社労士試験の独学|健康保険法|資格喪失後の保険給付

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まえがき

この記事では、資格喪失後の保険給付について解説しています。

社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。

記事中の略語はそれぞれ次の意味で使用しています。

  • 法 ⇒ 健康保険法
  • 保険者 ⇒ 協会けんぽ及び各健康保険組合

当記事は条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。詳しくは免責事項をご確認ください。

概要

継続給付と喪失後の給

この記事の「被保険者」には、日雇特例被保険者は含まれません(法5条1項)

被保険者の資格を喪失した後の保険給付は、次の①~④に分けられます。

  • 傷病手当金の継続給付
  • 出産手当金の継続給付
  • 資格喪失後の出産育児一時金
  • 資格喪失後の死亡に関する給付

①②は、資格喪失前に受けていた保険給付(資格喪失前の保険事故についての保険給付)を、資格喪失後も継続して受ける保険給付です。

③④は、資格喪失後の出産又は死亡(資格喪失後の保険事故)について受ける保険給付です。

被保険者であった者が、任意継続被保険者、健康保険の被扶養者、国民健康保険の被保険者となった場合は、①〜④の保険給付の対象です。

(日雇特例被保険者となった場合は、就労のため①及び②は対象外です。なお、③又は④を受けられる場合は、法128条1項を根拠に日雇特例被保険者の保険給付より③又は④が優先されます)

なお、健康保険の被保険者の資格を喪失した理由は問われません。

(資格喪失の理由は、退職、適用除外、任意適用事業所の取消であっても、他の要件を満たす限り①~④の保険給付の対象です)

船保、共済

被保険者であった者が船員保険の被保険者となったときは、①~④の保険給付は行われません(法107条)

また、被保険者であって共済組合の組合員であるものに対しては、健康保険法による保険給付は行われません(法200条1項)

そのため、共済組合の組合員となった日以後も①〜④の保険給付は行われません(同旨 昭和34年12月3日保険発182号の2)

健康保険法における「被保険者」に関する条文については、下のタブに格納しておきます。

第三条

この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。

(各号については省略)

2 この法律において「日雇特例被保険者」とは、適用事業所に使用される日雇労働者をいう。(以下省略)。

第五条

全国健康保険協会は、健康保険組合の組合員でない被保険者(日雇特例被保険者を除く。次節、第五十一条の二、第六十三条第三項第二号、第百五十条第一項、第百七十二条第三号、第十章及び第十一章を除き、以下本則において同じ。)の保険を管掌する。

第百七条

前三条の規定にかかわらず、被保険者であった者が船員保険の被保険者となったときは、保険給付は、行わない。

第二百条

国に使用される被保険者、地方公共団体の事務所に使用される被保険者又は法人に使用される被保険者であって共済組合の組合員であるものに対しては、この法律による保険給付は、行わない。

附則第三条

6 特例退職被保険者は、この法律の規定(第三十八条第二号、第四号及び第五号を除く。)の適用については、任意継続被保険者とみなす。(以下省略)。


試験問題を解く際は、その都度「被保険者」の定義を確認してください。

以降、①~④を規定に沿って解説します。


傷病手当金の継続給付

継続給付(傷手)

傷病手当金の制度そのものは、こちらで解説しています。

加工前の条文はタブを切り替えると確認できます(以降の解説において同じ)

健康保険法104条

一年以上被保険者であった者であって、その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができます。

健康保険法

第百四条

被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。

附則第三条

5 第百四条の規定にかかわらず、特例退職被保険者には、傷病手当金は、支給しない。


傷病手当金の継続給付の対象者は、次のいずれも満たす者といえます。

  • 「一年以上被保険者であった者」に該当する
  • 資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている

一年以上被保険者であった者

一年以上被保険者であった者

一年以上被保険者であった者」とは、被保険者の資格を喪失した日(*1)の前日まで引き続き一年以上被保険者(*2)であった者をいいます。

(*1)任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日

(*2)次のいずれかの被保険者であった期間は除きます。

  • 任意継続被保険者
  • 特例退職被保険者(厳密には、明記せずとも附則3条6項により任継とみなされ除外されます)
  • 共済組合の組合員である被保険者
  • 日雇特例被保険者(厳密には、明記せずとも法5条1項により除外されます。なお、社労士試験では、特退は明記しても日雇は明記しない傾向にあるようです)

(特退、日雇が明記されていなくとも、それ以外の部分が正しければ、健康保険法を根拠とする記述としては、少なくとも「誤り」ではありません)

なお、被保険者であった期間は、「同一の保険者の被保険者であること」は要件でないため、例えば、協会管掌の会社から組合管掌の会社に転職した場合でも、1日も空白がなければ「引き続き」に該当します。

  • 一年以上被保険者であった者が、任意継続被保険者となった場合は、他の要件を満たす限り「傷病手当金の継続給付」を受けることができます。
  • 特例退職被保険者は、(一年以上被保険者であった者に該当しても)継続給付を含めて、傷病手当は支給されません(法附則3条5項)

「一年以上被保険者であった者」の定義は、以降の解説においても同じです。


資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている者

資格喪失の前日に給付を受けている

傷病手当金の支給を受けている」とは、次の①又は②の状態をいいます(昭和32年1月31日保発2号の2)

  • 現に傷病手当金を受けている
  • 傷病手当金の支給要件は満たしていても、報酬等との調整により傷病手当金が支給停止されている(現に給付を受けてはいないが、給付を受けうる状態にある)

②も「傷病手当金の支給を受けている」に含まれるため、退職により支給停止が解除された場合も継続給付の対象です。

なお、資格喪失日の前日に待機期間が完成するケース(退職の場合は、退職日に待機期間の3日目が完了するケース)は、①又は②の状態にあるとはいえないため、傷病手当金の継続給付を受けられません(同旨 前掲通達)

また、傷病手当金が支給されていても、資格喪失日の前日に「労務不能」に該当しない場合も、①又は②の状態にあるとはいえないため、傷病手当金の継続給付を受けられません(昭和31年2月29日保文発1590号)

このように「資格を喪失した際」とは、実質的には「資格喪失日の前日」を意味します。


継続して同一の保険者からその給付を受ける

継続して給付を受ける

一年以上被保険者であった者が、その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている前提で解説します。

  • 傷病手当金の継続給付を受けた後に一時的に「労務可能となった場合には、治癒している(傷病が治った)か否かを問わず、同一の疾病等により「再び労務不能」となっても傷病手当金の継続給付は行われません(令和3年12月27日事務連絡)
  • 資格喪失後に何らの手続をとらず相当期間を経過したため、傷病手当金の継続給付を受ける権利の一部が時効により消滅している場合は、法104条の「継続して」に該当しないため、時効未完成の期間についても、傷病手当金の継続給付を受けることはできません(昭和31年12月24日保文発11283号)

傷病手当金の継続給付は、被保険者として受けることができるはずであった期間、「継続して」同一の保険者からその給付を受けることができます。

つまり、給付が「継続しない」場合は継続給付を受けられません。


老齢退職年金給付との調整

傷病手当金|老齢退職年金給付との調整

継続給付としての傷病手当金は、老齢退職年金給付(老齢基礎年金、老齢厚生年金も含まれます)と調整されます。

なお、継続給付でない通常の傷病手当金(日雇特例被保険者の保険給付としての傷病手当金を含む)については、老齢退職年金給付との調整はありません。

傷病手当金についての調整は、こちらで解説しています。

傷病手当金の継続給付の解説は以上です。


出産手当金の継続給付

継続給付(出手)

つづいて、出産手当金の継続給付です。

出産手当金の制度そのものは、こちらをご参照ください。

健康保険法104条

一年以上被保険者であった者であって、その資格を喪失した際に出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができます。

健康保険法

第百四条

被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。


法104条は、傷病手当金の継続給付と共通です。

一年以上被保険者であった者が、任意継続被保険者となった場合は、他の要件を満たす限り「出産手当金の継続給付」を受けることができます。

(規定上は、特例退職被保険者についても出産手当金の継続給付の対象です。実際問題としては被用者年金給付を受けられる者の年齢を考慮してください。以下同じ)

出産手当金は、産前産後のうち「労務に服さなかった日」を対象に支給されます。

  • 「労務不能」かは問われないため、被保険者であった者が退職後に雇用保険の基本手当を受給中か否かは、出産手当金の継続給付とは関係ありません(同旨 昭和23年3月13日保文発1907号)
  • 資格喪失日の前日に出勤した場合は、資格を喪失した際に出産手当金を受けている(労務に服さなかった日)に該当しないため、出産手当金の継続給付は受けられません。
  • 出産手当金に「待機期間」は必要ないため、傷病手当金の継続給付と異なり「待機期間」は問題になりません。
  • 出産手当金については、老齢退職年金給付との調整はありません(出手も所得保障ですが、傷手と迷う場合は、老齢厚生年金を受けられる者が実際問題として出産できるかを考えてください)

その他の取扱い(一年以上被保険者であった者の定義など)は、傷病手当金の継続給付の解説をご参照ください。


資格喪失後の出産育児一時金

資格喪失後の出産育児一時金

ここからは、資格喪失後の出産育児一時金の解説です。

出産育児一時金の制度そのものは、こちらをご参照ください。

健康保険法106条

一年以上被保険者であった者が、被保険者の資格を喪失した日後6か月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を、最後の保険者から受けることができます。

健康保険法

第百六条

一年以上被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後六月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができる。


喪失後6か月以内に出産した

「資格喪失後の出産育児一時金」は、被保険者の資格を喪失した日後6か月以内に「出産した」が要件です。

そのため、上記の6か月以内に「出産予定日」があるだけでは支給要件を満たしません。

出産」については、理由を問わず妊娠4か月以上(85日以後)の分娩が対象です。

ちなみに、いつ妊娠したか(資格喪失前に妊娠したか)は問われません。

(6か月以内か3か月以内かで迷う場合は、妊娠4か月以上だから6か月と考えてみてください)


任意継続被保険者について

資格喪失後の出産育児一時金(任継)

(規定上は、特例退職被保険者についても同様です)

前述のとおり、「一年以上被保険者であった者」を判断する際の「被保険者であった期間」には、任意継続被保険者であった期間は含まれません。

一方、法106条における「被保険者」には、任意継続被保険者も含まれます。

  • 任意継続被保険者の資格を取得した日の前日まで継続して1年以上の被保険者期間がある者(一年以上被保険者であった者)が、任意継続被保険者の資格を喪失した日後6か月以内に出産したときも、「資格喪失後の出産育児一時金」の対象です。
  • 任意継続被保険者の期間中の出産については、「一年以上被保険者であった者」でなくとも、任継の保険給付として「出産育児一時金」が支給されます。

(傷病手当金、出産手当金と異なり、出産育児一時金は、資格喪失後の保険給付でなくとも、任意継続被保険者に対して行われる保険給付に含まれます)


保険給付が競合する場合

結論としては、同一の保険事故に対して二重に保険給付は受けられない(次の④⑤については、船保又は共済が優先)と整理してみてください。

「資格喪失後の出産育児一時金」は、次の①~⑥と競合します(③及び⑥は参考として記載しています)

  • 被扶養者に関する「家族出産育児一時金」
  • 国民健康保険の被保険者として受ける「出産育児一時金」
  • 参考|任意継続被保険者として受ける「出産育児一時金」
  • 船員保険の被保険者となったとき
  • 共済組合の組合員である被保険者となったとき
  • 参考|健康保険の被保険者(③及び⑤の被保険者を除く)として受ける「出産育児一時金」

①(一年以上被保険者であった者が、被扶養者となったケース)については、健康保険の被扶養者(給付を受ける者)の選択により、いずれか一方の保険給付が支給されます(同旨 昭和24年7月19日保文発1327号)

②については、国民健康保険の被保険者の選択により、いずれか一方の保険給付が支給されます(平成23年6月3日保保発0603第2号)

(実務については、各市区町村の条例、各国保組合の規約をご確認ください)

ちなみに、資格喪失後の出産育児一時金の支給は、あくまで保険給付の請求者からの意思表示に基づいて行われます(前掲通達)

③(一年以上被保険者であった者が、任意継続被保険者となったケース)及び⑥についても、二重に保険給付を受けることはできません。

なお、③又は⑥において実務上「資格喪失後の出産育児一時金」の選択が可能かは、保険者の取扱い(健保組合の規約)をご確認ください。

(協会けんぽの支給額はいずれにせよ同じになります。健保組合は、資格喪失後の給付に(支給しないケースが多いと推察しますが)付加給付があれば、それを考慮する必要があります)

④及び⑤については、先に解説したとおり健康保険法の保険給付は行われません(①②のように選択ではなく、船保又は共済から保険給付が行われます)

健康保険法106条の解釈等については、下のタブに格納しておきます。

健康保険法106条については、次のように解されています(平成23年6月3日保保発0603第2号)

  • 本条は、法制定当初、女性の被保険者で妊娠によって解雇された者の保護を目的として設けられた。
  • 現在も、国民健康保険では出産育児一時金の給付内容や方法が条例又は規約で定められていることを踏まえ、健康保険の被保険者が「出産について被保険者として受けることができるはずであった保険給付」を受けることができるよう、法律上、明示的に規定している。
  • したがって、1年以上被保険者であった者(以下、このタブ内において対象者)が、健康保険法106条の規定に基づく出産育児一時金の支給を受ける旨の意思表示をしたときは、健康保険の保険者が当該対象者に対して出産育児一時金の支給を行う。
  • また、健康保険の保険者は、この法律の規定の趣旨を踏まえ、被保険者がその意思に基づき、保険給付を受けることができるよう、付加給付がある場合にはその内容を含め、被保険者に対して十分に説明することが求められる。

国保条例参考例等の解釈については、次のように解されています(前掲通達)

  • 国保条例参考例等において規定されている「出産育児一時金の支給は、同一の出産につき、健康保険法(中略)の規定によって、これに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。」の意味は、対象者が健康保険法106条の出産育児一時金の支給を受ける旨の意思表示をして健康保険の保険者から出産育児一時金の支給を受ける場合には、「これに相当する給付を受けることができる場合」に該当し、国民健康保険の保険者からは出産育児一時金の支給を行わないものである。
  • したがって、対象者が、健康保険の保険者から出産育児一時金の支給を受ける旨の意思表示をしない場合には、当該対象者には健康保険の保険者からの出産育児一時金が支給されないため、「これに相当する給付を受けることができる場合」には該当しないことから、国民健康保険の保険者が当該対象者からの申請を受けて出産育児一時金の支給を行うものである。

参考|国保条例参考例等

国民健康保険条例参考例(抄)

(出産育児一時金)

第八条 略

2 前項の規定にかかわらず、出産育児一時金の支給は、同一の出産につき、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。第九条第二項において同じ。)又は地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)の規定によって、これに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。

国民健康保険組合規約例(抄)

(出産育児一時金)

第十一条 組合は、被保険者が出産したときは、当該被保険者の属する世帯の組合員に対し、出産育児一時金として〇円を支給する。

2 前項の規定にかかわらず、出産育児一時金の支給は、同一の出産につき、健康保険法、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)又は地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)の規定によって、これに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。


資格喪失後の死亡に関する給付

最後は、資格喪失後の死亡に関する給付(資格喪失後の埋葬料、埋葬費)です。

埋葬料、埋葬費の制度そのものは、こちらをご参照ください。

健康保険法105条

次の①~③のいずれかに該当するときは、被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものは、最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができます(法105条1項) 

資格喪失後の埋葬料の対象
  • 傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受ける者が死亡した
  • 傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受けていた者が、その給付を受けなくなった日後3か月以内に死亡した
  • ①②の他、被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後3か月以内に死亡した

埋葬料の支給を受けるべき者がいない場合は、埋葬を行った者が、埋葬費の支給を受けることができます(法105条2項)

健康保険法

第百五条

1 前条の規定により保険給付を受ける者が死亡したとき、同条の規定により保険給付を受けていた者がその給付を受けなくなった日後三月以内に死亡したとき、又はその他の被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後三月以内に死亡したときは、被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものは、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができる。

2 第百条の規定は、前項の規定により埋葬料の支給を受けるべき者がない場合及び同項の埋葬料の金額について準用する。


③の取扱いがあるため、資格喪失後の埋葬料(又は埋葬費。以降の解説において同じ)については、「一年以上被保険者であった者」は要件ではありません。

(①②に限ると、ここまでの解説のとおり「一年以上被保険者であった者」は要件になります)

なお、法105条の「被保険者」に「日雇特例被保険者」は含まれませんが、それ以外の被保険者は含まれます。

(任意継続被保険者の資格を喪失したときも同様です。規定上は、傷病手当金に係る取扱いを除き特例退職被保険者も同様です)


保険給付が競合する場合

「資格喪失後の埋葬料」は、次の①~⑥と競合します(③及び⑥は参考として記載しています)

  • 被扶養者の死亡についての「家族埋葬料」
  • 国民健康保険の被保険者の死亡についての「葬祭費」
  • 参考|任意継続被保険者の死亡についての「埋葬料」
  • 船員保険の被保険者となったとき
  • 共済組合の組合員である被保険者となったとき
  • 参考|健康保険の被保険者(③及び⑤の被保険者を除く)の死亡についての「埋葬料」

埋葬料についても、同一の保険事故に対して二重に保険給付は受けられません(④⑤については、船保又は共済が優先です)。

趣旨は「資格喪失後の出産育児一時金」と同様のため、解説は下のタブに格納しておきます。

①(被保険者であった者が被扶養者となり、当該被扶養者が死亡したケース)については、給付を受ける者の選択により、いずれか一方の保険給付が支給されます(同旨 昭和24年7月19日保文発1327号)

例えば、被保険者(夫)が、死亡した「被保険者であった者である被扶養者(妻)」により生計の一部を維持されていた場合でも、被保険者(夫)は「(妻に係る)資格喪失後の埋葬料」と「(夫に係る)家族埋葬料」を二重に受けることはできません。

(埋葬料における「生計維持」は、「主として生計維持(扶養の認定基準)」に限定されません)

②については、給付を受ける者の選択により、いずれか一方の保険給付が支給されます(国民健康保険条例参考例、解釈については平成23年6月3日保保発0603第2号を参考にしています)

(実務については、各市区町村の条例、各国保組合の規約をご確認ください)

③(被保険者であった者が任意継続被保険者となり、当該任意継続被保険者が死亡したケース)及び⑥についても、二重に保険給付を受けることはできません。

なお、③又は⑥において実務上「資格喪失後の埋葬料」の選択が可能かは、保険者の取扱い(健保組合の規約)をご確認ください。

(協会けんぽの支給額はいずれにせよ同じになります。健保組合は、資格喪失後の給付に(支給しないケースが多いと推察しますが)付加給付があれば、それを考慮する必要があります)

④⑤については、先に解説したとおり健康保険法の保険給付は行われません(①②のように選択ではなく、船保又は共済から保険給付が行われます)


まとめ

解説は以上です。

ここまでの内容を簡単に整理しておきます。

復習を兼ねて読んでみてください。

共通事項

  • 任意継続被保険者の保険給付には、傷病手当金、出産手当金は含まれません。ただし、継続給付としての傷病手当金、出産手当金は任意継続被保険者であっても制度の対象です。
  • 特例退職被保険者は、一部の規定(資格喪失の事由)を除き、健康保険法上は任意継続被保険者とみなされます。
  • ただし、特例退職被保険者は、継続給付としても傷病手当金は支給されません。
  • 同一の保険事故について、資格喪失後の保険給付と、他の保険給付とが競合する場合は、二重に受けることはできません。
  • なお、被保険者であった者が、船員保険の被保険者、共済組合の組合員である被保険者となった場合は、健康保険法の保険給付は行われません(船保又は共済が優先です)

傷病手当金又は出産手当金の継続給付

継続給付の対象者は、次のいずれも満たす者です。

  • 一年以上被保険者であった者」に該当する
  • 資格を喪失した際(資格喪失日の前日)に、傷病手当金又は出産手当金の支給を受けている

「支給を受けている」とは、現に受けている、又は受けられる状態(支給停止)をいいます。

次のいずれかの被保険者であった期間は、一年以上の被保険者期間に含まれません。

(一般被保険者の資格喪失日 = 任継の資格取得日です。つまり、それらの日の前日までで被保険者期間が一年以上あるかを判断します)

  • 任意継続被保険者
  • 特例退職被保険者
  • 共済組合の組合員である被保険者
  • 日雇特例被保険者

支給要件を満たした者は、被保険者として受けられるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができます。

(継続しなくなった時点で「継続給付」は終了です)

資格喪失後の出産育児一時金

資格喪失後の保険給付の対象者は、次のいずれも満たす者です。

  • 一年以上被保険者であった者」に該当する
  • 被保険者の資格を喪失した日後6か月以内に出産した

支給要件を満たした者は、被保険者として受けられるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができます(法106条)

資格喪失後の埋葬料(埋葬費)

資格喪失後の埋葬料の対象者は、「被保険者であった者」により生計を維持されていた、埋葬を行う者です。

資格喪失後の埋葬費の対象者は、資格喪失後の埋葬料の支給を受けるべき者がいない場合における、埋葬を行った者です。

次の①~③のいずれかに該当するときは、支給要件を満たした者は、被保険者であった者の最後の保険者から埋葬料(又は埋葬費)の支給を受けることができます

  • 傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受ける者が死亡した
  • 傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受けていた者が、その給付を受けなくなった日後3か月以内に死亡した
  • ①②の他、被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後3か月以内に死亡した

(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 健康保険法
  • 昭和34年12月3日保険発182号の2(資格喪失後の継続給付について)
  • 昭和32年1月31日保発2号の2(傷病手当金の支給について)
  • 令和3年12月27日事務連絡(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法及び船員保険法改正内容の一部に関するQ&Aの内容の追加等について)
  • 昭和31年12月24日保文発11283号(傷病手当金の時効と法第五十五条の適用について)
  • 昭和23年3月13日保文発1907号(失業保険受給者に対する出産手当金について)
  • 昭和24年7月19日保文発1327号(保険者であつた者が資格喪失後被扶養者となつた場合の保険給付の併給について)
  • 平成23年6月3日保保発0603第2号(健康保険法第106条の規定に基づく出産育児一時金の支給の取扱い等について)

厚生労働省ホームページ|社会保険審査|裁決例一覧|裁決年(令和2・3年)より|
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/syakai/r2_r3.html

  • 傷病手当金 事件番号 元健304
  • 傷病手当金 事件番号 3健110