社労士試験の独学|健康保険法|日雇特例被保険者(給付編)

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まえがき

この記事では日雇特例被保険者の給付編を解説しています。

記事中の略語はそれぞれ次の意味で使用しています。

  • 法 ⇒ 健康保険法
  • 令 ⇒ 健康保険法施行令
  • 則 ⇒ 健康保険法施行規則
  • 協会 ⇒ 全国健康保険協会(協会けんぽ)
  • 委託市町村 ⇒ 協会が日雇特例被保険者に係る事務を委託した市町村
  • 日雇手帳⇒ 日雇特例被保険者手帳
  • 保険医療機関等 ⇒ 法63条3項1号又は2号に掲げる病院、診療所、薬局

委託市町村、日雇手帳の解説は、適用編(こちら)をご覧ください。

当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。

詳しくは免責事項をご確認ください。

保険給付の種類

この記事では「被保険者」を次のように区分しています。

  • 適用事業所に使用される者(日雇労働者を除く)を「一般被保険者」と表記します。
  • 適用事業所に使用される日雇労働者を「日雇特例被保険者」と表記します。

また、以降の「被扶養者」は、「日雇特例被保険者の被扶養者」を意味します。

日雇特例被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下同じ)に対しては、下表の保険給付が定められています(法127条)

項目日雇特例被保険者被扶養者
療養の給付
入院時食事療養費
入院時生活療養費
保険外併用療養費
療養費
家族療養費
訪問看護療養費家族訪問看護療養費
移送費家族移送費
埋葬料(又は埋葬費)家族埋葬料
傷病手当金なし
出産手当金なし
出産育児一時金家族出産育児一時金
高額療養費
高額介護合算療養費
同左
特別療養費左の給付に含まれる
日雇特例被保険者への保険給付

次のポイントに着目して学習してみてください。

  • 保険給付(現物給付)を受けるためには、原則として受給資格者票が必要になる。
  • 受給資格者票は、一定枚数以上の健康保険印紙(以下、印紙)による納付が確認されたときに交付される。
  • 原則に対する例外として、特別療養費受給票による、⑨特別療養費という独自の給付がある。

受給資格者票

解説の都合により、次の保険給付を総称して「医療・看護に関する現物給付」と表記しています。

  • 療養の給付
  • 入院時食事療養費、入院時生活療養費
  • 保険外併用療養費
  • 訪問看護療養費
  • 家族療養費(療養費に相当する給付を除く)
  • 家族訪問看護療養費

日雇特例被保険者および被扶養者が医療・看護に関する現物給付を受けるためには、(原則として)受給資格者票が必要です。


納付要件

日雇手帳|印紙貼付ページ
日雇特例被保険者手帳(則様式15号)

以降、次の①又は②を「印紙による納付要件」と表記します。

  • 療養の給付を受ける日の属する月の前2か月間に通算して26日分以上の保険料が納付されている。
  • 療養の給付を受ける日の属する月の前6か月間に通算して78日分以上の保険料が納付されている。

余談になりますが、筆者は若かりし頃、先輩から2.26(事件)6.78(連続する数字)と教わりました。

  • 日雇手帳は、1ページと2ページが「1月」、3ページと4ページが「2月」のように続きます。
  • 印紙の枚数は、前2か月間又は前6か月間について、月を単位に「1月分何枚」「2月分何枚」のように数えます。

日雇特例被保険者が保険給付を受けるためには、基本的には、印紙による納付要件を満たす必要があります。


交付・確認

受給資格者票の交付・確認と療養の給付の概念図

受給資格者票は、次の①~③により、保険者(協会又は委託市町村)から交付されます(法129条3項、4項、則119条)

  • 日雇特例被保険者は、協会又は委託市町村に日雇手帳を提出して、印紙による納付要件を満たした旨を証明します(手帳を添えて②の確認を申請します)
  • 協会又は委託市町村は、①の証明(必要枚数を満たしていること)を確認したときは、受給資格者票に確認の表示をして日雇特例被保険者に交付します。
  • 日雇特例被保険者は、②で交付された受給資格者票保険医療機関等に提出して療養の給付を受けます。

受給資格者票は、日雇手帳とは別個の物(紙)として発行され、印紙による納付要件を満たした月ごとに②の「確認」が表示されます。

受給資格者票|表
受給資格者票(則様式16号)
受給資格者票|裏
受給資格者票(則様式16号)

(受給資格者票はマイナ保険証に対応していません)

病院等の窓口では、印紙を貼った日雇手帳そのものではなく、受給資格者票を提出するのがポイントです。

なお、次のいずれかに該当する場合には、協会又は委託市町村に対して、受給資格者票の訂正又は再交付の申請が必要です(則121条)

  • 氏名、性別又は住所等の変更や、被扶養者に異動があったとき(訂正の申請)
  • 受給資格者票を破り、汚し、又は失ったとき(再交付の申請)

(日雇手帳の訂正・再交付についても上記と同旨の規定があります)


返納

日雇特例被保険者は、次のいずれにも該当する場合には、速やかに、受給資格者票を協会又は委託市町村に返納しなければなりません(則122条1項)

  • 日雇手帳を(もう)所持していない。
  • 印紙による納付要件を満たしたことの「確認の表示」を将来の期間について受けていない。
  • 日雇特例被保険者および被扶養者が、医療・看護に関する現物給付又は特別療養費に係る療養を受けていない。

また、日雇特例被保険者が死亡したときは、被扶養者又は埋葬に要した費用に相当する金額の支給を受けるべき者は、埋葬料又は埋葬費の申請の際、受給資格者票を協会又は委託市町村に返納しなければなりません(則122条2項)

ざっくりいうと、日雇特例被保険者として療養を受ける予定が無くなった場合(死亡を含む)は、役目を終えた受給資格者票を発行元に返します。

(死亡に伴う返納は、後述の特別療養費受給票についても同様です)


特別療養費

つづいて、「特別療養費」及び「特別療養費受給票」を解説します。

(この記事の「特別療養費」は、国民健康保険の特別療養費とは異なる制度です)


概要

特別療養費の必要性の概念図

前述のとおり、日雇特例被保険者が療養の給付を受けるためには、「療養の給付を受ける日の属する月」の前2か月間又は前6か月において「印紙による納付要件」をクリアする必要があります。

つまり、日雇手帳の交付を受け、最短で「印紙による納付要件」をクリアしても、翌月が到来して「前月までの2か月間に26枚以上の印紙を納付した」が確定するまでは無保険の状態です。

ちなみに、日雇手帳に印紙を貼る余白があって、日雇特例被保険者として当該手帳を所持している(日雇に係る適用除外の承認を受けていない又は当該手帳を返納していない)間は、国保の側でも当該者を適用除外としています(国民健康保険法6条7号、13条3項)

この2か月間の無保険状態を避けるために設けられた制度が「特別療養費」です。

特別療養費を受けるためには、協会又は委託市町村から「特別療養費受給票」の交付を受け、その受給票を保険医療機関等に提出します。

(指定訪問看護を受ける場合は、指定訪問看護事業者に提出します)

印紙による納付要件を満たしていなくとも、保険診療を受けられるのがポイントです。


制度の対象者

次のケースのいずれかに該当する場合には、特別療養費の対象者です。

加工前の条文はタブを切り替えると確認できます。必要に応じてご利用ください。

健康保険法145条1項

新規に就労のケース

(人生で)初めて日雇手帳の交付を受けた者(法145条1項1号)

印紙による納付要件を満たした後の再就労のケース

次の①又は②に該当した後、初めて日雇手帳の交付を受けた者(法145条1項2号)

  • 印紙による納付要件を満たした月において日雇手帳に印紙を貼る余白がなくなった
  • 印紙による納付要件を満たした月の翌月中に日雇手帳を返納した

1年以上経過後の再就労のケース

次の①又は②の日から起算して1年以上を経過した後に、日雇手帳の交付を受けた者(法145条1項3号)

  • 前に交付を受けた日雇手帳に印紙を貼る余白がなくなった日
  • 日雇手帳を返納した日

なお、①において2回以上にわたり手帳の交付を受けた場合は、最後に交付された手帳を意味します。

健康保険法

第百四十五条

1 次の各号のいずれかに該当する日雇特例被保険者でその該当するに至った日の属する月の初日から起算して三月(月の初日に該当するに至った者については、二月。第五項において同じ。)を経過しないもの又はその被扶養者が、特別療養費受給票を第六十三条第三項第一号若しくは第二号に掲げる病院若しくは診療所若しくは薬局のうち自己の選定するものに提出して、そのものから療養を受けたとき、又は特別療養費受給票を指定訪問看護事業者のうち自己の選定するものに提出して、そのものから指定訪問看護を受けたときは、日雇特例被保険者に対し、その療養又は指定訪問看護に要した費用について、特別療養費を支給する。ただし、当該疾病又は負傷につき、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給又は介護保険法の規定による居宅介護サービス費の支給、特例居宅介護サービス費の支給、地域密着型介護サービス費の支給、特例地域密着型介護サービス費の支給、施設介護サービス費の支給、特例施設介護サービス費の支給、介護予防サービス費の支給若しくは特例介護予防サービス費の支給を受けることができるときは、この限りでない。

一 初めて日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者

二 一月間若しくは継続する二月間に通算して二十六日分以上又は継続する三月ないし六月間に通算して七十八日分以上の保険料が納付されるに至った月において日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙をはり付けるべき余白がなくなり、又はその月の翌月中に第百二十六条第三項の規定により日雇特例被保険者手帳を返納した後、初めて日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者

三 前に交付を受けた日雇特例被保険者手帳(前に二回以上にわたり日雇特例被保険者手帳の交付を受けたことがある場合においては、最後に交付を受けた日雇特例被保険者手帳)に健康保険印紙をはり付けるべき余白がなくなった日又は第百二十六条第三項の規定によりその日雇特例被保険者手帳を返納した日から起算して一年以上を経過した後に日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者


以降、上記三つのケースのいずれかに該当することを「初めて手帳を交付された者等」と表記します。


特別療養費受給票(交付・返納)

特別療養費受給票
特別療養費受給票(則様式17号)

特別療養費を受けるためには、「特別療養費受給票」が必要となり、この受給票には有効期間が設定されます。なお、特別療養費受給票は、受給資格者票とは別個の物(紙)として交付されます。

ちなみに、協会けんぽの事業年報(令和5年度)によると、令和5年度中の「特別療養費受給票」の交付数は417となっています。

交付

  • 日雇特例被保険者は、協会又は委託市町村に日雇手帳を提出して、特別療養費受給票の交付を申請します(則130条)
  • 保険者(協会又は委託市町村)は、初めて手帳を交付された者等からの①の申請に対して、特別療養費受給票を交付します(法145条5項、203条2項、令61条2項)
  • 特別療養費受給票の有効期間は、初めて手帳を交付された者等に該当する日(以下、手帳交付日)の属する月の初日から起算して3か月を経過する日までです(法145条1項)
  • ただし、手帳交付日が月の初日の場合は、③における「3か月」は「2か月」となります(法145条1項)
  • 記載事項の訂正・滅失等による再交付についても、協会又は委託市町村に対して申請します(則132条)

特別療養費受給票の有効期間は、手帳交付日によって異なります。例えば、③4月2日〜4月30日のケースは「手帳交付日から6月30日まで」、④4月1日のケースは「4月1日から5月31日まで」です。

最低でも2か月間は特別療養費を受けられるため、この期間に26枚以上の印紙を納付すれば「無保険状態」は回避できます。

なお、日雇手帳の交付そのものは、厚生労働大臣(事務は日本年金機構又は指定市町村長)が行います。

(手帳の交付を受けてから、①特別療養費受給票の交付を申請します)

返納

日雇特例被保険者は、次のいずれかに該当したときは、速やかに、特別療養費受給票を協会又は委託市町村に返納しなければなりません(則133条1項)

  • 特別療養費受給票の有効期間が経過した。
  • 受給資格者票の交付を受けた。

日雇特例被保険者が死亡したときに「特別療養費受給票」がある場合には、受給資格者票の返納についての規定(前述)が準用されています。

(印紙による納付要件を満たした時点で埋葬料の支給要件満たします。そのため、受給資格者票の交付を受ける前に亡くなった場合でも、埋葬料又は埋葬費が支給されます)


保険給付の支給

日雇|特別療養費

ここまで、初めて手帳を交付された者等に該当し、協会又は委託市町村から「特別療養費受給票」の交付を受ける場面までを解説しました。

ここからは、特別療養費として診療等を受ける場面の解説です。

健康保険法145条、146条

日雇特例被保険者又は被扶養者が、特別療養費受給票(有効期間内のものに限る。以下同じ)を保険医療機関等に提出して、療養を受けたときは、その療養に要した費用について、特別療養費が支給されます(法145条1項本文)

(指定訪問看護を受けるときは、指定訪問看護事業者に当該受給票を提出します)

支給されないケース

同一の傷病について、医療・看護に関する現物給付、療養費、家族療養費(現金給付)又は介護保険法による一定のサービス費を受けることができるときは、特別療養費は支給されません(法145条1項ただし書)

また、日雇特例被保険者が次の①又は②に該当したときは、①については「承認により日雇特例被保険者とならないこととなった日以後」、②については「返納日の翌日以後」、特別療養費は支給されません(法146条)

  • 日雇特例被保険者に係る適用除外(法3条2項ただし書)について、厚生労働大臣の承認を受けた
  • 日雇特例被保険者となる見込みがなくなったため、日雇手帳を返納した

健康保険法

第百四十五条

1 次の各号のいずれかに該当する日雇特例被保険者でその該当するに至った日の属する月の初日から起算して三月(月の初日に該当するに至った者については、二月。第五項において同じ。)を経過しないもの又はその被扶養者が、特別療養費受給票を第六十三条第三項第一号若しくは第二号に掲げる病院若しくは診療所若しくは薬局のうち自己の選定するものに提出して、そのものから療養を受けたとき、又は特別療養費受給票を指定訪問看護事業者のうち自己の選定するものに提出して、そのものから指定訪問看護を受けたときは、日雇特例被保険者に対し、その療養又は指定訪問看護に要した費用について、特別療養費を支給する。ただし、当該疾病又は負傷につき、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給又は介護保険法の規定による居宅介護サービス費の支給、特例居宅介護サービス費の支給、地域密着型介護サービス費の支給、特例地域密着型介護サービス費の支給、施設介護サービス費の支給、特例施設介護サービス費の支給、介護予防サービス費の支給若しくは特例介護予防サービス費の支給を受けることができるときは、この限りでない。

一(省略)

二(省略)

三(省略)

2 特別療養費の額は、第六十三条第三項第一号又は第二号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局から受けた療養については第一号に掲げる額(当該療養に食事療養が含まれるときは当該額及び第二号に掲げる額の合算額、当該療養に生活療養が含まれるときは当該額及び第三号に掲げる額の合算額)とし、指定訪問看護事業者から受けた指定訪問看護については第四号に掲げる額とする。

一 当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)につき算定された費用の額(その額が、現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)の百分の七十に相当する額

二 当該食事療養につき算定された費用の額(その額が、現に当該食事療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に食事療養に要した費用の額)から食事療養標準負担額を控除した額

三 当該生活療養につき算定された費用の額(その額が、現に当該生活療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に生活療養に要した費用の額)から生活療養標準負担額を控除した額

四 当該指定訪問看護につき算定された費用の額の百分の七十に相当する額

3 第一項の療養又は指定訪問看護を受ける者が六歳に達する日以後の最初の三月三十一日以前である場合における前項の規定の適用については、同項第一号及び第四号中「百分の七十」とあるのは、「百分の八十」とする。

4 第一項の療養又は指定訪問看護を受ける者(第百四十九条において準用する第七十四条第一項第三号に掲げる場合に該当する被保険者若しくはその被扶養者又は政令で定める被保険者の被扶養者を除く。)が七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合における第二項の規定の適用については、同項第一号及び第四号中「百分の七十」とあるのは、「百分の八十」とする。

5 特別療養費受給票は、第一項各号のいずれかに該当する日雇特例被保険者でその該当するに至った日の属する月の初日から起算して三月を経過していないものの申請により、保険者が交付する。

6 第百三十二条の規定は、特別療養費の支給について準用する。この場合において、同条第二項中「第百二十九条第三項に規定する確認」及び「その確認」とあるのは、「特別療養費受給票の交付」と読み替えるものとする。

7 第八十七条第二項及び第三項の規定は、前項において準用する第百三十二条第一項又は第二項の規定により支給する療養費の額の算定について準用する。

8 特別療養費受給票の様式及び交付その他特別療養費受給票に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。

第百四十六条

特別療養費の支給は、日雇特例被保険者が第三条第二項ただし書の承認を受けたときは、その承認により日雇特例被保険者とならないこととなった日以後、日雇特例被保険者が第百二十六条第三項の規定により日雇特例被保険者手帳を返納したときは、返納の日の翌日以後は、行わない。


介護保険法による一定のサービス費の内訳は、上記のタブを切り替えて条文ご確認ください。

(介護保険から療養に相当するサービスを受けられるならば、健保から二重の給付は行わない趣旨です)

特別療養費の支給額

特別療養費|支給額

特別療養費の額は、保険医療機関等から受けた療養については①の額(当該療養に食事療養が含まれるときは①及び②の合算額、当該療養に生活療養が含まれるときは①及び③の合算額)となります。また、指定訪問看護事業者から受けた指定訪問看護については④の額となります(法145条2項、3項、4項)

  • 療養(食事療養及び生活療養を除く)につき算定された費用の額(*1)の7割又は8割に相当する額
  • 食事療養につき算定された費用の額(*1)から、食事療養標準負担額を控除した額
  • 生活療養につき算定された費用の額(*1)から、生活療養標準負担額を控除した額
  • 当該指定訪問看護につき算定された費用の額の7割又は8割りに相当する額

(*1)その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額

①④における7割、8割の区分は下表に整理しておきます。

項目療養又は指定訪問看護を受ける者の区分支給割合
AB又はC以外7割
B6歳に達する日以後の最初の3月31日以前8割
C70歳に達する日の属する月の翌月以後8割

(日雇特例被保険者には標準報酬月額の概念がないため、他の規定は省略します)

現物給付

特別療養費は、協会が保険医療機関等又は指定訪問看護事業者に対して「保険給付の額」を支払うことにより、日雇特例被保険者(又は被扶養者)は、現物給付として受けられます(法149条にて準用する各規定)

なお、療養費の規定は、特別療養費の支給に準用されています(法145条6項及び7項、法207条、則128条)

特別療養費の解説は以上です。


各保険給付

ここからは、「特別療養費」以外の各保険給付を解説します。

一般被保険者の保険給付に適用される多くの規定(保険給付の方法、損害賠償請求権、受給権の保護、端数処理、領収証の交付など)は、日雇特例被保険者に係る保険給付に準用されています(法149条、則134条)

また、先に解説した特別療養費を除き、保険給付の仕組みそのものは一般被保険者と同じです。


療養の給付等

次の保険給付の支給を総称して「療養の給付等」といいます(法132条1項)

  • 療養の給付
  • 入院時食事療養費
  • 入院時生活療養費
  • 保険外併用療養費

「受給資格者票」については、前述の解説をご参照ください。

条文を大きく加工して解説するため、条文そのものも掲載しておきます(下記タブを参照)

健康保険法条129条ほか
療養の給付等(日雇)の支給要件

日雇特例被保険者が療養の給付を受けるためには、療養の給付を受ける日において①又は②に該当する必要があります(法129条2項)

  • 印紙による納付要件を満たしていること(前述の2.26又は6.78)
  • ①により受けた療養の給付についての疾病(その原因となった疾病又は負傷を含む。以下同じ)又は負傷について、療養の給付の開始日(*2)から1年(*3)を経過していないこと。
  • ただし、②に該当する場合においては、①により療養の給付を受けた疾病又は負傷以外の疾病又は負傷については、療養の給付を行わない。

(*2)療養の給付の開始日の前に当該疾病又は負傷につき特別療養費(療養費に相当する給付を含む)又は療養に相当する介護保険のサービス費が支給されたときは、これらの支給の開始日

(*3)厚生労働大臣が指定する疾病(結核性疾病)に関しては、5年(昭和59年9月28日厚生省告示158号)

受給資格者票の提出

日雇特例被保険者が療養の給付を受けようとするときは、保険医療機関等に受給資格者票(*4)を提出します(法129条4項、5項)

(*4)協会又は委託市町村から確認を受け、上記①又は②の受給要件が満たされていることが証明されるものをいう(以下同じ)

食事、生活、保険外併用

  • 療養の給付と併せて、食事療養又は生活療養を受けるときは、上記取扱い(法129条2項、4項、5項)と同じです(法130条、130条の2)
  • 評価療養患者申出療養又は選定療養を受けるときも、上記取扱い(法129条2項、4項、5項)と同じです(法131条)

負担割合

一部負担金、食事(生活)療養標準負担額、保険外併用療養費におけるこれらに相当する負担額(3割負担などの一般的にいう自己負担額の算定方法)は、一般被保険者の規定が準用されています(法149条)

健康保険法

第百二十九条

1 日雇特例被保険者の疾病又は負傷に関しては、第六十三条第一項各号に掲げる療養の給付を行う。

2 日雇特例被保険者が療養の給付を受けるには、これを受ける日において次の各号のいずれかに該当していなければならない。ただし、第二号に該当する場合においては、第一号に該当したことにより療養の給付を受けた疾病又は負傷及びこれにより発した疾病以外の疾病又は負傷については、療養の給付を行わない。

一 当該日の属する月の前二月間に通算して二十六日分以上又は当該日の属する月の前六月間に通算して七十八日分以上の保険料が、その日雇特例被保険者について、納付されていること。

二 前号に該当することにより当該疾病(その原因となった疾病又は負傷を含む。以下この項において同じ。)又は負傷につき受けた療養の給付の開始の日(その開始の日前に当該疾病又は負傷につき特別療養費(第百四十五条第六項において準用する第百三十二条の規定により支給される療養費を含む。以下この号において同じ。)の支給又は介護保険法の規定による居宅介護サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する指定居宅サービスに係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)、特例居宅介護サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する居宅サービス又はこれに相当するサービスに係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)、地域密着型介護サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する指定地域密着型サービスに係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)、特例地域密着型介護サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する地域密着型サービス又はこれに相当するサービスに係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)、施設介護サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する指定施設サービス等に係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)、特例施設介護サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する施設サービスに係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)、介護予防サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する指定介護予防サービスに係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)若しくは特例介護予防サービス費の支給(その支給のうち療養に相当する介護予防サービス又はこれに相当するサービスに係るものに限る。以下この号、第百三十五条第四項及び第百四十五条第一項において同じ。)が行われたときは、特別療養費の支給又は介護保険法の規定による居宅介護サービス費の支給、特例居宅介護サービス費の支給、地域密着型介護サービス費の支給、特例地域密着型介護サービス費の支給、施設介護サービス費の支給、特例施設介護サービス費の支給、介護予防サービス費の支給若しくは特例介護予防サービス費の支給の開始の日)から一年(厚生労働大臣が指定する疾病に関しては、五年)を経過していないこと(前号に該当する場合を除く。)。

3 保険者は、日雇特例被保険者が、前項第一号に該当することを、日雇特例被保険者手帳によって証明して申請したときは、これを確認したことを表示した受給資格者票を発行し、又は既に発行した受給資格者票にこれを確認したことを表示しなければならない。

4 日雇特例被保険者が第六十三条第一項各号に掲げる療養の給付を受けようとするときは、受給資格者票を同条第三項第一号又は第二号に掲げるもののうち自己の選定するものに提出して、そのものから受けるものとする。

5 前項の受給資格者票は、第三項の規定による確認を受けたものでなければならず、かつ、その確認によって、当該疾病又は負傷につき第二項に規定する受給要件が満たされていることが証明されるものでなければならない。

6 受給資格者票の様式、第三項の規定による確認その他受給資格者票に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。

第百三十条

1 日雇特例被保険者(療養病床への入院及びその療養に伴う世話その他の看護である療養を受ける際、六十五歳に達する日の属する月の翌月以後である者(次条第一項において「特定長期入院日雇特例被保険者」という。)を除く。)が第六十三条第三項第一号又は第二号に掲げる病院又は診療所のうち自己の選定するものに受給資格者票を提出して、そのものから同条第一項第五号に掲げる療養の給付と併せて受けた食事療養に要した費用について、入院時食事療養費を支給する。

2 前条第二項、第四項及び第五項の規定は、入院時食事療養費の支給について準用する。

第百三十条の二

1 特定長期入院日雇特例被保険者が第六十三条第三項第一号又は第二号に掲げる病院又は診療所のうち自己の選定するものに受給資格者票を提出して、そのものから同条第一項第五号に掲げる療養の給付と併せて受けた生活療養に要した費用について、入院時生活療養費を支給する。

2 第百二十九条第二項、第四項及び第五項の規定は、入院時生活療養費の支給について準用する。

第百三十一条

1 日雇特例被保険者が受給資格者票を提出して、第六十三条第三項第一号又は第二号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局のうち自己の選定するものから、評価療養、患者申出療養又は選定療養を受けたときは、その療養に要した費用について、保険外併用療養費を支給する。

2 第百二十九条第二項、第四項及び第五項の規定は、保険外併用療養費の支給について準用する。


(印紙による納付要件を満たしたならば、その旨の確認を受けている前提で解説します)

印紙による納付要件を満たして「疾病A」に対しての療養を受けた場合は、「疾病A」についての療養の給付等を最大で1年間(結核は5年間。以下同じ)受けられます(直前の②)

一方、「疾病A」に係る療養の給付等を受けた後に、「ケガB」について療養の給付等を受けようとするときは、「疾病A」に係る給付を受けてから1年を経過していなくとも、「ケガB」についての印紙による納付要件を満たす必要があります(直前の③)

なお、印紙による納付要件を満たしている月は、傷病の種類や1年間に限らず、療養の給付等を受けられます(直前の①)


療養費

保険者(協会を指します)は、次の①〜③のいずれかに該当するときは、「療養の給付等」に代えて、療養費を支給することができます(法132条)

  • 療養の給付等を行うことが困難であると保険者が認める。
  • 日雇特例被保険者が「保険医療機関等」以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給又は手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないと認める。
  • 日雇特例被保険者が、印紙による納付要件を満たした旨の確認を協会又は委託市町村から受けないで、保険医療機関等から診療又は薬剤の支給を受けた場合において、保険者が、その確認を受けなかったことを緊急やむを得ない理由によると認める。

①②は一般被保険者の療養費と同じです。

③は日雇特例被保険者に特有の取扱いです。

緊急やむを得ない場合には、受給資格者票に確認の表示を受ける時間的余裕がないケースもあるでしょう。

なお、特別療養費としての現金給付(療養費の規定を準用する給付)については、「特別療養費受給票の交付」に置き換えて③が適用されます(法145条6項)

支給の申請

療養費を申請するときは、申請書に日雇手帳(又は委託市町村から交付される受給要件を満たした旨の証明書)を添えます(則123条)

申請の際に添える日雇手帳等の取扱いは、埋葬料及び埋葬費を除き、以降の現金給付の申請において同じです。


訪問看護療養費

  • 受給資格者票は、指定訪問看護事業者に提出します(法133条)
  • 日雇特例被保険者が①により指定訪問看護を受けたときは、訪問看護療養費が支給されます(同条)

訪問看護療養費そのものの解説は、こちらをご参照ください。


移送費

日雇特例被保険者が療養の給付(保険外併用療養費に係る療養及び特別療養費に係る療養を含む)を受けるため、病院又は診療所に移送されたときは、移送費として、一般被保険者と同様(法97条1項)に算定した金額が支給されます(法134条)

「移送費の支給を必要と認める場合」や「移送費の額」については、一般被保険者の移送費の解説(こちら)をご参照ください。


埋葬料・埋葬費

日雇特例被保険者の埋葬料は、支給要件が3パターンあります。

日雇特例被保険者が死亡した場合に、次のいずれかに該当するときは、その者により生計を維持していた者で埋葬を行うものに対し、政令で定める金額(5万円)の埋葬料が支給されます(法136条1項)

  • 死亡日の属する月の「前2か月間に通算して26日分以上」又は「前6か月間に通算して78日分以上」の保険料が納付されているとき。
  • 死亡の際に、療養の給付、保険外併用療養費、療養費又は訪問看護療養費を受けていたとき。
  • ②における保険給付を受けなくなった日後3か月以内に死亡したとき。

(②の療養の給付には、傷病手当金の規定(法135条1項)により、療養に相当する介護保険のサービス費が含まれます)

埋葬料の支給を受けるべき者がない場合には、埋葬を行った者に対し、埋葬料の金額(5万円)の範囲内で、埋葬に要した費用に相当する金額(埋葬費)が支給されます(法136条2項)

埋葬料又は埋葬費は、日雇手帳を添えて申請します(則126条)

また、埋葬料又は埋葬費の申請の際には、日雇特例被保険者が所持していた受給資格者票も協会又は委託市町村に返納します(則122条2項)


傷病手当金

条文を大きく加工して解説するため、条文そのものも掲載しておきます(下記タブを参照)

健康保険法135条
日雇|傷病手当金

日雇特例被保険者については、傷病手当金の支給要件及び支給期間は、次のようになります(法135条1項、3項)

  • 日雇特例被保険者が療養の給付を受けている場合において、その療養のため労務に服することができないとき。
  • ①に該当するときは、労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。
  • 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷(及びこれにより発した疾病)に関しては、その支給を始めた日から起算して6か月(結核性疾病に関しては1年6か月)を超えないものとする。

③における支給期間は、一般被保険者のように通算しません

療養の範囲

①の「療養の給付」には、受給資格者票を有する者に対して行われる、次の保険給付が含まれます(以下、傷病手当金の解説において同じ)

  • 保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費
  • 療養に相当する介護保険のサービス費

また、①における「その療養」には、療養に相当する介護保険のサービスも含まれます。

傷病手当金の額

日雇|傷病手当金の額の算定

傷病手当金の額は、初めて療養の給付を受けた日の属する月を基準に、次の①又は②に応じて算定します(法135条2項)

  • 前2か月間に通算して26日分以上の保険料が納付されている
  • 前6か月間に通算して78日分以上の保険料が納付されている

傷病手当金の額は、①又は②の期間に応じて、一日につき、それぞれ次の金額(①②いずれにも該当するときは、いずれか高い額)となります。

  • ①の期間に係る標準賃金日額の各月ごとの合算額のうち、最大のものの45分の1に相当する金額
  • ②の期間に係る標準賃金日額の各月ごとの合算額のうち、最大のものの45分の1に相当する金額

例えば、3月に11枚、4月に15枚の合計26枚の印紙による納付があったときは、3月に納付した11枚の印紙の合計額と4月に納付した15枚の合計額とを比較し、大きいほうを「月額」とします。

そして、「月額」× \(\frac{1}{30}\) × \(\frac{2}{3}\)を計算し、1日あたりの傷病手当金の額を算出します。

 給付水準は一般被保険者の傷病手当金の日額(標準報酬月額 × \(\frac{1}{30}\) × \(\frac{2}{3}\) )と同じです。

健康保険法

第百三十五条

1 日雇特例被保険者が療養の給付(保険外併用療養費、療養費及び訪問看護療養費の支給並びに介護保険法の規定による居宅介護サービス費、特例居宅介護サービス費、地域密着型介護サービス費、特例地域密着型介護サービス費、施設介護サービス費、特例施設介護サービス費、介護予防サービス費及び特例介護予防サービス費の支給(これらの支給のうち療養に相当する居宅サービス若しくはこれに相当するサービス、地域密着型サービス若しくはこれに相当するサービス、施設サービス又は介護予防サービス若しくはこれに相当するサービスに係るものに限る。)であって、第百二十九条第三項の受給資格者票(同条第五項の規定に該当するものに限る。)を有する者に対して行われるものを含む。次項及び次条において同じ。)を受けている場合において、その療養(居宅サービス及びこれに相当するサービス並びに施設サービス並びに介護予防サービス及びこれに相当するサービスのうち、療養に相当するものを含む。)のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

2 傷病手当金の額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、一日につき、当該各号に定める金額とする。ただし、次の各号のいずれにも該当するときは、いずれか高い金額とする。

一 当該日雇特例被保険者について、その者が初めて当該療養の給付を受けた日の属する月の前二月間に通算して二十六日分以上の保険料が納付されている場合 当該期間において保険料が納付された日に係るその者の標準賃金日額の各月ごとの合算額のうち最大のものの四十五分の一に相当する金額

二 当該日雇特例被保険者について、その者が初めて当該療養の給付を受けた日の属する月の前六月間に通算して七十八日分以上の保険料が納付されている場合 当該期間において保険料が納付された日に係るその者の標準賃金日額の各月ごとの合算額のうち最大のものの四十五分の一に相当する金額

3 日雇特例被保険者に係る傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して六月(厚生労働大臣が指定する疾病に関しては、一年六月)を超えないものとする。

4 日雇特例被保険者が、その疾病又は負傷について、第百二十八条の規定により療養の給付若しくは保険外併用療養費、療養費若しくは訪問看護療養費の支給の全部を受けることができない場合又は介護保険法第二十条の規定により同法の規定による居宅介護サービス費の支給、特例居宅介護サービス費の支給、地域密着型介護サービス費の支給、特例地域密着型介護サービス費の支給、施設介護サービス費の支給、特例施設介護サービス費の支給、介護予防サービス費の支給若しくは特例介護予防サービス費の支給(これらの給付のうち第百二十九条第三項の受給資格者票(同条第五項の規定に該当するものに限る。)を有する者に対して行われるものに限る。以下この項において同じ。)の全部を受けることができない場合においては、療養の給付若しくは保険外併用療養費、療養費若しくは訪問看護療養費の支給又は介護保険法の規定による居宅介護サービス費の支給、特例居宅介護サービス費の支給、地域密着型介護サービス費の支給、特例地域密着型介護サービス費の支給、施設介護サービス費の支給、特例施設介護サービス費の支給、介護予防サービス費の支給若しくは特例介護予防サービス費の支給に相当する当該給付又は当該療養若しくは療養費の支給をこの章の規定による療養の給付若しくは保険外併用療養費、療養費若しくは訪問看護療養費の支給又は介護保険法の規定による居宅介護サービス費の支給、特例居宅介護サービス費の支給、地域密着型介護サービス費の支給、特例地域密着型介護サービス費の支給、施設介護サービス費の支給、特例施設介護サービス費の支給、介護予防サービス費の支給若しくは特例介護予防サービス費の支給とみなして、第一項及び第二項の規定を適用する。


「継続3日の待機期間」は一般被保険者と同じです。

ただし、日雇特例被保険者については、「療養のため、労務に服せない」では足りず、「療養の給付を受けている場合に、その療養のため、労務に服せない」が必要です。

なお、「療養の給付を受けている」とは、労務不能となった際にその原因となった傷病について療養の給付を受けていることで足ります(平成15年2月25日保発0225001号)

労務不能期間を通して、当該傷病についての「療養の給付」を毎日受けること(毎日通院すること)までは、求められていません(同旨 前掲通達)

その他、傷病手当金に関係する論点として、次の取扱いがあります。

雇用保険法の給付を受けることができる期間

日雇特例被保険者が、雇用保険法の給付を受けることができる期間について、傷病手当金の申請をするときの取扱いです。

上記の傷病手当金の申請については、失業の認定を受けていないことを明らかにします。また、その者が(雇用保険の)日雇労働被保険者のときは、雇用保険印紙の納付はされていないと証明できる日雇労働被保険者手帳(雇用保険の日雇手帳)その他の文書を添える必要があります(則125条)

日雇労働求職者給付金(雇用保険)と傷病手当金(健康保険)の二重取りはできません。

他制度との調整により療養の給付が支給されない場合

他の医療保険による給付等との調整(法128条)や介護保険法における調整(介護保険法20条)により、療養の給付の全部を受けることができない場合があります。

上記の場合、他の制度から支給されている給付を「療養の給付」とみなして傷病手当金の規定を適用します(法135条4項)

「療養の給付」に相当する給付を含めて、「療養」の給付を受けているかを判定します。

資料提供の求め

協会は、日雇特例被保険者に係る傷病手当金の支給のために必要があると認めるときは、労働者災害補償保険法等により給付を行う者に対し、当該給付の支給状況につき、必要な資料の提供を求めることができます(法128条2項)

同一の傷病について労災保険の給付を受けられる場合は、傷病手当金の支給はありません(法128条1項)


出産育児一時金、出産手当金

日雇|出産に関する給付

日雇特例被保険者(本人)の出産については、印紙が「出産日の前4か月」に26日以上あるかで給付の可否を判定します。

(被扶養者の出産については、原則通り、2.26又は6.78で判定します)

出産育児一時金

  • 日雇特例被保険者が出産した場合において、出産日の属する月の前4か月間に通算して26日分以上の保険料が納付されているときは、出産育児一時金として、政令で定める金額(48万8千円)を支給する(法137条)
  • 制度対象分娩であると保険者が認めるときは、3万円を超えない範囲内で保険者が定める金額(1万2千円)を①に加算する(令36条)

出産手当金

  • 出産育児一時金の支給を受けることができる日雇特例被保険者には、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前42日(多胎妊娠の場合においては、98日)から出産の日後56日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する(法138条1項)
  • 出産手当金の額は、一日につき、出産の日の属する月の前4か月間の保険料が納付された日に係る標準賃金日額の各月ごとの合算額のうち最大のものの45分の1に相当する金額とする(法138条2項)

最大の月額 × \(\frac{1}{30}\) × \(\frac{2}{3}\)は傷病手当金と同じです。ただし、出産手当は「前4か月間」にて最大の月を判定します。

なお、日雇特例被保険者に対する出産手当金と傷病手当金が競合する場合は、傷病手当金の額が出産手当金の額を超えるときのその差額を除き、傷病手当金は支給されません(法139条)

(一般被保険者と同様に出産手当金が優先です)


被扶養者に関する保険給付

一般被保険者と同様に、被扶養者に関する保険給付は日雇特例被保険者に支給されます。

被扶養者に係る療養費(現金給付としての家族療養費)、家族移送費、家族埋葬料、家族出産育児一時金の申請方法(手帳等の添付)については、療養費の規定が準用されています(則128条、129条)

家族療養費(法140条)

  • 被扶養者が受給資格者票を保険医療機関等に提出して、療養を受けたときは、日雇特例被保険者に対し、家族療養費を支給する。
  • 療養の給付の受給要件(法129条2項)、受給資格者票の取扱い(同条5項)、療養費(法132条)の規定は、家族療養費に準用する。
  • 療養費の算定方法を定めた規定(法87条2項、3項)は、②において準用する療養費(現金給付としての家族療養費)の算定に準用する。

家族訪問看護療養費(法141条)

  • 被扶養者が指定訪問看護事業者に受給資格者票を提出して、指定訪問看護を受けたときは、日雇特例被保険者に対し、家族訪問看護療養費を支給する。
  • 療養の給付の受給要件(法129条2項)、受給資格者票の取扱い(同条5項)の規定は、家族訪問看護療養費に準用する。

家族移送費(法142条)

被扶養者が家族療養費に係る療養(特別療養費に係る療養を含む)を受けるため、病院又は診療所に移送されたときは、日雇特例被保険者に対し、家族移送費を支給する。

家族埋葬料(法143条)

  • 被扶養者が死亡したときは、日雇特例被保険者に対し、家族埋葬料を支給する。
  • ①の支給を受けるには、被扶養者の死亡日の属する月の前2か月間又は前6か月間について、印紙による納付要件を満たしている必要がある。
  • 家族埋葬料の額は、政令で定める金額(5万円)とする。

家族出産育児一時金(法144条)

  • 被扶養者が出産したときは、日雇特例被保険者に対し、家族出産育児一時金を支給する。
  • ①の支給を受けるには、被扶養者の出産日の属する月の「前2か月間」又は「前6か月間」について、印紙による納付要件を満たしている必要がある。
  • 家族出産育児一時金の額は、政令で定める金額(制度対象分娩を含め、出産育児一時金と同じ)とする。

被扶養者の出産については「前4か月間」で印紙の枚数を判定する取扱いはありません。


高額療養費、高額介護合算療養費

日雇特例被保険者に特有の論点としては、次の①②があります。

  • 特別療養費が支給された療養(食事療養及び生活療養を除く)に係る一部負担金等の額は、高額療養費及び高額介護合算療養費の計算対象に含まれます(法147条、147条の2)
  • 高額療養費算定基準は、市町村民税非課税者等の区分は適用されますが、標準報酬月額による区分は除いて準用されます(令44条1項)。介護合算算定基準額についても同様です(令44条5項)

まとめ

解説は以上です。

受給資格者票、特別療養費のほかにも一般被保険者との相違点は多少あります。

ただし、試験で出題されているのは基本的な論点です。

試験対策としては過去問を中心に復習してみてください。

(受給資格者票、特別療養費を除いても分からなかった…という方は、無理せずに一般被保険者の保険給付から進めてください)


(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 健康保険法
  • 昭和59年9月28日厚生省告示158号(健康保険法第百二十九条第二項第二号及び第百三十五条第三項の規定に基づく厚生労働大臣の指定する疾病)
  • 平成15年2月25日保発0225001号(健康保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行について〔健康保険法〕)
  • 昭和33年5月28日保発35号(日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律の施行について)