この記事では、離婚時の年金分割のうち合意分割を解説しています。
記事中の略語は、それぞれ次の意味で使用しています。
- 法 ⇒ 厚生年金保険法
- 令 ⇒ 厚生年金保険法施行令
- 則 ⇒ 厚生年金保険法施行規則
- 機構 ⇒ 日本年金機構
- 実施機関 ⇒ 法2条の5で定める実施機関
- 事実婚関係 ⇒ 婚姻の届出をしていなくとも事実上は婚姻関係と同様の事情にあること
- 被保険者 ⇒ 厚生年金保険の被保険者
- 第3号被保険者 ⇒ 国民年金法7条1項3号の第三号被保険者
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
制度の全体像
はじめに制度の概要と用語の定義を解説します。
なお、以降の解説(解説中のイラストやそれに使用している色を含む)は、男女を入れ替えても同じです。
年金分割

ごくごく単純化すると、離婚時の年金分割は、次のように区別されます。
- 合意分割
分割する割合(上限50%)を当事者で決めて、「婚姻期間の標準報酬」をその割合で分割する制度 - 3号分割
分割する割合を50%に固定して、「婚姻期間かつ第3号被保険者であった期間の標準報酬」を50%ずつで分け合う制度
「合意分割」は、夫婦(であった者)が共に厚生年金保険の被保険者であった期間を含めて分割します。
「3号分割」は、一方が厚生年金保険の被保険者、他方が国民年金の第3号被保険者であった期間に係る分割です。
ちなみに、第3号被保険者であった期間を含めた「合意分割」の請求は、「3号分割」を請求したとみなします。
この記事で解説するのは「合意分割」です。

加工前の条文はタブ(解説|条文)を切り替えると確認できます。
必要に応じて開閉してください。
第一号改定者又は第二号改定者は、離婚等をした場合であって、次の①又は②に該当するときは、実施機関に対し、離婚等について対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求(標準報酬改定請求)ができます(法78条の2第1項)
- 当事者が「標準報酬の改定又は決定の請求をすること」及び「請求すべき按分割合」について合意しているとき。
- 家庭裁判所が「請求すべき按分割合」を定めたとき。
ただし、離婚等をした日の翌日から起算して5年(*1)を経過したときなど、請求期限を経過した場合は、上記の請求ができません(法78条の2第1項)
(*1)改正法施行日(令和8年4月1日)より前に離婚等をした場合は、離婚等をした日の翌日から起算して2年(令和7年改正法附則10条。以下同じ)
厚生年金保険法
第七十八条の二(離婚等をした場合における標準報酬の改定の特例)
1 第一号改定者(被保険者又は被保険者であった者であって、第七十八条の六第一項第一号及び第二項第一号の規定により標準報酬が改定されるものをいう。以下同じ。)又は第二号改定者(第一号改定者の配偶者であった者であって、同条第一項第二号及び第二項第二号の規定により標準報酬が改定され、又は決定されるものをいう。以下同じ。)は、離婚等(離婚(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者について、当該事情が解消した場合を除く。)、婚姻の取消しその他厚生労働省令で定める事由をいう。以下この章において同じ。)をした場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、実施機関に対し、当該離婚等について対象期間(婚姻期間その他の厚生労働省令で定める期間をいう。以下同じ。)に係る被保険者期間の標準報酬(第一号改定者及び第二号改定者(以下これらの者を「当事者」という。)の標準報酬をいう。以下この章において同じ。)の改定又は決定を請求することができる。ただし、当該離婚等をしたときから五年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは、この限りでない。
一 当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合(当該改定又は決定後の当事者の次条第一項に規定する対象期間標準報酬総額の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合をいう。以下同じ。)について合意しているとき。
二 次項の規定により家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき。
2 前項の規定による標準報酬の改定又は決定の請求(以下「標準報酬改定請求」という。)について、同項第一号の当事者の合意のための協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者の一方の申立てにより、家庭裁判所は、当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して、請求すべき按分割合を定めることができる。
3 標準報酬改定請求は、当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の謄本の添付その他の厚生労働省令で定める方法によりしなければならない。
附則第十七条の八(第一号改定者の特例)
第七十八条の二第一項の規定の適用については、当分の間、同項中「又は被保険者であった者」とあるのは、「若しくは被保険者であった者又は附則第四条若しくは他の法令の規定により被保険者であった期間とみなされた期間を有する者」とする。
厚生年金保険法では、別段の定めがなければ、用語の定義は下記になります。
- 「被保険者期間」とあれば、厚生年金の被保険者期間を意味します。
- 「標準報酬」とは、標準報酬月額及び標準賞与額をいいます(法28条)
- 「配偶者」、「夫」及び「妻」には、事実上婚姻関係にある者を含みます(法3条2項)
法78条の2第1項による標準報酬改定請求が、いわゆる合意分割(又は離婚時分割)の請求です。
この記事では単に「合意分割」と表記して解説します。
第一号改定者、第二号改定者

- 「第一号改定者」とは、被保険者又は被保険者であった者(*2)で、合意分割により標準報酬が(減額)改定されるものをいいます(法78条の2第1項)
- 「第二号改定者」とは、第一号改定者の配偶者であった者で、合意分割により標準報酬が(増額)改定され、又は決定されるものをいいます(同条)
- 第一号改定者及び第二号改定者を「当事者」といいます(同条)
(*2)当分の間は、被保険者期間とみなされた期間を有する者も含まれます(法附則17条の8)
ちなみに、第二号改定者の標準報酬がない月(厚年に加入していない月)は、当該月を第二号改定者の(厚年の)被保険者期間とみなして、標準報酬を「決定」します。
(上記のみなされた期間を「離婚時みなし被保険者期間」といいます)
以降、「決定」と明記する場合を除き、合意分割による標準報酬の「改定又は決定」を単に「改定」と表記しています。

夫(であった者)を第一号改定者、妻(であった者)を第二号改定者として、手続きの全体像を解説します。
- 合意分割により標準報酬が分割されるのは、婚姻から離婚までの期間です。この期間を「対象期間」といいます。
- 対象期間における「夫の標準報酬の総額」と「妻の標準報酬の総額」をそれぞれ「対象期間標準報酬総額」といいます。
仮に、夫の対象期間標準報酬総額(合意分割前)を100万円、妻の対象期間標準報酬総額(合意分割前)を50万円としましょう。
この場合、150万円に対する「合意分割後の妻の対象期間標準報酬総額」の割合を「按分割合」といいます。
- 当事者(夫 + 妻)で合意した場合は、その合意した割合を按分割合とします。
- 当事者(夫 + 妻)で合意がまとまらない場合は、申立てにより家庭裁判所が按分割合を定めます。
先の例において按分割合を\(\frac{75万円}{150万円}\)(50%)とする場合は、夫の対象期間標準報酬総額を「100万円から75万円に減額」改定し、妻の対象期間標準報酬総額を「50万円から75万円に増額」改定します。
(実際には、対象期間標準報酬総額の改定ではなく、各月ごとに標準報酬を改定します)
なお、按分割合を家庭裁判所が定めた場合であっても、合意分割の請求そのものは実施機関に対して行います。
実施機関は、「当事者で合意した」又は「家庭裁判所が定めた」按分割合に基づいて、夫と妻それぞれの標準報酬を改定します。
ところで、按分割合を「当事者で合意する」又は「家庭裁判所が定める」にしても、標準報酬などの情報が必要です。
そのため、合意分割の請求をする前に、実施機関に対して、按分割合を定めるために必要な情報を請求できるよう制度化されています。
手続きの流れ
手続きの流れを箇条書きで整理しておきます。
- 実施機関に対して、対象期間標準報酬総額など必要な情報を請求する(離婚前でも請求できます)
- 按分割合について「当事者で合意する」又は「家庭裁判所が定める」
- 実施機関に対して合意分割を請求する。
- 実施機関は、按分割合に基づいて、標準報酬を改定する。
- 老齢厚生年金又は障害厚生年金の受給権者については、改定された標準報酬に基づいて、年金額を計算する(③合意分割の請求日の属する月の翌月から、年金額を改定します)

つづいて用語の解説です。
次の①~③を総称して「離婚等」といいます(法78条の2第1項、則78条)
- 離婚(事実婚関係の解消を除く。以下同じ)
- 婚姻の取消し
- 事実婚関係にあった当事者の一方の被扶養配偶者である第3号被保険者が、第3号被保険者の資格を喪失したため、事実婚関係が解消したと認められる(当該事実婚関係にあった者との婚姻の届出により事実婚関係が解消した場合を除く)
以降、③を単に「事実婚関係が解消したと認められる」と表記します。
①及び②と異なり、③は当事者の一方が第3号被保険者として資格を喪失する必要があります。
ちなみに、合意分割は、平成19年4月1日以後にされた離婚等が制度の対象です(平成16年6月11日改正法附則46条)
(実際問題としては、離婚等から原則5年という請求期限があるため、自然と平成19年4月1日以後にされた離婚等になります)
ただし、平成19年4月1日以後の離婚等であれば、平成19年3月31日以前にある対象期間(婚姻期間)も合意分割の対象となります。
「対象期間」とは、次の①~③に応じ、①~③に定める期間をいいます(則78条の2第1項本文)
- 離婚をした場合
婚姻が成立した日から離婚が成立した日までの期間 - 婚姻の取消しをした場合
婚姻が成立した日から婚姻が取り消された日までの期間 - 事実婚関係が解消したと認められる場合
事実婚第3号被保険者期間
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の二(対象期間)
1 法第七十八条の二第一項に規定する厚生労働省令で定める期間(以下「対象期間」という。)は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間とする。ただし、第一号又は第二号に掲げる場合に該当する場合であって、第一号又は第二号に定める期間中に当事者以外の者が当該当事者の一方の被扶養配偶者である第三号被保険者であった期間又は当該当事者の一方が当該当事者の他方以外の者の被扶養配偶者である第三号被保険者であった期間と重複する期間があると認められるときは、第一号又は第二号に定める期間からその重複する期間を除くものとする。
一 離婚(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者について、当該事情が解消した場合を除く。以下同じ。)をした場合 婚姻が成立した日から離婚が成立した日までの期間
二 婚姻の取消しをした場合 婚姻が成立した日から婚姻が取り消された日までの期間(民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百三十二条の規定に違反する婚姻である場合については、当該婚姻に係る期間(当事者の一方が当該当事者の他方の被扶養配偶者である第三号被保険者であった期間を除く。)を除く。)
三 前条に定める事由に該当した場合 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった当事者の一方が当該当事者の他方の被扶養配偶者である第三号被保険者であった期間(当該事情が解消しない間に当該第三号被保険者であった期間が複数ある場合にあっては、これらの期間を通算した期間(以下「事実婚第三号被保険者期間」という。)とする。)
2 婚姻が成立した日前から婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった当事者について、当該当事者が婚姻の届出をしたことにより当該事情が解消し、前項第一号又は第二号に掲げる場合に該当した場合における対象期間は、同項本文の規定にかかわらず、同項第一号又は第二号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間と事実婚第三号被保険者期間を通算した期間とする。
①~③における「期間」を基礎として、①〜③に応じた「対象期間」を算定します。
①離婚 ②婚姻の取消しについて

直前の①又は②の期間中に下記いずれかの期間がある場合は、①又は②の期間から下記の期間を除外します(則78条の2第1項ただし書)
- 当事者以外の者が「当事者の一方の被扶養配偶者である第3号被保険者」であった期間
- 当事者の一方が「当事者の他方以外の者の被扶養配偶者である第3号被保険者」であった期間
以降は「被扶養配偶者である」の表記を省略します。
(公的年金では、届出による婚姻関係が実体を完全に失っているときに限り、重婚的内縁関係にある者が法律婚にある者より優先されるケースがあります)
また、②婚姻の取消し(民法743条)の理由が重婚の禁止(民法732条)の場合には、当該婚姻に係る期間(当事者の一方が他方の第3号被保険者であった期間を除く)は、②における「期間」に含めません(則78条の2第1項2号)
(婚姻の取消しは、民法748条により将来に向かってのみ効力を生じます。ただし「対象期間」としては、則78条の2第1項2号が適用されます)
(重婚的内縁関係および重婚については、国年の第3号被保険者として認定されたならば、公的年金では3号の認定に係る実態を優先します)
③事実婚の解消について

直前の③における「事実婚第3号被保険者期間」とは、事実婚関係にあった当事者の一方が他方の第3号被保険者であった期間(事実婚関係を解消しない間に当該第3号被保険者であった期間が複数ある場合は、これらを通算した期間)をいいます(則78条の2第1項3号)
婚姻の成立日より前から事実婚関係にあった当事者が、婚姻の届出により事実婚関係を解消した場合は、「事実婚第3号被保険者期間」と「直前の①又は②の期間」とを通算した期間を「対象期間」とします(則78条の2第2項)
ちなみに、同じ相手と婚姻・離婚(又は事実婚関係)を繰り返した場合は、婚姻期間ごとに合意分割の請求が必要です。
(一つの対象期間とされるのは「事実婚とそれに引き続く法律婚」です)

「按分割合」とは、合意分割による標準報酬の改定後における「当事者の対象期間標準報酬総額の合計額」に対する「第二号改定者の対象期間標準報酬総額」の割合をいいます(法78条の2第1項)
$$按分割合= \frac{改定後の二号の総額}{当事者の総額の合計額}$$
(当事者の対象期間標準報酬総額の合計額は、改定の前後で同額です)
「按分割合」という結論を先に決めてしまい、そこから逆算して後述する「改定割合」を導きます。
対象期間標準報酬総額
船員保険の被保険者であった期間等についての対象期間標準報酬総額の計算の特例(法附則17条の9)は省略します。
「対象期間標準報酬総額」とは、対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額(*3)と標準賞与額に当事者を受給権者とみなして対象期間の末日において適用される再評価率を乗じて得た額の総額をいいます(法78条の3第1項)
(*3)養育特例(法26条1項)により従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額
厚生年金保険法
第七十八条の三(請求すべき按分割合)
1 請求すべき按分割合は、当事者それぞれの対象期間標準報酬総額(対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額(第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額)と標準賞与額に当事者を受給権者とみなして対象期間の末日において適用される再評価率を乗じて得た額の総額をいう。以下同じ。)の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合を超え二分の一以下の範囲(以下「按分割合の範囲」という。)内で定められなければならない。
2 (省略)
第七十八条の二十(標準報酬改定請求を行う場合の特例)
(1項から4項まで省略)
5 第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月の標準報酬月額について第七十八条の十四第二項の規定により改定された場合における第七十八条の三第一項及び第七十八条の六第一項の規定の適用については、第七十八条の三第一項中「標準報酬月額(第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額)」とあるのは「標準報酬月額」と、第七十八条の六第一項第一号中「標準報酬月額(第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額。次号において同じ。)」とあるのは「標準報酬月額」とする。
厚生年金保険法施行令
第三条の十二の五(平成十五年四月一日前の期間に係る対象期間標準報酬総額の計算)
対象期間標準報酬総額を計算する場合において、対象期間の全部又は一部が平成十五年四月一日前であるときは、当該対象期間標準報酬総額は、法第七十八条の三第一項の規定にかかわらず、同日前の対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額に一・三を乗じて得た額並びに同日以後の対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額(法第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、当該従前標準報酬月額)及び標準賞与額に、それぞれ当事者(法第七十八条の二第一項に規定する当事者をいう。第三条の十二の七において同じ。)を受給権者とみなして対象期間の末日において適用される再評価率(法第四十三条第一項に規定する再評価率をいう。)を乗じて得た額の総額とする。
なお、すでに3号分割により標準報酬が改定された月(*a)については、上記(*3)は適用されません(法78条の20第5項)
(*a)「3号分割をした後に合意分割を請求する」又は「合意分割の請求をして3号分割の請求みなしが適用される」場合が該当します(順を追って解説します)
養育特例はこちらの記事で解説しています。
ちなみに、平成15年4月1日前の対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額については、1.3倍してから再評価率を乗じます(令3条の12の5)
(総報酬制が導入された日より前と同日以後とに分けて対象期間標準報酬総額を計算し、合算します)
按分割合の範囲

按分割合は、合意分割による標準報酬の改定前における「当事者の対象期間標準報酬総額の合計額」に対する「第二号改定者の対象期間標準報酬総額」の割合を超え、\(\frac{1}{2}\)以下の範囲内で定める必要があります(法78条の3第1項)
上記の範囲を「按分割合の範囲」といいます(同項)
第二号改定者の改定後の持分(按分割合)は、最低でも「改定前の持分を超える」必要があり、最大でも「全体の50%」とする趣旨です。
(按分割合の範囲の例外は、後ほど解説します)
計算に算入する被保険者期間(月)の基準
はじめに結論です。原則論としては、合意分割の計算に「婚姻日の属する月」の標準報酬は算入します。一方、「離婚日の属する月」は算入しません。
- 被保険者期間は、月を単位として、(同月得喪を除き)被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までを算入します(法19条)
- 対象期間は、日を単位とした期間です。
(資格取得日から資格喪失日の前日までの期間(日を単位とした期間)は「被保険者であった期間」といいます)
そこで、対象期間の範囲内にある被保険者期間(月)が、対象期間標準報酬総額の計算(合意分割によって標準報酬を改定する月)に含まれるか否かが問題となります。
(日を単位とする対象期間を月を単位とする被保険者期間に換算します)
この記事では、対象期間標準報酬総額の計算に含める被保険者期間を「対象期間に係る被保険者期間」と定義して解説します。

対象期間標準報酬総額を計算する場合において、被保険者期間を「対象期間に係る被保険者期間」に算入するか否かは、次の基準で判定します(令3条の12の4)
- 「対象期間の初日の属する月」が被保険者期間であるときは、その月を算入する。
- 「対象期間の末日の属する月」が被保険者期間であるときは、その月を算入しない。
- 「対象期間の初日と末日が同一の月」に属するときは、その月を算入しない。
厚生年金保険法施行令
第三条の十二の四(対象期間に係る被保険者期間の計算)
対象期間標準報酬総額(法第七十八条の三第一項に規定する対象期間標準報酬総額をいう。次条において同じ。)を計算する場合における対象期間(法第七十八条の二第一項に規定する対象期間をいう。以下この条及び次条において同じ。)に係る被保険者期間については、厚生労働省令で定めるところにより、対象期間の初日の属する月が被保険者期間であるときはその月をこれに算入し、対象期間の末日の属する月が被保険者期間であるときはその月をこれに算入しない。ただし、対象期間の初日と末日が同一の月に属するときは、その月は、対象期間に係る被保険者期間に算入しない。
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の二の二(対象期間に係る被保険者期間)
1 対象期間標準報酬総額(法第七十八条の三第一項に規定する対象期間標準報酬総額をいう。以下同じ。)を計算する場合において、前条の規定により定められた対象期間に係る被保険者期間については、当該対象期間の算定の基礎となる期間が複数ある場合にあっては、当該基礎となる各期間の初日の属する月が被保険者期間であるときはこれを算入し、当該基礎となる各期間の末日の属する月が被保険者期間であるときはこれを算入しない。ただし、当該基礎となる期間の一の期間の末日と当該一の期間以外の期間(当該一の期間後の当該基礎となる期間に限る。以下同じ。)の初日とが同一の月に属するときは、その月は、対象期間に係る被保険者期間に算入する。
2 前項に規定する場合において、対象期間の算定の基礎となる一の期間の初日と末日が同一の月に属するときは、前項の規定にかかわらず、その月は、対象期間に係る被保険者期間に算入しない。ただし、その月に当該一の期間以外の期間の初日が属する場合であって、当該一の期間以外の期間の末日がその月の翌月以後に属するときは、この限りでない。
(加工前の下記①~⑤も、上記のタブを切り替えると確認できます)
なお、対象期間の算定の基礎となる期間が複数ある場合(直前の①~③についての解説を参照)においては、次の①~⑤により、「対象期間に係る被保険者期間」に算入するか否かを判断します(則78条の2の2)
- 当該基礎となる各期間の初日の属する月が被保険者期間であるときは、その月(各期間の初日の属する月)を算入する。
- 当該基礎となる各期間の末日の属する月が被保険者期間であるときは、その月(各期間の末日の属する月)を算入しない。
- ①②であっても、当該基礎となる期間の一つの期間の末日と、当該一つの期間以外の期間(*4)の初日とが、同一の月に属するときは、その月(同一の月)を算入する。
- ①~③にかかわらず、対象期間の算定の基礎となる「一つの期間の初日と末日」が同一の月に属するときは、その月(一つの期間の初日と末日が属している月)を算入しない。
- ④における「その月」に「当該一つの期間以外の期間(*4)の初日」が属する場合であって、「当該一つの期間以外の期間の末日」が「その月」の翌月以後に属するときは、④の限りでない。
(*4)当該一つの期間よりも後に存在する期間に限ります。
(⑤については、④が適用されないため、①~③によります)
留意事項としては、上記①~⑤は、同じ相手と婚姻・離婚を繰り返した場合(対象期間が複数ある場合)ではなく、一つの対象期間の内に対象期間の算定の基礎となる期間(ある一つの対象期間を構成している期間)が複数ある場合の取扱いです。
混乱する場合は、「事実婚関係からの引き続く法律婚」に当てはめてみてください。
制度の概要と用語の定義は以上です。
情報提供の請求

ここからは、次の①~⑤の流れで合意分割の手続きを解説します。
- 実施機関に対して、対象期間標準報酬総額など必要な情報を請求する。
- 按分割合について「当事者で合意する」又は「家庭裁判所が定める」
- 実施機関に対して合意分割の請求を行う。
- 実施機関は、按分割合に基づいて、標準報酬を改定する。
- 改定された標準報酬に基づいて、老齢厚生年金又は障害厚生年金を(再)計算する。
加工前の条文は、必要に応じてタブ(解説|条文)を切り替えてください。

当事者又はその一方は、実施機関に対し、主務省令の定めにより、合意分割のために必要な情報を請求できます(法78条の4第1項)
ただし、次の①~③の場合においては、上記の請求(以下、情報提供請求)はできません(法78条の4第1項ただし書、則78条の7)
- 情報の提供を受けた日の翌日から起算して3か月を経過していない(例外あり)
- 合意分割の請求をした後に情報提供請求が行われた
- 合意分割の請求期限を経過した(離婚等をしたときから5年を経過したとき等)
厚生年金保険法
第七十八条の四(当事者等への情報の提供等)
1 当事者又はその一方は、実施機関に対し、主務省令で定めるところにより、標準報酬改定請求を行うために必要な情報であって次項に規定するものの提供を請求することができる。ただし、当該請求が標準報酬改定請求後に行われた場合又は第七十八条の二第一項ただし書に該当する場合その他厚生労働省令で定める場合においては、この限りでない。
2 前項の情報は、対象期間標準報酬総額、按分割合の範囲、これらの算定の基礎となる期間その他厚生労働省令で定めるものとし、同項の請求があった日において対象期間の末日が到来していないときは、同項の請求があった日を対象期間の末日とみなして算定したものとする。
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の六(当事者からの情報提供請求)
1 第一号厚生年金被保険者期間について情報提供請求をする当事者(以下この条において「情報提供請求当事者」という。)は、次に掲げる事項を記載した請求書を機構に提出しなければならない。
一 氏名、生年月日及び住所
二 個人番号又は基礎年金番号
三 次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、それぞれイからハまでに定める事項
イ 情報提供請求当事者が、対象期間の末日(情報提供請求があった日において対象期間の末日が到来していないときは、当該請求があった日とする。以下この条において同じ。)が属する月の前月の末日において、被保険者の資格を喪失している場合 同日以前の直近の被保険者の資格を喪失した年月日
ロ 情報提供請求当事者が、対象期間の末日が属する月の前月の末日において、被保険者である場合(ハに該当する場合を除く。) 同日以前の直近の被保険者の資格を取得した年月日
ハ 情報提供請求当事者が、対象期間の末日が属する月の前月において被保険者の資格を喪失し、同月にさらに被保険者の資格を取得した場合であって、同月の末日において被保険者であるとき 当該資格を喪失した年月日及び当該資格を取得した年月日
四 次のイからヘまでに掲げる場合の区分に応じ、それぞれイからヘまでに定める事項
イ 情報提供請求があった日において、当事者が婚姻をしている場合 当該婚姻が成立した日
ロ 情報提供請求があった日において、当事者が婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合 事実婚第三号被保険者期間の初日及び現に当該事情にある旨
ハ 情報提供請求があった日以前において、第七十八条の二第一項第一号に掲げる場合に該当する場合 同号に規定する期間
ニ 情報提供請求があった日以前において、第七十八条の二第一項第二号に掲げる場合に該当する場合 同号に規定する期間
ホ 情報提供請求があった日以前において、第七十八条の二第一項第三号に掲げる場合に該当する場合 事実婚第三号被保険者期間及び婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情が解消した旨
ヘ 情報提供請求があった日以前において、第七十八条の二第一項ただし書に規定する第三号被保険者であった期間があると認められる場合 当該第三号被保険者並びにその者の配偶者の氏名、生年月日及び基礎年金番号
五 婚姻が成立した日前から婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった情報提供請求当事者について、当該情報提供請求当事者が婚姻の届出をしたことにより当該事情が解消した場合にあっては、事実婚第三号被保険者期間の初日
六 次条各号のいずれかに該当する場合にあっては、その旨
2 前項の請求書には、次に掲げる書類を添えなければならない。
一 前項の規定により同項の請求書に基礎年金番号を記載する者にあっては、基礎年金番号通知書その他の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
二 当事者間の身分関係を明らかにすることができる市町村長の証明書又は戸籍の謄本若しくは抄本
三 情報提供請求があった日において婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある情報提供請求当事者であって、当該事情にある間に事実婚第三号被保険者期間を有するものであるときは、事実婚第三号被保険者期間の初日から情報提供請求があった日までの間引き続き当該事情にあることを明らかにすることができる書類
四 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった情報提供請求当事者であって、当該事情にあった間に事実婚第三号被保険者期間を有していたものであるときは、事実婚第三号被保険者期間の初日から当該事情が解消するまでの間引き続き当該事情にあったことを明らかにすることができる書類
3 当事者の一方のみが情報提供請求をするときは、第一項各号に掲げる事項のほか、次の各号に掲げる事項を第一項の請求書に記載しなければならない。
一 当事者の他方の氏名、生年月日及び住所
二 その他必要な事項
4 前項の場合において、当該当事者が第七十八条の二第一項各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、当該当事者の一方による情報提供請求があった日において、当該当事者の他方について情報提供請求があったものとみなす。
5 当事者が、法第二条の五第一項第二号に規定する第二号厚生年金被保険者期間(以下「第二号厚生年金被保険者期間」という。)、同項第三号に規定する第三号厚生年金被保険者期間(以下「第三号厚生年金被保険者期間」という。)又は同項第四号に規定する第四号厚生年金被保険者期間(以下「第四号厚生年金被保険者期間」という。)について、他の実施機関に法第七十八条の四第一項の規定による情報提供請求をしたときは、併せて、第一項の請求書を提出したものとみなす。
6 厚生労働大臣は、法第七十八条の四第一項に規定する情報を提供するときは、文書でその内容を情報提供請求当事者に通知しなければならない。ただし、第三項の場合であって、当該当事者が第七十八条の二第一項各号に掲げる場合のいずれにも該当しないときは、当該当事者の他方に対し通知しないものとする。
7 第五項の場合において、他の実施機関が情報提供請求当事者に法第七十八条の四第一項に規定する情報を提供したときは、厚生労働大臣は、当該情報を提供したものとみなす。
第七十八条の七(法第七十八条の四第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合)
法第七十八条の四第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は、同項の規定により情報の提供を受けた日の翌日から起算して三月を経過していない場合(次の各号に掲げる場合を除く。)とする。
一 当事者について国民年金法に規定する被保険者の種別の変更があった場合
二 法第二十六条第一項の規定による申出が行われた場合
三 国民年金法附則第七条の三第一項又は第二項の規定による届出が行われた場合(第一号に掲げる場合に該当する場合を除く。)
四 当事者の一方が障害厚生年金(対象期間中の特定期間(法第七十八条の十四第一項に規定する特定期間をいい、同条第二項及び第三項の規定による標準報酬の改定及び決定が行われていないものに限る。)の全部又は一部をその額の計算の基礎とするものに限る。次号において同じ。)の受給権者となった場合
五 当事者の一方の有する障害厚生年金の受給権が消滅した場合
六 請求すべき按分割合に関する審判若しくは調停又は人事訴訟法第三十二条第一項の規定による請求すべき按分割合に関する処分の申立てをするのに必要な場合
第七十八条の八(情報提供の内容)
法第七十八条の四第二項に規定する厚生労働省令で定める情報は、次の各号に掲げる情報とする。
一 第一号改定者の氏名
二 第二号改定者の氏名
三 法第七十八条の四第二項の規定により情報提供請求があった日が対象期間の末日とみなされた場合にあっては、対象期間の末日とみなされた日
四 第七十八条に定める事由に該当する場合にあっては、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった当事者について当該事情が解消したと認められる日
五 その他標準報酬改定請求をするために必要な情報
③における合意分割の請求期限は後述します。
前回から3か月を経過していなくとも情報提供請求ができる場合
①における例外は下記になります(則78条の7)
- 当事者について国民年金法における被保険者の種別(国民年金の第一号、二号、三号いずれかの被保険者であることの区分)に変更があった場合(3号特例の届出が行われた場合を含む)
- 養育特例(法26条1項)の申出が行われた場合
- 当事者の一方が障害厚生年金(*5)の受給権者となった場合
- 当事者の一方の有する障害厚生年金(*5)の受給権が消滅した場合
- 請求すべき按分割合に関する審判若しくは調停又は請求すべき按分割合に関する処分(人事訴訟法32条1項による附帯処分。以下同じ)の申立てをするのに必要な場合
(*5)対象期間中の特定期間(3号分割における特定期間をいい、3号分割による標準報酬の改定又は決定が行われていないものに限る)の全部又は一部をその額の計算の基礎とするものに限る。
3号特例(国民年金法附則7条の3、同法平成16年改正附則20条)は別の記事で解説する予定です。
情報提供請求の方法は、主務省令(厚生労働大臣、財務大臣、文部科学大臣又は地方公務員等共済組合法144条の29第1項による主務大臣の発する命令)で定められています(法78条の4第1項、法100条の3の3第2項)
この記事は、第一号厚生年金被保険者(国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済以外の被保険者)を想定して解説します。
年金分割のための情報提供請求書の提出
第一号厚生年金被保険者期間について情報提供請求をする当事者は、請求書(年金分割のための情報提供請求書)を機構に提出する必要があります(則78条の6第1項)
上記の請求書には、当事者間の身分関係(婚姻期間や、事実婚関係の期間)を明らかにできる添付書類が必要です(同条2項)
提供される情報の内容
実施機関から提供される情報は下記になります(法78条の4第2項)
- 対象期間標準報酬総額
- 按分割合の範囲
- これらの算定の基礎となる期間
- その他厚生労働省令(則78条の8)で定めるもの(各改定者の氏名や、対象期間の末日とみなされた日などがあります)
なお、情報提供請求があった日において対象期間の末日が到来していないとき(つまり離婚等をする前に請求したとき)は、請求があった日を対象期間の末日とみなして上記の情報を算定します(法78条の4第2項)
情報提供(通知)される者の範囲

(実際の請求書には、「当事者二人による共同の請求」「当事者一方のみによる請求」を選択する欄があります)
- 離婚等をした後は、当事者の一方(A)のみからの情報提供請求であっても、当事者の一方(A)による情報提供請求があった日において、当事者の他方(B)について情報提供請求があったとみなされます(則78条の6第4項)
- 厚生労働大臣は、情報を提供するときは、文書でその内容を情報提供請求当事者(A及びB)に通知します(同条6項本文)
- ただし、離婚等をする前に当事者の一方(A)のみから情報提供請求がされた場合は、当事者の他方(B)には通知されません(同項ただし書)
(上記の箇条書きは、AとBを入れ替えても同じです)
つまり、「離婚等の前」かつ「当事者の一方のみ」からの請求に限り、相手に通知されません。
参考|他の実施機関に請求書を提出した場合
国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済いずれかの厚生年金被保険者期間について、他の実施機関に情報提供請求をしたときは、併せて、機構に対しても請求書を提出したとみなします(則78条の6第5項)
この場合は、他の実施機関が情報を提供したときは、厚生労働大臣は当該情報を提供したとみなします(同条7項)
公務員であった期間は共済組合へ、民間企業に勤めていた期間は機構へのように、情報提供請求書を別々に提出する必要はありません。
(後述の「標準報酬改定請求書」を提出する場合も同様です)

対象期間標準報酬総額は、情報提供の請求をした日と、離婚等をした日とで変動し得るため、「按分割合の範囲」における下限の割合は変動する可能性があります(上限は50%で変わりません)
(合意分割により「請求すべき按分割合」は「按分割合の範囲」で定めます)
按分割合の範囲は、原則として、当事者を受給権者とみなして「対象期間の末日において適用される再評価率」を用いて算出されます(法78条の3第1項)
(離婚の場合における対象期間の末日は、離婚日です)

例外としては、「按分割合の範囲」について情報提供(*6)を受けた日が対象期間の末日前であって、次の①~③いずれかに該当する場合には、情報提供として受けた按分割合の範囲を採用できます(法78条の3第2項、則78条の5)
- 情報提供を受けた日から対象期間の末日までの間が1年を超えない
- 情報提供を受けた日の翌日から起算して1年を経過した日より前に「請求すべき按分割合に関する調停の申立て又は請求すべき按分割合に関する(附帯)処分の申立て」をした場合であって、情報提供を受けた日の翌日から起算して1年を経過した日以後に調停が成立したとき等
- 「請求すべき按分割合に関する調停の申立て又は請求すべき按分割合に関する(附帯)処分の申立て」をした後に情報提供を受けた場合であって、情報提供を受けた日の翌日から起算して1年を経過した日以後に調停が成立したとき等
(*6)裁判所又は受命裁判官(簡単にいうと、その裁判所の裁判官)若しくは受託裁判官(簡単にいうと、その裁判所の依頼を受けて業務を行う、他の裁判所の裁判官)が受けた資料の提供を含みます。なお、提供された情報が複数あるときは、最後のものをいいます。
厚生年金保険法
第七十八条の三
1 (省略)
2 次条第一項の規定により按分割合の範囲について情報の提供(第七十八条の五の規定により裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官が受けた資料の提供を含み、これが複数あるときは、その最後のもの。以下この項において同じ。)を受けた日が対象期間の末日前であって対象期間の末日までの間が一年を超えない場合その他の厚生労働省令で定める場合における標準報酬改定請求については、前項の規定にかかわらず、当該情報の提供を受けた按分割合の範囲を、同項の按分割合の範囲とすることができる。
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の五(情報提供の有効期限)
法第七十八条の三第二項に規定する厚生労働省令で定める場合は、法第七十八条の四第一項の規定により按分割合の範囲(法第七十八条の三第一項に規定する按分割合の範囲をいう。)について情報の提供(法第七十八条の五の規定により裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官が受けた資料の提供を含み、これが複数あるときは、その最後のもの。以下この条において同じ。)を受けた日が対象期間の末日前であって、次の各号のいずれかに該当する場合とする。
一 情報の提供を受けた日から対象期間の末日までの間が一年を超えない場合
二 情報の提供を受けた日の翌日から起算して一年を経過した日前に請求すべき按分割合に関する調停の申立て又は人事訴訟法第三十二条第一項の規定による請求すべき按分割合に関する処分の申立てをした場合であって、当該情報の提供を受けた日の翌日から起算して一年を経過した日以後に第七十八条の三第二項各号のいずれかに掲げる場合に該当したとき
三 請求すべき按分割合に関する調停の申立て又は人事訴訟法第三十二条第一項の規定による請求すべき按分割合に関する処分の申立てをした後に情報の提供を受けた場合であって、当該情報の提供を受けた日の翌日から起算して一年を経過した日以後に第七十八条の三第二項各号のいずれかに掲げる場合に該当したとき
第七十八条の三(標準報酬改定請求の請求期限)
2 (省略)
一 請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき
二 請求すべき按分割合を定めた調停が成立したとき
三 人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第三十二条第一項の規定による請求すべき按分割合を定めた判決が確定したとき
四 人事訴訟法第三十二条第一項の規定による処分の申立てに係る請求すべき按分割合を定めた和解が成立したとき
上記②及び③(裁判所による手続が長期化した場合)における調停が成立したとき等とは、次のいずれかに該当したときをいいます(同旨 則78条の5第2号、3号、則78条の3第2項)
- 請求すべき按分割合を定めた審判が確定した
- 請求すべき按分割合を定めた調停が成立した
- 請求すべき按分割合を定めた判決が確定した
- 処分の申立てについて、請求すべき按分割合を定めた和解が成立した
情報提供として受けた按分割合の範囲を採用した場合における「改定割合」は後述します。
請求すべき按分割合の合意又は決定

ここからは、合意分割を請求する際の按分割合を定める場面を解説します。
実施機関に対して「合意分割の請求」をする前に、次のいずれかにより「請求すべき按分割合」を決めておく必要があります。
- 当事者で合意する。
- 家庭裁判所が定める。

「請求すべき按分割合」を当事者で合意できた場合は、合意した割合に基づいて、合意分割の請求をします。
具体的には後ほど解説しますが、「合意分割の請求」の方法は、次の二つに大別されます。
- 当事者の一方からでも請求できる方法
- 当事者(それぞれの代理人を含む)が共に行う場合に限り請求できる方法
①は、請求すべき按分割合について「公的な第三者により証明された書類」を添付して、合意分割の請求書を提出する方法です。
②は、当事者が共に「当事者で作成した合意書」を持参して、合意分割の請求書を提出する方法です。
「請求すべき按分割合」を当事者で合意できても、合意の仕方によって、合意分割の請求方法(①を選択できるか)は異なります。

合意分割について次の①又は②に該当するときは、当事者の一方の申立てにより、家庭裁判所は、請求すべき按分割合を定めることができます(法78条の2第2項)
- 当事者の合意のための協議が調わない
- 当該協議をすることができない
上記の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して、按分割合を定めます(同項)
(家庭裁判所が定める按分割合も、上限50%(按分割合の範囲内)で定められます)
実施機関は、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官に対し、その求めに応じて、請求すべき按分割合を定めるために必要な資料を提供します(法78条の5)
合意分割の請求

ここからは、請求すべき按分割合を定めた後に、実施機関に対して合意分割の請求書を提出する場面を解説します。
合意分割をするためには、請求期限内に厚生労働省令で定める方法で請求書を提出する必要があります。
なお、合意分割の請求期限を経過した場合は、情報提供請求(前述)はできません。
原則

次の①~③の翌日から起算して5年(*1)を経過した場合は、原則として、合意分割を請求できません(則78条の3第1項)
(*1)再掲します。改正法施行日(令和8年4月1日)より前に離婚等をした場合は、離婚等をした日の翌日から起算して2年(以下同じ)
- 離婚が成立した日
- 婚姻が取り消された日
- 事実婚関係が解消したと認められる日
合意分割を請求できる期間は、上記①〜③の翌日から起算して5年を経過する日(以下、原則の請求期限)までとなります。
ただし、情報提供請求により対象期間の末日以後に提供を受けた情報について、補正を必要とした場合は、当該補正に要した日数は請求期間の計算から除きます(同項ただし書)
例外1

上記①~③の翌日から起算して5年を経過した場合でも、次のいずれかに該当するときは、次のいずれかに該当した日の翌日から起算して6か月を経過する日までは、合意分割を請求できます(則78条の3第2項)
- 請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき(*7)
- 請求すべき按分割合を定めた調停が成立したとき(*7)
- (按分割合に関する附帯処分の申立てを行い)請求すべき按分割合を定めた判決が確定したとき
- (按分割合に関する附帯)処分の申立てについて、請求すべき按分割合を定めた和解が成立したとき
(*7)原則の請求期限までに、請求すべき按分割合に関する審判又は調停の申立てをしていた場合に限ります。
例外2

「情報提供請求を却下する処分」を「取り消す決定」がされた場合は、(その後)情報提供があった日の翌日から起算して、次の上段から下段を差し引いた期間を経過するまでは、合意分割を請求できます(法78条の3第3項)
- 上段 5年
- 下段 離婚等(原則の①~③を参照)の日から「情報提供請求を却下する処分」がされた日までの期間
(本来ならば「情報提供請求を却下する処分」がされた日に情報は提供されたはず と考えてみてください )
厚生年金保険法
(再掲)第七十八条の二(離婚等をした場合における標準報酬の改定の特例)
1 第一号改定者(略)又は第二号改定者(略)は、離婚等(略)をした場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、実施機関に対し、当該離婚等について対象期間(略)に係る被保険者期間の標準報酬(略)の改定又は決定を請求することができる。ただし、当該離婚等をしたときから五年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは、この限りでない。
(以下省略)
令和7年6月20日改正法
附則第十条(離婚等をした場合における標準報酬の改定の特例に関する経過措置)
附則第一条第一項第四号に掲げる規定の施行の日前に第二条の規定(同号に掲げる改正規定に限る。)による改正前の厚生年金保険法第七十八条の二第一項に規定する離婚等をした場合における同項の規定により標準報酬の改定又は決定を実施機関に請求することができる期間の制限については、なお従前の例による。
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の三(標準報酬改定請求の請求期限)
1 法第七十八条の二第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は、次の各号に掲げる日の翌日から起算して五年を経過した場合とする。ただし、法第七十八条の四第一項の規定により対象期間の末日以後に提供を受けた情報について補正を要したと認められる場合における法第七十八条の二第二項に規定する標準報酬改定請求(以下「標準報酬改定請求」という。)の請求期間の計算については、当該補正に要した日数は、算入しない。
一 離婚が成立した日
二 婚姻が取り消された日
三 第七十八条に定める事由に該当した日
2 前項各号に掲げる日の翌日から起算して五年を経過した日以後に、又は同項各号に掲げる日の翌日から起算して五年を経過した日前六月以内に次の各号のいずれかに該当した場合(第一号又は第二号に掲げる場合に該当した場合にあっては、同項各号に掲げる日の翌日から起算して五年を経過した日前に請求すべき按分割合(法第七十八条の二第一項第一号に規定する請求すべき按分割合をいう。以下同じ。)に関する審判又は調停の申立てがあったときに限る。)について、同条第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は、前項本文の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当することとなった日の翌日から起算して六月を経過した場合とする。
一 請求すべき按分割合を定めた審判が確定したとき
二 請求すべき按分割合を定めた調停が成立したとき
三 人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第三十二条第一項の規定による請求すべき按分割合を定めた判決が確定したとき
四 人事訴訟法第三十二条第一項の規定による処分の申立てに係る請求すべき按分割合を定めた和解が成立したとき
3 法第七十八条の四第一項の規定による請求(以下「情報提供請求」という。)を却下する処分を取り消す決定が行われた場合について、法第七十八条の二第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は、第一項本文の規定にかかわらず、法第七十八条の四第一項に規定する情報の提供があった日の翌日から起算して、第一号に掲げる期間から第二号に掲げる期間を除いた期間を経過した場合とする。この場合において、前項の規定の適用については、同項中「前項各号に掲げる日」とあるのは「法第七十八条の四第一項に規定する情報の提供があった日」と、「五年」とあるのは「次項第一号に掲げる期間から同項第二号に掲げる期間を除いた期間」と、「同項各号に掲げる日」とあるのは「同条第一項に規定する情報の提供があった日」とする。
一 五年
二 第一項各号に掲げる日から情報提供請求を却下する処分がされた日までの期間
例外2の場合における例外1の読替えは省略します(必要に応じて上記タブを切り替えてください)
ちなみに、合意分割を請求し3号分割を請求したとみなされる場合には、3号分割の請求みなしにも、合意分割の請求期限の例外1及び2が適用されます(同旨 則78条の17第2項、3項)

合意分割の請求は、厚生労働省令で定める方法で行う必要があります(法78条の2第3項)
その方法は、次の二つに大別されます。
- 当事者の一方からでも請求できる方法
- 当事者(それぞれの代理人を含む)が共に行う場合に限り請求できる方法
試験対策のため、規定ベースで解説します。
当事者の一方からでも請求できる方法
次のいずれかの書類(以下、公正証書等)を合意分割の請求書に添付する場合は、当事者の一方からでも合意分割を請求できます(則78条の4第1項1号)
- 「当事者が合意分割の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している」旨が記載された公正証書の謄本若しくは抄本、その旨が記録された公正証書に記録されている事項の全部若しくは一部を出力した書面又はその旨が記載された公証人の認証を受けた私署証書
- 請求すべき按分割合を定めた確定した審判の謄本又は抄本
- 請求すべき按分割合を定めた調停についての調停調書の謄本又は抄本
- 請求すべき按分割合を定めた確定した判決の謄本又は抄本
- 請求すべき按分割合を定めた和解についての和解調書の謄本又は抄本
(公正証書に記録されている事項の全部又は一部を出力した書面とは、デジタル化された公正証書の内容を公証役場で出力し交付されたものをいいます)
(公証人の認証を受けた私署証書とは、当事者で作成し署名した合意書(必要事項が記載された私文書)について、その署名は本人のものだと公証人が証明したものをいいます)
当事者が共に行う場合に限り請求できる方法
下記①及び②を持参して合意分割の請求書を提出する方法(以下、当事者で作成した合意書を持参する方法)も認められています(則78条の4第1項2号)
ただし、当事者で作成した合意書を持参する方法は、当事者が共に行う場合(それぞれの代理人が持参する場合を含む)に限られます(同号)
- 「当事者が合意分割の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している」旨を記載し、かつ、当事者自ら署名した書類(氏名及び生年月日など必要事項が記載されたものに限る)
- 本人確認書類等
(代理人による請求の場合でも、①合意書に自署をするのは当事者です)
ちなみに、第一号改定者の代理人は、第二号改定者の代理人になれません(同号)
②の本人確認書類等とは、下記のもの(以下、運転免許証等)をいいます(同号)
- 運転免許証
- 運転経歴証明書(交付年月日が平成24年4月1日以降のものに限る)
- 旅券
- 個人番号カード
- 印鑑及びその印鑑に係る印鑑登録証明書
なお、代理人が①の書類(合意書)を持参する場合は、委任状(委任状に押印した印鑑に係る印鑑登録証明書が添付されているものに限る)も必要です(同号)
(代理人が持参する場合は、代理人に係る運転免許証等が必要です)
(運転免許証等は、合意書や委任状に記載された氏名、生年月日及び住所と同一のものが記載されていものに限ります)
厚生年金保険法
(1項及び2項は省略)
3 標準報酬改定請求は、当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の謄本の添付その他の厚生労働省令で定める方法によりしなければならない。
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の四(法第七十八条の二第三項に規定する厚生労働省令で定める方法)
1 法第七十八条の二第三項に規定する厚生労働省令で定める方法は、次に掲げるものとする。
一 次のいずれかに掲げる書類の添付
イ 当事者が標準報酬改定請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の謄本若しくは抄本、その旨が記録された公正証書に記録されている事項の全部若しくは一部を出力した書面又はその旨が記載された公証人の認証を受けた私署証書(第一号改定者(法第七十八条の二第一項に規定する第一号改定者をいう。以下同じ。)及び第二号改定者(同項に規定する第二号改定者をいう。以下同じ。)の氏名及び生年月日並びに当該第一号改定者及び第二号改定者のうち基礎年金番号通知書の交付を受けた者の基礎年金番号が記載されたものに限る。)
ロ 請求すべき按分割合を定めた確定した審判の謄本又は抄本(前条第二項の規定が適用される場合にあっては、請求すべき按分割合を定めた確定した審判の謄本又は抄本及び当該審判の申立てをした日を証する書類)
ハ 請求すべき按分割合を定めた調停についての調停調書の謄本又は抄本(前条第二項の規定が適用される場合にあっては、請求すべき按分割合を定めた調停についての調停調書の謄本又は抄本及び当該調停の申立てをした日を証する書類)
ニ 請求すべき按分割合を定めた確定した判決の謄本又は抄本
ホ 請求すべき按分割合を定めた和解についての和解調書の謄本又は抄本
二 次に掲げる書類等の持参(第一号改定者又はその代理人(以下この号において「第一号代理人」という。)及び第二号改定者又はその代理人(第一号代理人を除く。以下この号において「第二号代理人」という。)が共に行うものに限る。)
イ 当事者が標準報酬改定請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨を記載し、かつ、当事者自ら署名した書類(第一号改定者及び第二号改定者の氏名及び生年月日並びに当該第一号改定者及び第二号改定者のうち基礎年金番号通知書の交付を受けた者の基礎年金番号が記載されたものに限る。)
ロ 次の(1)又は(2)に掲げる書類等を持参する者の区分に応じ、当該(1)又は(2)に規定する書類等
(1) 第一号改定者又は第二号改定者 当該第一号改定者若しくは当該第二号改定者の氏名、生年月日及び住所と同一の氏名、生年月日及び住所が記載されている運転免許証、運転経歴証明書(交付年月日が平成二十四年四月一日以降のものに限る。)、旅券若しくは番号利用法第二条第七項に規定する個人番号カード(以下このロにおいて「運転免許証等」と総称する。)又は当該第一号改定者若しくは当該第二号改定者の印鑑及びその印鑑に係る印鑑登録証明書
(2) 第一号代理人又は第二号代理人(以下このロにおいて単に「代理人」という。) 当該第一号改定者若しくは当該第二号改定者の記名及び押印がある委任状(押印した印鑑に係る印鑑登録証明書が添付されている場合に限る。)並びに当該代理人の氏名、生年月日及び住所と同一の氏名、生年月日及び住所が記載されている運転免許証等又は当該代理人の印鑑及びその印鑑に係る印鑑登録証明書
2 前項第一号及び第二号に掲げる書類に記載した請求すべき按分割合に小数点以下五位未満の端数があるときは、これを四捨五入して得た割合で記載されているものとみなす。
ちなみに、「請求すべき按分割合」に小数点以下5位未満の端数があるときは、これを四捨五入します(則78条の4第2項)
第一号厚生年金被保険者期間について合意分割を請求する者は、厚生労働省令で定める方法により、請求書(標準報酬改定請求書)を機構に提出する必要があります(則78条の11第1項)
国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済いずれかの厚生年金被保険者期間について、他の実施機関に合意分割の請求をしたときは、併せて、機構に対して請求書を提出したとみなします(則78条の11第3項)
(前述の「情報提供請求」と同様に、それぞれの期間について別々に請求書を提出する必要はありません)
添付書類
(公正証書等や当事者で作成した合意書とは別に必要な添付書類です)
合意分割の請求書(標準報酬改定請求書)には、下記の書類を添える必要があります(則78条の11第2項)
- 請求書に基礎年金番号を記載する場合は、基礎年金番号を明らかにできる書類
- 当事者間の身分関係(婚姻期間等)を明らかにできる市町村長の証明書又は戸籍の謄本若しくは抄本(事実婚関係の期間についても、当該事実を明らかにできる書類が必要です)
- 合意分割の請求をした日前1か月以内に作成された、当事者の生存を証明できる書類(*8)
- 当事者の一方が死亡した場合は、死亡の事実及び死亡年月日を証明できる書類(*8)
(*8)厚生労働大臣が住民基本台帳法に基づき本人確認情報の提供を受けられるときは、当該書類の添付を省略できます(請求書にマイナンバーを記入すれば、当該証明書を省略できる旨の取扱いです)
実際に請求する際は、実施機関(厚生労働大臣の場合は機構)における取扱いをご確認ください。
参考|日本年金機構(外部サイトへのリンク)|合意分割の請求手続き
標準報酬改定請求(合意分割の請求)についての取扱いです。
3号分割の請求みなし

合意分割の請求をした場合において、対象期間に特定期間(3号分割の対象となる期間)が含まれるときは、原則として、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなします(法78条の20第1項)
(例外は、請求日において特定被保険者が障害厚生年金の受給権者の場合です。具体的には別の記事で解説します)
なお、3号分割の請求みなしが適用される合意分割(3号分割をしてから合意分割となります)において、年金分割のための情報提供請求をした場合は、3号分割を行ったと仮定して情報が算定されます(法78条の20第3項、則78条の20)
ちなみに、3号の期間を有する人の視点からは、下記の考え方となります。
- 合意分割を請求したならば、3号分割を請求したとみなしても不利になりません(3号の期間に係る按分割合 = 50%に相当するため)
- 一方、3号分割については、3号分割のみを請求したほうが有利な場合もあります(3号の期間があっても、相手より対象期間標準報酬総額が高くなるケースはあり得ます)
(合意分割の請求みなしはないため、3号分割のみの請求は可能です)
請求前に当事者の一方が死亡した場合

当事者の一方が死亡した日から起算して1か月以内に当事者の他方から合意分割の請求があったときは、当事者の一方が死亡した日の前日に当該請求があったとみなします(令3条の12の7)
なお、一方が死亡した場合における「請求すべき按分割合を明らかにできる書類」は、公正証書等(合意分割の請求方法の解説を参照)に限られます(同条、則78条の12)
(一方が死亡した場合は、合意書を共同で持参できないため、請求すべき按分割合は公的な第三者によって証明されている必要があります)
厚年の種別が複数ある場合

- 二つ以上の種別(*9)の被保険者であった期間を有する場合の合意分割は、各種別の標準報酬について同時に請求する必要があります(法78条の35第1項)
- 按分割合は、各種別の被保険者であった期間を合算し、一つの期間に係る被保険者期間のみを有する者とみなして算定します(同条2項)
- 標準報酬は、上記の按分割合を基礎として、各種別の被保険者期間ごとに改定します(同項)
(*9)第一号厚生年金被保険者、第二号厚生年金被保険者、第三号厚生年金被保険者又は第四号厚生年金被保険者のいずれであるかの区別をいいます。以下同じ(法15条)
イメージとしては、全体を一つの期間とみなして制度(共通の按分割合)を適用し、標準報酬の分割そのもの(後ほど解説する改定割合の算定を含む)は各種別ごとに行います。
合意分割をした後に、遡りの第3号被保険者の届出をした場合
- 合意分割により標準報酬の改定が行われた後に、国民年金の第3号被保険者の届出が行われた場合は、当該届出が行われた日に合意分割の請求があったものとみなす(令3条の12の6)
- ただし、合意分割の請求期限を過ぎた場合は、①の限りでない(同条)
規定の趣旨としては、下記になります(同旨 平成19年3月29日庁保険発0329008号)
- 合意分割の制度においては、第3号被保険者期間についての事後の届出により、合意分割の基礎となる対象期間が伸長される。
- 上記により対象期間が伸長されても、当該合意分割に係る対象期間としての同一性は失われない。
- 当該伸長された対象期間に基づいて、「従前に定められた請求すべき按分割合」によって、合意分割による改定(標準報酬の改定)が行われる。
標準報酬の改定又は決定

ここからは、実施機関が標準報酬を改定(又は決定)する場面の解説です。
合意分割の請求があった前提で解説します。
(離婚等をしても請求しないと標準報酬は改定されません)

標準報酬月額の改定
実施機関は、第一号改定者が標準報酬月額を有する対象期間に係る被保険者期間の各月ごとに、当事者の標準報酬月額を次の①②のとおり改定できます(法78条の6第1項)
- 第一号改定者
第一号改定者の改定前の標準報酬月額 × (1-改定割合) - 第二号改定者
第二号改定者の改定前の標準報酬月額(ない月はゼロ)+ 第一号改定者の改定前の標準報酬月額 × 改定割合
①②における標準報酬月額は、養育特例(法26条1項)により従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月は、従前標準報酬月額となります。
標準賞与額の改定
標準賞与額の改定についても、①②と同じです。
このタブ内の「標準報酬月額」を「標準賞与額」に読替えてください。ただし、賞与に養育特例は適用されません。
厚生年金保険法
第七十八条の六(標準報酬の改定又は決定)
1 実施機関は、標準報酬改定請求があった場合において、第一号改定者が標準報酬月額を有する対象期間に係る被保険者期間の各月ごとに、当事者の標準報酬月額をそれぞれ次の各号に定める額に改定し、又は決定することができる。
一 第一号改定者 改定前の標準報酬月額(第二十六条第一項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、従前標準報酬月額。次号において同じ。)に一から改定割合(按分割合を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した率をいう。以下同じ。)を控除して得た率を乗じて得た額
二 第二号改定者 改定前の標準報酬月額(標準報酬月額を有しない月にあっては、零)に、第一号改定者の改定前の標準報酬月額に改定割合を乗じて得た額を加えて得た額
2 実施機関は、標準報酬改定請求があった場合において、第一号改定者が標準賞与額を有する対象期間に係る被保険者期間の各月ごとに、当事者の標準賞与額をそれぞれ次の各号に定める額に改定し、又は決定することができる。
一 第一号改定者 改定前の標準賞与額に一から改定割合を控除して得た率を乗じて得た額
二 第二号改定者 改定前の標準賞与額(標準賞与額を有しない月にあっては、零)に、第一号改定者の改定前の標準賞与額に改定割合を乗じて得た額を加えて得た額
3 前二項の場合において、対象期間のうち第一号改定者の被保険者期間であって第二号改定者の被保険者期間でない期間については、第二号改定者の被保険者期間であったものとみなす。
4 第一項及び第二項の規定により改定され、又は決定された標準報酬は、当該標準報酬改定請求のあった日から将来に向かってのみその効力を有する。
「第一号改定者の改定前の標準報酬月額 × 改定割合」は、第一号改定者からは差し引き、第二号改定者には加えます。
実施機関は、合意分割により標準報酬を改定したときは、その旨を当事者に通知します(法78条の8)
合意分割により改定された標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額)は、合意分割の請求のあった日から将来に向かってのみ効力を有します(法78条の6第4項)
在職老齢年金
在職老齢年金における「標準賞与額」ついては、合意分割による改定前の標準賞与額に基づいて(総報酬月額相当額を)計算します。また、合意分割により決定された標準賞与額は、(第二号改定者の)在職老齢年金の計算から除きます(法78条の11)
養育特例
養育特例が適用される場合は、養育中の標準報酬月額が従前標準報酬月額を下回る月については、従前標準報酬月額を用いて厚生年金の額(平均標準報酬額)を計算します(法26条1項)
上記の「標準報酬月額」及び「従前標準報酬月額」は、合意分割による改定前のそれら額となります。また、合意分割により決定されたそれらの額を除きます(令3条の12の3)
(養育特例を考慮して合意分割により標準報酬月額を改定することと、養育中の標準報酬月額と従前標準報酬月額とを比較して養育特例の適用の可否を判定することは、区別が必要です)
改定割合の数式は複雑なため、標準報酬の改定の数式(直前の①及び②)を優先して覚えてください。
「改定割合」とは、按分割合を基礎として厚生労働省令の定めにより算定した率をいいます(法78条の6第1項)
厚生年金保険法
第七十八条の六(標準報酬の改定又は決定)
1 (略)
一 (略)に一から改定割合(按分割合を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した率をいう。以下同じ。)を控除して得た率を乗じて得た額
(以下省略)
厚生年金保険法施行規則
第七十八条の九(改定割合の算定方法)
法第七十八条の六第一項第一号に規定する改定割合は、第一号に掲げる率を第二号に掲げる率で除して得た率(その率に小数点以下七位未満の端数が生じたときは、これを四捨五入して得た率とする。)とする。
一 請求すべき按分割合から、イに掲げる額をロに掲げる額で除して得た数に一から請求すべき按分割合を控除して得た率を乗じて得た率を控除して得た率
イ 法第七十八条の三第一項の規定により算定した第二号改定者の対象期間標準報酬総額
ロ 法第七十八条の三第一項の規定により算定した第一号改定者の対象期間標準報酬総額
二 請求すべき按分割合に、イに掲げる額をロに掲げる額で除して得た数に一から請求すべき按分割合を控除して得た率を乗じて得た率を合算して得た率
イ 法第七十八条の三第一項の規定により第二号改定者の対象期間標準報酬総額を算定するときに適用される再評価率(同項に規定する再評価率をいう。以下この号において同じ。)を第一号改定者に適用される再評価率とみなして同項の規定の例により算定した第一号改定者の対象期間標準報酬総額
ロ 法第七十八条の三第一項の規定により算定した第一号改定者の対象期間標準報酬総額
第七十八条の十三(改定割合の特例)
標準報酬改定請求について、法第七十八条の三第二項に規定する当該情報の提供を受けた按分割合の範囲内で定められた按分割合が対象期間の末日における当事者それぞれの対象期間標準報酬総額の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合(以下この条において「対象期間の末日における第二号改定者の割合」という。)以下である場合は、当該按分割合を基礎として法第七十八条の六第一項第一号の規定により算定した改定割合は、対象期間の末日における第二号改定者の割合を基礎として法第七十八条の六第一項第一号の規定により算定した改定割合のうち最も低い割合とみなす。
計算の趣旨としては、合意分割により標準報酬を改定した結果、第二号改定者の持分の割合が「按分割合(前述)」となるよう設定される割合を意味します(同旨 則78条の9)
もう少し具体的にいうと、改定割合=\(\frac{第二号改定者へ分割する対象期間標準報酬総額}{第一号改定者の改定前の対象期間標準報酬総額}\)に相当します。
改定割合の算定方法は下のタブに格納しておきます。
「按分割合」とは、合意分割による標準報酬の改定後における下記の割合をいいます(法78条の2第1項)
$$按分割合= \frac{第二号改定者の報酬総額}{当事者の報酬総額の合計額}$$
(報酬総額は、対象期間標準報酬総額です)
「改定割合」とは、下記の割合をいいます(則78条の9)
$$改定割合= \frac{①の計算}{②の計算}$$
(① ÷ ②に小数点以下7位未満の端数が生じたときは、これを四捨五入します)
按分割合 - \(\frac{A}{B}\) ×(1-按分割合)
A 第二号改定者の対象期間標準報酬総額
B 第一号改定者の対象期間標準報酬総額
按分割合 + \(\frac{C}{D}\) ×(1-按分割合)
C 第二号改定者の対象期間標準報酬総額を算定するときに適用される再評価率を第一号改定者に適用される再評価率とみなして算定した、第一号改定者の対象期間標準報酬総額
D 第一号改定者の対象期間標準報酬総額
(A~Dにおける対象期間標準報酬総額は、合意分割による改定前の総額です)
①を「基準率」、②を「補正率」と定義して各式の趣旨を解説します。
①②の式を変形すると下記になります(D = Bです)
$$①基準率= \frac{按分割合(A+B)-A}{B}$$
$$②補正率= \frac{C+按分割合(D-C)}{D}$$
$$改定割合= \frac{①基準率}{②補正率}$$
(再評価率は生年月日によって異なる場合があるため、②により補正してから改定割合を算出します)
ちなみに、②(両者の再評価率に基づく報酬総額の差額に相当する比率)を無視して、改定割合の式を変形すると「 改定割合 × B = 按分割合 ×(A + B)- A 」 と表現できます。
計算
仮の設定として、第一号改定者の対象期間標準報酬総額を「100万円」、第二号改定者の対象期間標準報酬総額を「50万円」とします。また、按分割合は「0.5」とします。
①は、0.5 - \(\frac{50万円}{100万円}\) × (1-0.5)= 0.25 です。
複雑になるため、②の計算結果は「1」とします(第一号改定者と第二号改定者の再評価率は同じとします)
よって、改定割合は ① ÷ ② = 0.25 となります。
第一号改定者の合意分割後の標準報酬月額は、「改定前の標準報酬月額 × (1-改定割合)」です。
つまり、100万円 × (1-0.25)= 75万円となります。
第二号改定者の合意分割後の標準報酬月額は、「改定前の標準報酬月額 + 第一号改定者の改定前の標準報酬月額 × 改定割合」です。
つまり、50万円 + 100万円 × 0.25 = 75万円となります。
結果として、改定前の総額(150万円)は、按分割合「0.5」のとおり第一号改定者「75万円」、第二号改定者「75万円」に改定されました。
実際には、お互いの対象期間標準報酬総額が75万円となるように「各月の標準報酬」を改定しますが、計算の趣旨は以上となります。
参考|3号分割の請求みなしの場合
3号分割の請求があったとみなされた場合は、はじめに3号分割に係る標準報酬の改定を行い、その後、3号分割をした後の対象期間標準報酬総額に基づいて改定割合を算出し、合意分割に係る標準報酬の改定を行います(法78条の20第2項)
なお、3号分割の計算においても「養育特例による従前標準報酬月額」は考慮されるため、同じ月(すでに3号分割をした月)に適用された従前標準報酬月額は、3号分割をした後の合意分割の計算(按分割合の算定、合意分割による標準報酬月額の改定)には適用されません(同条5項)
参考|改定割合の特例
次の①が②以下の場合は、①を基礎として算定した改定割合は、②の割合を基礎として法78条の6第1項1号により算定した改定割合のうち最も低い割合とみなします(則78条の13)
- 「情報提供として受けた按分割合の範囲内」で定められた按分割合
- 対象期間の末日における「当事者それぞれの対象期間標準報酬総額の合計額」に対する「第二号改定者の対象期間標準報酬総額」の割合
前述のとおり、対象期間標準報酬総額は「情報提供の請求をした日」と「離婚等をした日」とで変動し得るため、①の按分割合は、対象期間の末日における按分割合の下限(\(\frac{改定前の2号}{1号+2号}\) )を下回る可能性があります(上限は50%で変わりません)

合意分割において、対象期間のうち第一号改定者の(厚年の)被保険者期間であって第二号改定者の(厚年の)被保険者期間でない期間は、第二号改定者の(厚年の)被保険者期間であったとみなします(法78条の6第3項)
上記のみなされた期間を「離婚時みなし被保険者期間」といいます(法78条の7)
厚生年金保険法
第七十八条の六(標準報酬の改定又は決定)
1 (略)
2 (略)
3 前二項の場合において、対象期間のうち第一号改定者の被保険者期間であって第二号改定者の被保険者期間でない期間については、第二号改定者の被保険者期間であったものとみなす。
4 (略)
第七十八条の七(記録)
実施機関は、厚生年金保険原簿に前条第三項の規定により被保険者期間であったものとみなされた期間(以下「離婚時みなし被保険者期間」という。)を有する者の氏名、離婚時みなし被保険者期間、離婚時みなし被保険者期間に係る標準報酬その他主務省令で定める事項を記録しなければならない。
離婚時みなし被保険者期間は、第二号改定者が「国年の第1号又は第3号被保険者であった期間」に限定されないため、第二号改定者が60歳未満の期間とは限りません。
実施機関は、離婚時みなし被保険者期間についても、当該期間を有する者の氏名や、当該みなし期間、当該みなし期間に係る標準報酬等を記録する必要があります(同条、則78条の10)
離婚時みなし被保険者期間の取扱い(当該みなし期間を「被保険者期間」から除く規定等)は、別の記事で解説する予定です。
みなし期間は「保険料納付済期間」に含まれるのか?
国民年金法及び厚生年金保険法における「保険料納付済期間」には、「国民年金の第二号被保険者としての被保険者期間」が含まれます(法3条1項、国民年金法5条1項)
国民年金の第二号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者(65歳以上の者は、老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付の受給権を有しない被保険者に限る)をいいます(令5条、国民年金法7条1項2号、同法附則3条)
離婚時みなし被保険者期間は、第二号改定者の(厚年の)被保険者期間であったとみなします。
(被保険者期間から「みなし被保険者期間」を除外する場合は、その旨の読替え規定があります)
つまり、当該みなし期間を有する者を厚生年金保険の被保険者(又は被保険者であった者)とみなす取扱いではありません。
(みなし期間を有する者を「被保険者」に含める場合は、その旨の読替え規定があります)
そのため、「離婚時みなし被保険者期間」に係る標準報酬月額が〇〇月決定されても、「保険料納付済期間」が〇〇月増えるわけではありません。
言い換えると、支給要件を「保険料納付済期間が△△年以上」とする旨の制度であれば、「本人の保険料納付済期間で△△年以上」必要です。
なお、国民年金法昭和60年改正附則8条2項1号により、昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間における(厚年の)被保険者期間(20歳前及び60歳以後の期間を除く)は保険料納付済期間とみなされますが、当該規定における(厚年の)被保険者期間からは「離婚時みなし被保険者期間」が除かれています(平成16年法附則48条)
年金額の改定

最後は、合意分割により改定された標準報酬に基づいて、受給権者の年金額を再計算する場面を解説します。
(まだ年金を受け取っていない場合は、将来年金を受け取るときに計算します)
なお、「標準報酬」を計算の基礎としない年金(特別支給の老齢厚生年金の定額部分や、老齢基礎年金などの国民年金の給付)は、合意分割とは関係ありません。

- 老齢厚生年金の受給権者について、合意分割により標準報酬の改定が行われたときは、対象期間に係る被保険者期間の最後の月以前における被保険者期間(*10)及び改定後の標準報酬に基づいて、老齢厚生年金の額を計算します(法78条の10第1項)
- ①の年金額は、合意分割の請求のあった日の属する月の翌月から改定します(同項)
(*10)対象期間の末日後に老齢厚生年金を支給すべき事由が生じた場合など、政令で定める場合は、政令で定める期間(詳細は下のタブに格納しておきます)
(このタブ内は、この記事の中でも難易度が高めです。焦らずに学習してみてください)
法78条の10第1項の「政令で定める場合」は、合意分割の請求があった日における老齢厚生年金の受給権者について、次の①~⑲の場合とし、同項の「政令で定める期間」は、①~⑲の区分に応じ、当該①~⑲に定める期間とする(令3条の12の2)
「65歳からの老齢厚生年金」の受給権者
① 法42条による老齢厚生年金(65歳からの老齢厚生年金)の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、合意分割により標準報酬の改定又は決定(以下、合意分割による報酬の改定)が行われた場合
- 合意分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
② 被保険者である法42条による老齢厚生年金の受給権者について、合意分割による報酬の改定が行われた場合(③及び④の場合を除く)
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間及び当該権利を取得した月以後における離婚時みなし被保険者期間
③ 被保険者である法42条による老齢厚生年金の受給権者について、法43条2項による改定(在職定時改定)が行われた後、合意分割による報酬の改定が行われた場合(注1)
- 直近の在職定時改定に係る基準日(9月1日)の属する月前における被保険者期間
(注1)在職定時改定から合意分割による報酬の改定までの間に、退職時改定が行われた場合を除く(以下同じ)
④ 被保険者である法42条による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定(退職時改定)が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、合意分割による報酬の改定が行われた場合(注2)
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間及び当該被保険者の資格を最後に喪失した月以後における離婚時みなし被保険者期間
(注2)当該資格の取得から合意分割による報酬の改定までの間に、在職定時改定が行われた場合を除く(以下同じ)
「65歳からの老齢厚生年金」の支給繰上をした場合
⑤ 65歳未満の法附則7条の3第3項による老齢厚生年金(支給繰上による老齢厚生年金)の受給権者について、合意分割による報酬の改定が行われた場合
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間及び当該権利を取得した月以後における離婚時みなし被保険者期間
⑥ 65歳以上の法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、合意分割による報酬の改定が行われた場合
- 合意分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
(65歳以上の支給繰上ではなく、65歳以上の「支給繰上による老齢厚生年金の受給権者」です)
⑦ 65歳以上の被保険者である法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者について、合意分割による報酬の改定が行われた場合(⑧及び⑨の場合を除く)
- 65歳に達した日の属する月前における被保険者期間及び65歳に達した日の属する月以後における離婚時みなし被保険者期間
⑧ 65歳以上の被保険者である法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条2項による改定が行われた後、合意分割による報酬の改定が行われた場合(注1)
- 直近の在職定時改定に係る基準日(9月1日)の属する月前における被保険者期間
⑨ 65歳以上の被保険者である法附則7条の3第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、合意分割による報酬の改定が行われた場合(注2)
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間及び当該被保険者の資格を最後に喪失した月以後における離婚時みなし被保険者期間
特別支給の老齢厚生年金(以下、特老厚)の受給権者
⑩ 法附則8条による老齢厚生年金(特老厚)の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、合意分割による報酬の改定が行われた場合
- 合意分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
⑪ 被保険者である法附則8条による老齢厚生年金の受給権者について、合意分割による報酬の改定が行われた場合(⑫の場合を除く)
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間及び当該権利を取得した月以後における離婚時みなし被保険者期間
⑫ 被保険者である法附則8条による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、合意分割による報酬の改定が行われた場合
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間及び当該被保険者の資格を最後に喪失した月以後における離婚時みなし被保険者期間
特老厚の支給開始年齢より前に繰上請求をした場合
⑬ 法附則8条の2各項の表の下欄に掲げる年齢(特例支給開始年齢)未満の法附則13条の4第3項による老齢厚生年金(支給繰上の特例による老齢厚生年金)の受給権者について、合意分割による報酬の改定が行われた場合
- 当該受給権者がその権利を取得した月前における被保険者期間及び当該権利を取得した月以後における離婚時みなし被保険者期間
⑭ 特例支給開始年齢以上の法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者(被保険者である受給権者を除く)について、合意分割による報酬の改定が行われた場合
- 合意分割の請求があった日の属する月前における被保険者期間
⑮ 特例支給開始年齢以上 65歳未満の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、合意分割による報酬の改定が行われた場合(⑯の場合を除く)
- 特例支給開始年齢に達した日の属する月前における被保険者期間及び当該特例支給開始年齢に達した日の属する月以後における離婚時みなし被保険者期間
⑯ 特例支給開始年齢以上 65歳未満の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、合意分割による報酬の改定が行われた場合
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間及び当該被保険者の資格を最後に喪失した月以後における離婚時みなし被保険者期間
⑰ 65歳以上の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、合意分割による報酬の改定が行われた場合(⑱及び⑲の場合を除く)
- 65歳に達した日の属する月前における被保険者期間及び65歳に達した日の属する月以後における離婚時みなし被保険者期間
(65歳以上になっても特老厚を受給しているわけではなく、「支給繰上の特例による老齢厚生年金」の受給権者が「65歳以上の被保険者」という意味です)
⑱ 65歳以上の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条2項による改定が行われた後、合意分割による報酬の改定が行われた場合(注1)
- 直近の在職定時改定に係る基準日(9月1日)の属する月前における被保険者期間
⑲ 65歳以上の被保険者である法附則13条の4第3項による老齢厚生年金の受給権者について、法43条3項による改定が行われた後、更に被保険者の資格を取得し、かつ、合意分割による報酬の改定が行われた場合(注2)
- 退職時改定に係る被保険者の資格を最後に喪失した月前における被保険者期間及び当該被保険者の資格を最後に喪失した月以後における離婚時みなし被保険者期間
参考
下記の計算における、それぞれの「期間」は「離婚時みなし被保険者期間」を含みます(令3条の12の3)
- 65歳からの老齢厚生年金の計算(法43条1項)における「被保険者であった全期間」
- 在職定時改定の計算(法43条2項)における「被保険者であった期間」
- 退職時改定の計算(法43条3項)における「被保険者であった期間」
- 特老厚の報酬比例部分の計算(法43条1項、法附則9条の2第2項2号、同号の例により計算する規定)における「被保険者であった全期間」
- 支給繰上げ(法附則7条の3)による老齢厚生年金の受給権者が、65歳に達したときの年金額の改定の計算(法附則7条の3第5項)についての「被保険者であった期間」
- 支給繰上げの特例(法附則13条の4)による老齢厚生年金の受給権者が、特例支給開始年齢に達したときの年金額の改定の計算(法附則13条の4第5項)における「被保険者であった期間」
- 支給繰上げの特例(法附則13条の4)による老齢厚生年金の受給権者が、特例支給開始年齢に達した日以後の被保険者期間を有する場合における、65歳に達したときの年金額の改定の計算(法附則13条の4第6項)についての「被保険者であった期間」
なお、在職定時改定(法43条2項)の適用の有無は、下記になります(65歳以上の者を対象とする制度です)
- 法附則8条による老齢厚生年金(特老厚)には適用されません(法附則9条)
- 法附則7条の3第3項による老齢厚生年金(支給繰上による老齢厚生年金)については、65歳に達している者に限り適用されます(法附則15条の2)
- 法附則13条の4第3項による老齢厚生年金(支給繰上の特例による老齢厚生年金)についても、65歳に達している者に限り適用されます(法附則15条の2)
また、退職時改定(法43条3項)の適用の有無は、下記になります(本来の支給年齢に達した者を対象とする制度です)
- 法附則8条による老齢厚生年金(特老厚)に適用されます(除外する旨の規定がないため)
- 法附則7条の3第3項による老齢厚生年金(支給繰上による老齢厚生年金)については、65歳に達している者に限り適用されます(法附則15条の2)
- 法附則13条の4第3項による老齢厚生年金(支給繰上の特例による老齢厚生年金)については、特例支給開始年齢に達している者に限り適用されます(法附則15条の2)

- 障害厚生年金の受給権者について、障害厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間に係る標準報酬が合意分割により改定されたときは、改定後の標準報酬を基礎として障害厚生年金を計算します(法78条の10第2項)
- ①の年金額は、合意分割の請求のあった日の属する月の翌月から改定します(同項)
- ただし、被保険者期間の月数を300月とみなして計算されている障害厚生年金については、離婚時みなし被保険者期間をその計算に含めません(同項)
なお、対象期間に第3号被保険者期間を含む場合は、3号分割の請求みなし(3号分割に伴う年金額の改定)を考慮する必要があります。
解説は以上です。
離婚時の年金分割は学習範囲が広いため、厚生年金保険法の学習を一通り終えてから(テキストを一通り読み、過去問を解けるようになってから)復習してみてください。
(3号分割は別の記事で解説します)
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 厚生年金保険法
- 平成19年3月29日庁保険発0329008号(国民年金法等の一部を改正する法律等の施行に伴う離婚時の厚生年金の分割制度に関する実施事務の取扱いについて(通知))
