間の末日がその月の翌月以後に属するときは、令第三条の十二の十二ただし書の規定にかかわらず、その月は、特定期間に係る被保険者期間に算入する。ただし、その月が法第十九条第二項本文の規定により被扶養配偶者の被保険者期間に算入される月である場合は、この限りでない。
(加工前の下記①~⑥も、上記のタブを切り替えると確認できます)
特定期間に係る被保険者期間には、上記タブ内の基準のほか、下記①~⑥も適用(②③⑤は令3条の12の12より優先)されます(則78条の16)
- 婚姻が成立した日前から事実婚関係にあった特定被保険者及び被扶養配偶者について、婚姻の届出により事実婚関係が解消した場合は、「事実婚関係にあった特定期間に係る被保険者期間」と「離婚等をした場合における特定期間に係る被保険者期間」を通算する。
- 特定期間の初日の属する月が、法19条2項本文(*3)により被扶養配偶者の被保険者期間に算入される月であって、当該特定期間の末日がその月の翌月以後に属するときは、その月(特定期間の初日が属する月)は、特定期間に係る被保険者期間に算入しない。
- 離婚等をした場合における特定期間が複数あり、一つの特定期間の末日と当該一つの特定期間以外の特定期間(*4)の初日とが同一の月に属するときは、その月(同一の月)を特定期間に係る被保険者期間に算入する。
- ただし、③におけるその月(同一の月)が、法19条2項本文(*3)により被扶養配偶者の被保険者期間に算入される月の場合は、③の限りでない。
- 離婚等をした場合における特定期間が複数あり、「一つの特定期間の初日と末日」が同一の月に属し、「その月(一つの特定期間の初日と末日が属している月)」に当該一つの特定期間以外の特定期間(*4)の初日が属する場合であって、当該一つの特定期間以外の特定期間(*4)の末日が「その月」の翌月以後に属するときは、「その月」は、特定期間に係る被保険者期間に算入する。
- ただし、⑤における「その月」が、法19条2項本文(*3)により被扶養配偶者の被保険者期間に算入される月の場合は、⑤の限りでない。
(*3)被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を一か月として被保険者期間に算入する。
(*4)当該一つの特定期間よりも後の特定期間に限ります。
(④については、③が適用されないため、③以外の基準で判定します。また、⑥については、⑤が適用されないため、⑤以外の基準で判定します)

ポイントとしては、特定期間に係る被保険者期間は、「特定被保険者が厚年」かつ「被扶養配偶者が国年3号」であった期間(特定期間)ごとではなく、離婚等をした場合における婚姻期間に基づいて計算します(同旨 令3条の12の10)
(一つの特定期間に末日が存在する場合でも、離婚等をしていなければ3号分割を請求できません)
より直感的にいうと、一つの婚姻期間に特定期間は複数あっても(例えば、年収が増加し扶養から外れる期間があっても)構いませんが、婚姻期間が複数ある場合は、直前の①のケース(事実婚から引き続く法律婚)を除き通算されません。
つまり、同じ相手と婚姻・離婚(又は事実婚とそれの解消)を繰り返した場合は、婚姻期間ごとに3号分割の請求が必要です。
(3号分割は「特定期間 = 婚姻期間」と断定できません。一方、合意分割は「対象期間=婚姻期間」としても問題ありません)
特定被保険者が障害厚生年金の受給権者の場合

特定被保険者が障害厚生年金の受給権者の場合は、当該障害厚生年金の計算の基礎となった被保険者期間と重複する期間は、特定期間に係る被保険者期間から除かれます(令3条の12の11)
より直接的にいうと下記になります。
- 特定期間の一部が特定被保険者の障害厚生年金の計算の基礎となっている場合は、計算の基礎となっている月を除いて「特定期間に係る被保険者期間」を算定します。つまり、特定期間に「障害厚生年金の計算の基礎となっていない被保険者期間」があるならば、3号分割を請求できます。
- 特定期間の全部が障害厚生年金の計算の基礎となっている場合は、特定期間に係る被保険者期間はゼロです。つまり、3号分割を請求できません。
(3号分割を請求できない場合は、3号分割の請求みなしもありません)
ちなみに、障害厚生年金の額は、障害認定日の属する月後における被保険者であった期間は計算の基礎としません(法51条)
なお、特定期間とは関係のない被保険者期間(婚姻前の被保険者期間など)は、障害厚生年金の計算の基礎となっていても、3号分割とは関係ありません
制度の概要と用語の定義は以上です。
3号分割の請求

ここからは、次の①から③の流れに沿って解説します。
- 実施機関に対して3号分割の請求を行う。
- 実施機関は、①の請求に基づいて標準報酬の改定及び決定をする。
- 改定又は決定された標準報酬に基づいて、老齢厚生年金又は障害厚生年金を(再)計算する。
3号分割では分割の割合を50%に固定するため、当事者又は家庭裁判所が按分割合を決める行程はありません。
また、実施機関に対して、按分割合の範囲などの情報を請求する行程もありません。
3号分割をするためには、請求期限内に請求書を提出する必要があります。
なお、特定被保険者が障害厚生年金の受給権者の場合における3号分割の請求の可否は、先の解説(こちら)をご参照ください。
原則

次の①~③の翌日から起算して5年(*1)を経過した場合は、原則として、3号分割を請求できません(法78条の14第1項ただし書、則78条の17第1項2号)
(*1)再掲します。次の①〜③の日が、改正省令施行日(令和8年4月1日)より前にある場合は、①〜③それぞれに該当した日の翌日から起算して2年(令和8年3月27日改正省令2項。以下同じ)
- 離婚が成立した日
- 婚姻が取り消された日
- 事実婚関係が解消したと認められる日
「特定被保険者が行方不明となって3年経過した」及び「事実上離婚したと同様の事情にある」については、請求期限はありません。
例外
後ほど解説する「3号分割の請求みなし」が適用される場合には、3号分割の請求期限にも合意分割の請求期限に係る例外(*5)が適用されます(同旨 則78条の17第2項、3項)
(*5)①~③から5年経過した後に「按分割合を定めた調停」が成立した場合は、調停成立から6か月間は請求期限が延長される等の取扱いをいいます(詳細はこちら)
厚生年金保険法
(再掲)第七十八条の十四(特定被保険者及び被扶養配偶者についての標準報酬の特例)
1 (本文省略)。ただし、当該請求をした日において当該特定被保険者が障害厚生年金(当該特定期間の全部又は一部をその額の計算の基礎とするものに限る。第七十八条の二十において同じ。)の受給権者であるときその他の厚生労働省令で定めるときは、この限りでない。
(以下省略)
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の十七(法第七十八条の十四第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定めるとき等)
1 法第七十八条の十四第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定めるときは、次の各号に掲げる場合とする。
一 三号分割標準報酬改定請求のあった日に特定被保険者が障害厚生年金の受給権者であって、特定期間の全部又は一部がその額の計算の基礎となっている場合(当該三号分割標準報酬改定請求において令第三条の十二の十一の規定により当該障害厚生年金の額の計算の基礎となった特定期間に係る被保険者期間が除かれている場合を除く。)
二 次のイからハまでに掲げる日の翌日から起算して五年(法第七十八条の四第一項の規定により対象期間の末日以後に提供を受けた情報について補正を要したと認められる場合における、法第七十八条の二十第一項本文の規定により標準報酬改定請求があったときにあったものとみなされる三号分割標準報酬改定請求の請求期間の計算については、当該補正に要した日数を除く。)を経過した場合
イ 離婚が成立した日
ロ 婚姻が取り消された日
ハ 第七十八条の十四第一号に掲げる場合に該当した日
2 前項第二号イからハまでに掲げる日の翌日から起算して五年を経過した日以後に、又は同号イからハまでに掲げる日の翌日から起算して五年を経過した日前六月以内に第七十八条の三第二項各号のいずれかに該当した場合(同項第一号又は第二号に掲げる場合に該当した場合にあっては、前項第二号イからハまでに掲げる日の翌日から起算して五年を経過した日前に請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てがあったときに限る。)について、法第七十八条の二十第一項本文の規定により標準報酬改定請求があったときにあったものとみなされる三号分割標準報酬改定請求に係る法第七十八条の十四第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定めるときは、前項第二号の規定にかかわらず、第七十八条の三第二項各号のいずれかに該当することとなった日の翌日から起算して六月を経過した場合とする。
3 第七十八条の三第三項の規定が適用される場合においては、法第七十八条の二十第一項本文の規定により標準報酬改定請求があったときにあったものとみなされる三号分割標準報酬改定請求に係る法第七十八条の十四第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定めるときは、第一項第二号の規定にかかわらず、法第七十八条の四第一項に規定する情報の提供があった日の翌日から起算して、第一号に掲げる期間から第二号に掲げる期間を除いた期間を経過した場合とする。この場合において、前項の規定の適用については、同項中「前項第二号イからハまでに掲げる日」とあるのは「法第七十八条の四第一項に規定する情報の提供があった日」と、「五年」とあるのは「次項第一号に掲げる期間から同項第二号に掲げる期間を除いた期間」と、「同号イからハまでに掲げる日」とあるのは「同条第一項に規定する情報の提供があった日」とする。
一 五年
二 第一項第二号イからハまでに掲げる日から情報提供請求を却下する処分がされた日までの期間
令和8年3月27日改正省令
附則二項
この省令の施行の日前の厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第七十八条の十四に規定する標準報酬の改定及び決定を実施機関に請求することができる期間の制限については、第一条の規定による改正後の厚生年金保険法施行規則第七十八条の十七の規定にかかわらず、なお従前の例による。
「合意分割の請求期限」は「3号分割の請求期限」より伸びる可能性があるため、3号分割の請求みなしについては、合意分割の請求期限と整合が取られます。

第一号厚生年金被保険者期間について3号分割を請求する者は、請求書(標準報酬改定請求書)を機構に提出する必要があります(則78条の19第1項)
国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済いずれかの厚生年金被保険者期間について、他の実施機関に合意分割の請求をしたときは、併せて、機構に対して請求書を提出したとみなします(同条3項)
(合意分割の請求と同様に、それぞれの期間について別々に請求書を提出する必要はありません)
ちなみに、機構に提出する請求書(標準報酬改定請求書)の様式は、合意分割と3号分割とで共通です。
(請求書には「合意分割」と「3号分割のみ」とを選択する欄が設けられています)
ポイントとしては、3号分割(のみ)の請求は、被扶養配偶者が単独で行うため、特定被保険者との合意(3号分割の請求をする旨の合意を含む)は必要ありません。
(お互いに第3号被保険者の期間がある場合は、一方から3号分割の請求があっても、他方から3号分割の請求があったとはみなされません。ただし、一方からでも合意分割を請求した場合は、両者について3号分割の請求があったとみなされます)
添付書類
3号分割の請求書(標準報酬改定請求書)には、下記の書類を添える必要があります(則78条の19第2項)
- 請求書に基礎年金番号を記載する場合は、基礎年金番号を明らかにできる書類
- 離婚等の区分に応じた、その旨を証明できる書類
- 3号分割の請求をした日前1か月以内に作成された、特定被保険者の生存を証明できる書類(*6)
- 特定被保険者が死亡した場合は、死亡の事実及び死亡年月日を証明できる書類(*6)
(*6)厚生労働大臣が住民基本台帳法に基づき本人確認情報の提供を受けられるときは、当該書類の添付を省略できます(請求書にマイナンバーを記入すれば、当該証明書を省略できる旨の規定です)
②の詳細は省略します(事実婚関係の期間についても、当該事実を明らかにできる書類が必要です)
実際に請求する際は、各実施機関(厚生労働大臣の場合は機構)の取扱いをご確認ください。
参考|日本年金機構(外部サイトへのリンク)|3号分割の請求手続き
3号分割の請求についての取扱いです。
3号分割の請求みなし

制度の対象となる期間の名称は、合意分割は「対象期間」、3号分割は「特定期間」です。
- 合意分割の請求をした場合において、合意分割の対象となる期間(対象期間といいます)に特定期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなします(法78条の20第1項)
- ただし、特定期間の全部が「特定被保険者の障害厚生年金」の計算の基礎となっている場合は、3号分割を請求できないため、3号分割の請求みなしもありません(同旨 同項ただし書)
(特定期間とは、3号分割による改定及び決定がされていない特定期間をいいます)
先に解説したとおり、障害厚生年金の計算の基礎となった被保険者期間と重複する期間は、特定期間に係る被保険者期間から除かれます(令3条の12の11)。そのため、上記ただし書の取扱いとなります。
厚生年金保険法
第七十八条の二十(標準報酬改定請求を行う場合の特例)
1 特定被保険者又は被扶養配偶者が、離婚等(第七十八条の二第一項に規定する離婚等をいう。)をした場合において、第七十八条の十四第二項及び第三項の規定による標準報酬の改定及び決定が行われていない特定期間の全部又は一部を対象期間として第七十八条の二第一項の規定による標準報酬の改定又は決定の請求をしたときは、当該請求をしたときに、第七十八条の十四第一項の請求があったものとみなす。ただし、当該請求をした日において当該特定被保険者が障害厚生年金の受給権者であるときは、この限りでない。
2 前項の場合において、第七十八条の三第一項の対象期間標準報酬総額の基礎となる当該特定期間に係る被保険者期間の標準報酬(標準報酬月額について、第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額)並びに第七十八条の六第一項及び第二項の当該特定期間に係る被保険者期間の改定前の標準報酬(標準報酬月額について、第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額)については、第七十八条の十四第二項及び第三項の規定による改定及び決定後の標準報酬とする。
3 第七十八条の十四第二項及び第三項の規定による標準報酬の改定及び決定が行われていない特定期間の全部又は一部を対象期間として第七十八条の四第一項の請求があった場合において、同項の請求があった日に特定被保険者が障害厚生年金の受給権を有しないときは、同条第二項に規定する情報は、第七十八条の十四第二項及び第三項の規定により当該対象期間中の特定期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定及び決定が行われたとみなして算定したものとする。
4 前項の規定は、第七十八条の五の求めがあった場合に準用する。
5 第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月の標準報酬月額について第七十八条の十四第二項の規定により改定された場合における第七十八条の三第一項及び第七十八条の六第一項の規定の適用については、第七十八条の三第一項中「標準報酬月額(第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額)」とあるのは「標準報酬月額」と、第七十八条の六第一項第一号中「標準報酬月額(第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額。次号において同じ。)」とあるのは「標準報酬月額」とする。
ちなみに、3号分割を請求した場合における「合意分割の請求みなし」はありません。
(3号分割と合意分割の有利・不利は、こちらで解説しています)
請求前に当事者の一方が死亡した場合

- 特定被保険者が死亡した日から起算して1か月以内に被扶養配偶者から3号分割の請求があったときは、特定被保険者が死亡した日の前日に当該請求があったとみなします(令3条の12の14第1項)
- 被扶養配偶者が死亡した日から起算して1か月以内に特定被保険者から合意分割の請求があったときは、合意分割の請求に伴う3号分割の請求みなしについて、①を準用します(同条2項)
②について補足します。
- 合意分割の請求においても①と同旨の規定が適用されます。そのため、被扶養配偶者の死亡日から起算して1か月以内ならば、特定被保険者から合意分割を請求できる場合があります。この場合、合意分割の請求は、被扶養配偶者の死亡日の前日にあったとみなされます(令3条の12の7、則78条の12)
- 上記の合意分割の請求に伴う「3号分割の請求みなし」は、②により、被扶養配偶者の死亡日の前日にあったとみなされます。
厚年の種別が複数ある場合

- 二つ以上の種別(*7)の被保険者であった期間を有する場合の3号分割は、各種別の標準報酬について同時に請求する必要があります(法78条の36第1項)
- 3号分割の請求みなしは、各種別の被保険者であった期間を合算し、一つの期間又は当該一つの期間に係る被保険者期間のみを有する者とみなして、適用されます(同条2項)
- 3号分割(3号分割の請求みなしを含む)による標準報酬は、各種別の被保険者期間ごとに改定及び決定します(同項)
(*7)第一号厚生年金被保険者、第二号厚生年金被保険者、第三号厚生年金被保険者又は第四号厚生年金被保険者のいずれであるかの区別をいいます。以下同じ(法15条)
(合意分割も同様に、各種別の期間を同時に請求する必要があります)
全体を一つの期間とみなして制度を適用し、標準報酬の分割そのものは各種別ごとに行うイメージです。
3号分割をした後に、遡りの3号届を提出した場合

- 3号分割により標準報酬の改定及び決定が行われた後に、被扶養配偶者に係る国民年金の第3号被保険者の届出が行われた場合については、当該届出が行われた日に3号分割の請求があったものとみなす(令3条の12の13)
- ただし、3号分割の請求ができない場合(特定期間の全部が特定被保険者の障害厚生年金の計算の基礎となっているとき、又は請求期限を過ぎたとき)は、①の限りでない(同条)
規定の趣旨は、合意分割の解説(こちら)をご参照ください。
標準報酬の改定及び決定

ここからは、実施機関が標準報酬を改定及び決定する場面を解説します。
「3号分割の請求」があった前提で解説します。
(請求しないと標準報酬は改定されません)

- 実施機関は、特定期間に係る被保険者期間の各月ごとに、特定被保険者及び被扶養配偶者の標準報酬月額を「特定被保険者の標準報酬月額 × \(\frac{1}{2}\)」にそれぞれ改定し、及び決定できます(法78条の14第2項)
- 実施機関は、特定被保険者が標準賞与額を有する特定期間に係る被保険者期間の各月ごとに、特定被保険者及び被扶養配偶者の標準賞与額を「特定被保険者の標準賞与額 × \(\frac{1}{2}\)」にそれぞれ改定し、及び決定できます(法78条の14第3項)
①における「特定被保険者の標準報酬月額 × \(\frac{1}{2}\)」は、養育特例(法26条1項)により従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月は、従前標準報酬月額 × \(\frac{1}{2}\)となります。
なお、賞与に養育特例は適用されません。
厚生年金保険法
第七十八条の十四(特定被保険者及び被扶養配偶者についての標準報酬の特例)
1 (略)
2 実施機関は、前項の請求があった場合において、特定期間に係る被保険者期間の各月ごとに、当該特定被保険者及び被扶養配偶者の標準報酬月額を当該特定被保険者の標準報酬月額(第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額)に二分の一を乗じて得た額にそれぞれ改定し、及び決定することができる。
3 実施機関は、第一項の請求があった場合において、当該特定被保険者が標準賞与額を有する特定期間に係る被保険者期間の各月ごとに、当該特定被保険者及び被扶養配偶者の標準賞与額を当該特定被保険者の標準賞与額に二分の一を乗じて得た額にそれぞれ改定し、及び決定することができる。
4 前二項の場合において、特定期間に係る被保険者期間については、被扶養配偶者の被保険者期間であったものとみなす。
5 第二項及び第三項の規定により改定され、及び決定された標準報酬は、第一項の請求のあった日から将来に向かってのみその効力を有する。
実施機関は、3号分割により標準報酬を改定及び決定したときは、その旨を特定被保険者及び被扶養配偶者に通知します(法78条の16)
3号分割により改定及び決定された標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額)は、合意分割の請求のあった日から将来に向かってのみ効力を有します(法78条の14第5項)
在職老齢年金
在職老齢年金における「標準賞与額」については、3号分割による改定前の標準賞与額に基づいて(総報酬月額相当額を)計算します。また、3号分割により決定された標準賞与額(被扶養配偶者に分割された標準賞与額のこと)については、(被扶養配偶者の)在職老齢年金の計算から除きます(法78条の19)
養育特例
養育特例が適用される場合は、養育中の標準報酬月額が従前標準報酬月額を下回る月については、従前標準報酬月額を用いて厚生年金の額(平均標準報酬額)を計算します(法26条1項)
上記の「標準報酬月額」及び「従前標準報酬月額」は、3号分割による改定前のそれら額となります。また、3号分割により決定されたそれらの額を除きます(令3条の12の9第1項)
(養育特例を考慮して3号分割により標準報酬月額を改定及び決定することと、養育中の標準報酬月額と従前標準報酬月額とを比較して養育特例の適用の可否を判定することは、区別が必要です)
合意分割における「離婚時みなし被保険者期間」に相当する期間です。

3号分割において、特定期間に係る被保険者期間は、被扶養配偶者の(厚年の)被保険者期間であったとみなします(法78条の14第4項)
上記のみなされた期間を「被扶養配偶者みなし被保険者期間」といいます(法78条の15)
厚生年金保険法
第七十八条の十四(特定被保険者及び被扶養配偶者についての標準報酬の特例)
1~3 (略)
4 前二項の場合において、特定期間に係る被保険者期間については、被扶養配偶者の被保険者期間であったものとみなす。
5 (略)
第七十八条の十五(記録)
実施機関は、厚生年金保険原簿に前条第四項の規定により被保険者期間であったものとみなされた期間(以下「被扶養配偶者みなし被保険者期間」という。)を有する者の氏名、被扶養配偶者みなし被保険者期間、被扶養配偶者みなし被保険者期間に係る標準報酬その他主務省令で定める事項を記録しなければならない。
(被保険者期間から「みなし被保険者期間」を除外する場合は、その旨の読替え規定があります)
実施機関は、被扶養配偶者みなし被保険者期間についても、当該期間を有する者の氏名や、当該みなし期間、当該みなし期間に係る標準報酬等を記録する必要があります(同条、則78条の18)
被扶養配偶者みなし被保険者期間の取扱い(当該みなし期間を「被保険者期間」から除く規定等)は、別の記事で解説する予定です。
みなし期間は「保険料納付済期間」に含まれるのか?
結論としては、含まれません。
具体的にはこちら(合意分割の解説)をご参照ください。
3号分割の請求みなしが適用される場合は、はじめに3号分割に係る標準報酬の改定及び決定を行い、その後、3号分割をした後の標準報酬に基づいて、合意分割に係る改定又は決定を行います(同旨 法78条の20第2項)
(3号分割をした後のお互いの標準報酬に基づいて、それぞれ対象期間標準報酬総額を計算します)
合意分割を請求したならば、3号分割も請求したとみなされます。ただし、標準報酬の分割は、3号分割をしてから合意分割となります。
年金額の改定

最後は、3号分割により改定及び決定した「標準報酬」に基づいて、受給権者の年金額を再計算する場面を解説します。
なお、「標準報酬」を計算の基礎としない年金(特別支給の老齢厚生年金の定額部分や、老齢基礎年金などの国民年金の給付)は、3号分割とは関係ありません。

厚生年金保険法の本則を附則により読替えて解説しています。
- 老齢厚生年金の受給権者について、3号分割により標準報酬の改定又は決定が行われたときは、特定期間に係る被保険者期間の最後の月以前における被保険者期間(*8)及び改定又は決定後の標準報酬に基づいて、老齢厚生年金の額を計算します(法78条の18第1項、法附則17条の11)
- ①の年金額は、3号分割の請求のあった日の属する月の翌月から改定します(法78条の18第1項)
(*8)特定期間の末日後に当該老齢厚生年金を支給すべき事由が生じた場合など、政令で定める場合は、政令で定める期間(詳細は下のタブに格納しておきます)
(このタブ内は、この記事の中でも難易度が高めです。焦らずに学習してみてください)
法附則17条の11により読替えられた法78条の18第1項の「政令で定める場合」は、三号分割の請求があった日における老齢厚生年金の受給権者について、次の①~⑲の場合とし、同項の「政令で定める期間」は、当該①~⑲に定める期間とする(令8条の2の6)
「65歳からの老齢厚生年金」の受給権者
① 法42条による老齢厚生年金(65歳からの老齢厚生年金)の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、3号分割により標準報酬の改定又は決定(以下、3号分割による改定)が行われた場合
- 3号分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
② 被保険者である法42条による老齢厚生年金の受給権者について、3号分割による改定が行われた場合(③及び④の場合を除く)
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間
③ 被保険者である法42条による老齢厚生年金の受給権者について、法43条2項による改定(在職定時改定)が行われた後、3号分割による改定が行われた場合(注1)
- 直近の在職定時改定に係る基準日(9月1日)の属する月前における被保険者期間
(注1)在職定時改定から3号分割による改定までの間に、退職時改定が行われた場合を除く(以下同じ)
④ 被保険者である法42条による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定(退職時改定)が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、3号分割による改定が行われた場合(注2)
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間
(注2)当該資格の取得から三号分割時の標準報酬の改定等までの間に、在職定時改定が行われた場合を除く(以下同じ)
「65歳からの老齢厚生年金」の支給繰上をした場合
⑤ 65歳未満の法附則7条の3第3項による老齢厚生年金(支給繰上による老齢厚生年金)の受給権者について、3号分割による改定が行われた場合
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間
⑥ 65歳以上の法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、3号分割による改定が行われた場合
- 3号分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
(65歳以上の支給繰上ではなく、65歳以上の「支給繰上による老齢厚生年金の受給権者」です)
⑦ 65歳以上の被保険者である法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者について、3号分割による改定が行われた場合(⑧及び⑨の場合を除く)
- 65歳に達した日の属する月前における被保険者期間
⑧ 65歳以上の被保険者である法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条2項による改定が行われた後、3号分割による改定が行われた場合(注1)
- 直近の在職定時改定に係る基準日(9月1日)の属する月前における被保険者期間
⑨ 65歳以上の被保険者である法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、3号分割による改定が行われた場合(注2)
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間
特別支給の老齢厚生年金(以下、特老厚)の受給権者
⑩ 法附則8条による老齢厚生年金(特老厚)の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、3号分割による改定が行われた場合
- 3号分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
⑪ 被保険者である法附則8条による老齢厚生年金の受給権者について、3号分割による改定が行われた場合(⑫の場合を除く)
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間及び当該権利を取得した月以後における被扶養配偶者みなし被保険者期間
ちなみに、過去には「昭和21年以前生まれ、又は昭和21年4月2日~昭和29年4月1日生まれ」の者で坑内員又は船員としての被保険者期間(実期間)が15年以上ある者は、法附則8条に該当する者とみなして、特老厚の支給開始年齢が55歳~59歳となっていました(平成6年改正法附則15条)
(昭和29年(1954年)生まれの人が59歳になるのは、平成25年(2013年)です)
⑫ 被保険者である法附則8条による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、3号分割による改定が行われた場合
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間及び当該被保険者の資格を最後に喪失した月以後における被扶養配偶者みなし被保険者期間
特老厚の支給開始年齢より前に繰上請求をした場合
⑬ 法附則8条の2各項の表の下欄に掲げる年齢(特例支給開始年齢)未満の法附則13条の4第3項による老齢厚生年金(支給繰上の特例による老齢厚生年金)の受給権者について、3号分割による改定が行われた場合
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間
⑭ 特例支給開始年齢以上の法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、3号分割による改定が行われた場合
- 3号分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
⑮ 特例支給開始年齢以上 65歳未満の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、3号分割による改定が行われた場合(⑯の場合を除く)
- 特例支給開始年齢に達した日の属する月前における被保険者期間
⑯ 特例支給開始年齢以上 65歳未満の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、3号分割による改定が行われた場合
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間
⑰ 65歳以上の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、3号分割による改定が行われた場合(⑱及び⑲の場合を除く)
- 65歳に達した日の属する月前における被保険者期間
⑱ 65歳以上の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条2項による改定が行われた後、3号分割による改定が行われた場合(注1)
- 直近の在職定時改定に係る基準日(9月1日)の属する月前における被保険者期間
⑲ 65歳以上の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、3号分割による改定が行われた場合(注2)
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間
参考(合意分割の解説記事と同じ内容です)
下記の計算における、それぞれの「期間」は「被扶養配偶者みなし被保険者期間」を含みます(令3条の12の9)
- 65歳からの老齢厚生年金の計算(法43条1項)における「被保険者であった全期間」
- 在職定時改定の計算(法43条2項)における「被保険者であった期間」
- 退職時改定の計算(法43条3項)における「被保険者であった期間」
- 特老厚の報酬比例部分の計算(法43条1項、法附則9条の2第2項2号、同号の例により計算する規定)における「被保険者であった全期間」
- 支給繰上げ(法附則7条の3)による老齢厚生年金の受給権者が、65歳に達したときの年金額の改定の計算(法附則7条の3第5項)についての「被保険者であった期間」
- 支給繰上げの特例(法附則13条の4)による老齢厚生年金の受給権者が、特例支給開始年齢に達したときの年金額の改定の計算(法附則13条の4第5項)における「被保険者であった期間」
- 支給繰上げの特例(法附則13条の4)による老齢厚生年金の受給権者が、特例支給開始年齢に達した日以後の被保険者期間を有する場合における、65歳に達したときの年金額の改定の計算(法附則13条の4第6項)についての「被保険者であった期間」
なお、在職定時改定(法43条2項)の適用の有無は、下記になります(65歳以上の者を対象とする制度です)
- 法附則8条による老齢厚生年金(特老厚)に適用されません(法附則9条)
- 法附則7条の3第3項による老齢厚生年金(支給繰上による老齢厚生年金)については、65歳に達しているものに限り適用されます(法附則15条の2)
- 法附則13条の4第3項による老齢厚生年金(支給繰上の特例による老齢厚生年金)についても、65歳に達しているものに限り適用されます(法附則15条の2)
また、退職時改定(法43条3項)の適用の有無は、下記になります(本来の支給年齢に達した者を対象とする制度です)
- 法附則8条による老齢厚生年金(特老厚)に適用されます(除外する旨の規定がないため)
- 法附則7条の3第3項による老齢厚生年金(支給繰上による老齢厚生年金)については、65歳に達しているものに限り適用されます(法附則15条の2)
- 法附則13条の4第3項による老齢厚生年金(支給繰上の特例による老齢厚生年金)については、特例支給開始年齢に達しているものに限り適用されます(法附則15条の2)

障害厚生年金の受給権者である被扶養配偶者については、次の①~③が適用されます(法78条の18第2項、令3条の12の8)
- 障害厚生年金の受給権者(被扶養配偶者に限る)について、障害厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間に係る標準報酬が3号分割により決定されたときは、決定後の標準報酬を基礎として障害厚生年金を計算します。
- ①の年金額は、3号分割の請求のあった日の属する月の翌月から改定します。
- ただし、被保険者期間の月数を300月とみなして計算されている障害厚生年金については、被扶養配偶者みなし被保険者期間をその計算に含めません。
障害厚生年金の受給権者が「特定被保険者の場合は?」について補足しておきます。
特定被保険者が障害厚生年金の受給権者の場合は、当該者に係る障害厚生年金の計算の基礎となっている被保険者期間(月)は除いて、「特定期間に係る被保険者期間」を算定します(令3条の12の11)
そのため、3号分割をしても、特定被保険者に係る障害厚生年金の額は変わりません。
ただし、合意分割の請求により「3号分割の請求みなし」が適用された場合は、合意分割による年金額の改定(合意分割は障害厚生年金の受給権者に係る制限がありません)を考慮する必要があります。
解説は以上です。
復習用として、合意分割と3号分割との比較を整理しておきます。
参考|合意分割と3号分割の要約
| 項目 | 合意分割 | 3号分割 |
| 施行日 | 平成19年4月1日 | 平成20年4月1日 |
| 施行日前の期間 | 年金分割の対象 | 年金分割の対象外 |
| 分割の請求者 | 当事者の双方 当事者の一方(公正証書等を要す) | 被扶養配偶者 |
| 当事者の名称 | 第一号改定者 第二号改定者 | 特定被保険者 被扶養配偶者 |
| 婚姻期間の名称 | 対象期間 | 特定期間(国年第3号の期間に限る) |
| 離婚等の範囲 | ①離婚 ②婚姻の取消 ③事実婚関係の解消 | ①離婚 ②婚姻の取消 ③事実婚関係の解消 ④特定被保険者が行方不明となって3年経過した ⑤事実上離婚したと同様の事情にある |
| 請求期限 | 上記①~③の翌日から5年 令和8年4月1日より前の①~③は2年 | 上記①~③の翌日から5年 令和8年4月1日より前の①~③は2年 ④⑤は請求期限なし |
| 情報提供請求 | あり | なし |
| 年金分割の割合 | 按分割合(二号の割合を超え、50%以下) 改定割合(計算に使用する割合) | 50%で固定 |
| 障厚に係る制限 | なし | 特定被保険者の障厚について その計算と重複する特定期間は分割の対象外 特定期間の全部が重複する場合は分割を請求できない |
| みなし期間の名称 | 離婚時みなし被保険者期間 | 被扶養配偶者みなし被保険者期間 |
| 請求みなし | 合意分割の請求は3号分割の請求とみなす | なし(3号分割のみの請求も可能) |
(合意分割はこちらで解説しています)
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 厚生年金保険法
日本年金機構|年金Q&A (各年金給付に関連する共通の情報)より|
https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/seido/kyotsu/index.html
- 年金Q&A (離婚時の厚生年金保険の分割制度)
- 年金Q&A (離婚時の第3号被保険者期間についての厚生年金保険の分割制度)
