この記事では、健康保険法における被保険者等記号・番号等についての制限を解説しています。
記事中の略語は、それぞれ次の意味で使用しています。
- 法 ⇒ 健康保険法
- 則 ⇒ 健康保険法施行規則
- 協会 ⇒ 全国健康保険協会
- 機構 ⇒ 日本年金機構
- 病院等 ⇒ 病院若しくは診療所又は薬局
- 保険医療機関等 ⇒ 法63条3項各号に掲げる病院等(保険医療機関、保険薬局、健康保険組合を設立した事業主が開設する病院等、健康保険組合が開設する病院等の総称)
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
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概要
契約に際して、被保険者等記号・番号等が記載された物(例えば、資格確認書)を用いて本人確認をする場合があります。
この記事では、上記の場合において、その物をコピーしたり、写しを郵送で受けたり、写真のデータを受信するときは、被保険者等記号・番号等の部分(読み込むと当該番号等の分かる二次元コードを含む)にマスキングを必要とする根拠を解説します。
参考|厚生労働省(外部サイトへのリンク)|医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について

- 保険者番号とは、厚生労働大臣が健康保険事業において保険者を識別するための番号として、保険者ごとに定めるものをいいます(法3条11項)
- 被保険者等記号・番号とは、保険者が被保険者又は被扶養者の資格を管理するための記号、番号その他の符号として、被保険者又は被扶養者ごとに定めるものをいいます(法3条12項)
- 被保険者等記号・番号等とは、①保険者番号および②被保険者等記号・番号をいいます(法194条の2第1項)
①の保険者番号は、健康保険では保険者ごとに8桁の番号が定められています。
②の被保険者等記号・番号は、「記号」は健康保険資格の記号を意味します。「番号」は健康保険資格の番号を意味します。また、被保険者又は被扶養者ごとの符号(番号)として枝番があります。
(資格確認書の交付を受けている場合は、それに記載されています。マイナ保険証を利用している場合は、マイナポータルで確認できます)

- 保険者番号は、保険者(場合によってはそれ以上)を特定できる番号です。
- 被保険者等記号・番号は、被保険者又は被扶養者の資格を特定(確認)できる符号となります。
プライバシー保護の観点から、被保険者等記号・番号等(①及び②)を業として扱う場合には、次の二つの制限が設けられています。
- 告知要求の制限
「被保険者等記号・番号等」の告知要求(告げるよう相手に要求すること)は禁止されています。なお、法令で定めた者が健康保険事業又はこれに関連する事務を行う場合に限り、禁止されません。 - 提供データベースの構成の制限
他者への情報提供を予定して、被保険者等記号・番号等の記録されたデータベース(*1)を作成することは禁止されています。なお、法令で定めた者が健康保険事業又はこれに関連する事務を行う場合に限り、禁止されません。
(*1)複数の「被保険者等記号・番号等」を含む情報の集合物であって、それらの情報を検索できるように体系的に構成したものをいいます。
被保険者等記号・番号等についての制限

加工前の条文はタブを切り替えると確認できます。
告知要求の制限
- 厚生労働大臣等は、健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない(法194条の2第1項)
- 厚生労働大臣等以外の者は、健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため被保険者等記号・番号等の利用が特に必要な場合として厚生労働省令で定める場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない(法194条の2第2項)
- 何人も、①又は②において認められる場合を除き、その者が業として行う行為に関し、その者に対し売買、貸借、雇用その他の契約(以下「契約」という)の申込みをしようとする者若しくは申込みをする者又はその者と契約の締結をした者に対し、当該者又は当該者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない(法194条の2第3項)
③が読みにくい場合は、「その者」を事業者と、「当該者」を申込者と、「当該者以外の者」を申込者の家族と 置き換えてみてください。
提供データベースの構成の制限
何人も、次に掲げる場合を除き、業として、被保険者等記号・番号等の記録されたデータベースであって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているもの(提供データベース)を構成してはならない(法194条の2第4項)
- 厚生労働大臣等が、①に規定する場合に、提供データベースを構成するとき。
- 厚生労働大臣等以外の者が、②に規定する厚生労働省令で定める場合に、提供データベースを構成するとき。
健康保険法
第百九十四条の二(被保険者等記号・番号等の利用制限等)
1 厚生労働大臣、保険者、保険医療機関等、指定訪問看護事業者その他の健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため保険者番号及び被保険者等記号・番号(以下この条において「被保険者等記号・番号等」という。)を利用する者として厚生労働省令で定める者(以下この条において「厚生労働大臣等」という。)は、当該事業又は事務の遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。
2 厚生労働大臣等以外の者は、健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため被保険者等記号・番号等の利用が特に必要な場合として厚生労働省令で定める場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。
3 何人も、次に掲げる場合を除き、その者が業として行う行為に関し、その者に対し売買、貸借、雇用その他の契約(以下この項において「契約」という。)の申込みをしようとする者若しくは申込みをする者又はその者と契約の締結をした者に対し、当該者又は当該者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。
一 厚生労働大臣等が、第一項に規定する場合に、被保険者等記号・番号等を告知することを求めるとき。
二 厚生労働大臣等以外の者が、前項に規定する厚生労働省令で定める場合に、被保険者等記号・番号等を告知することを求めるとき。
4 何人も、次に掲げる場合を除き、業として、被保険者等記号・番号等の記録されたデータベース(その者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を含む情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているもの(以下この項において「提供データベース」という。)を構成してはならない。
一 厚生労働大臣等が、第一項に規定する場合に、提供データベースを構成するとき。
二 厚生労働大臣等以外の者が、第二項に規定する厚生労働省令で定める場合に、提供データベースを構成するとき。
以降、家庭内や個人的な行為でなく、業として行われる行為(個人が業として行うもの含む)を前提に解説します。
なお、一般事業者における顧客の本人確認等のために健康保険の資格確認書の提示を求めることは可能です。ただし、その際には、告知要求の制限に抵触しないよう、被保険者等記号・番号等を分からないようにする(記号・番号等を書き写さない、物の写しはマスキングする、記号・番号等の告知を求めているかのような説明はしない)必要があります(同旨 令和2年10月5日保保発1005第1号)
(本人確認のため、「物を確認させてください」は構いませんが、「記号・番号等を確認させてください」はアウトです)
厚生労働大臣等
「厚生労働大臣等」とは、厚生労働大臣、保険者(協会及び健康保険組合)、保険医療機関等、指定訪問看護事業者その他の健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため「被保険者等記号・番号等」を利用する者として厚生労働省令で定める者をいいます(法194条の2第1項)
なお、厚生労働省令で定める者には、上記に規定する者のほか、適用事業所の事業主、機構、社会保険診療報酬支払基金、都道府県知事、市町村長などが含まれます(則156条の2第1項)
具体的には、下のタブに格納しておきます。必要に応じて開閉してください。
法194条の2第1項の厚生労働省令で定める者は、次の①~⑰とする(則156条の2第1項)
- 厚生労働大臣
- 財務大臣
- 地方厚生局長等
- 協会
- 健康保険組合
- 適用事業所の事業主
- 健康保険組合連合会
- 社会保険診療報酬支払基金
- 国民健康保険法45条5項に規定する国民健康保険団体連合会
- 国民健康保険法45条6項に規定する厚生労働大臣が指定する法人
- 保険医療機関等
- 保険薬局等
- 法87条1項(療養費)に規定する診療、薬剤の支給又は手当を行う保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者
- 指定訪問看護事業者
- 都道府県知事
- 市町村長
- 機構
③は、地方厚生局長又は地方厚生支局長です。
⑩は、公益社団法人国民健康保険中央会(国保中央会)です(国民健康保険法第四十五条第六項に規定する厚生労働大臣が指定する法人を指定する省令)
⑪の保険医療機関等は、法63条3項各号に掲げる病院又は診療所です。
⑫の保険薬局等は、法63条3項各号に掲げる薬局です。
⑯は、特別区の区長を含み、指定都市にあっては、区長又は総合区長となります。

「厚生労働大臣等」であっても、被保険者等記号・番号等の告知を求めたり、提供データベースを構成できるのは、健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため必要がある場合に限定されます。
健康保険法に明示されている事業・事務(保険給付や各種の届出など)のほか、次の事務も健康保険事業に関連する事務に含まれます(令和2年10月5日保保発1005第1号)
- 保険医療機関等(保険薬局等を含む)、保険医療機関等以外の病院等、薬局その他の者、指定訪問看護事業者については、これら者の間で構築される医療情報連携ネットワークの整備及びこれに関連する事務
- 都道府県知事又は市町村長については、がん登録推進法又は介護保険法に基づく事務や、公費負担医療、地方単独の医療費助成事業その他の医療費助成事業による医療費の支給に関する事務

以降、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律を「次世代医療基盤法」と表記しています。
厚生労働大臣等以外の者が、被保険者等記号・番号等の告知を要求したり、提供データベースを構成できるのは、次の①~⑮の場合に限られます(法194条の2第2項、則156条の2第2項)
- 各保険者(協会及び健康保険組合を除く)又は後期高齢者医療広域連合が、医療保険各法(健康保険法を除く)若しくは高齢者医療確保法に基づく事業又は当該事業に関連する事務を行う場合
- 保険者から委託を受けた者が、当該委託を受けた健康保険事業に関連する事務を行う場合
- 被保険者の同意を得た者又は被保険者から委託を受けた者が、それぞれ当該同意を得た又は当該委託を受けた保険者(当該保険者から委託を受けた者を含む)に対する保険給付に係る請求その他の行為を行う場合
- 国立研究開発法人国立がん研究センターが、がん登録推進法23条1項(厚生労働大臣の権限及び事務の委任)により厚生労働大臣から委任を受けた事務を行う場合
- がん登録推進法24条1項(都道府県知事の権限及び事務の委任)により都道府県知事から事務の委任を受けた者が、当該事務を行う場合
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構が、医薬品等の品質、有効性及び安全性に関する情報収集等の業務若しくはこれに附帯する業務(同総合機構法15条1項5号ハ、ハに係るへ)又は予防接種に関する調査等の業務を行う場合(同項6号)
- 認定匿名加工医療情報作成事業者(次世代医療基盤法10条1項)又は認定仮名加工医療情報作成事業者(同法34条1項)が、それぞれ匿名加工医療情報作成事業又は仮名加工医療情報作成事業を行う場合
- 医療情報取扱事業者(次世代医療基盤法2条5項)が、同法52条1項各号又は57条1項各号に掲げる事項について通知を受けた本人に係る医療情報を取得する場合
- 国の行政機関(厚生労働大臣、財務大臣、地方厚生局長等を除く)が、適正な保健医療サービスの提供に資する施策の企画及び立案に関する調査を行う場合
- 大学、研究機関その他の学術研究を目的とする機関又は団体が、疾病の原因並びに疾病の予防、診断及び治療の方法に関する研究その他の公衆衛生の向上及び増進に関する研究を行う場合
- 民間事業者等のうち則155条の5第1号から第4号までのいずれにも該当しないものが、医療分野の研究開発に資する分析(特定の商品又は役務の広告又は宣伝に利用するために行うものを除く)を行う場合
- 高齢者医療確保法20条の特定健康診査、同法24条の特定保健指導、労働安全衛生法66条1項の健康診断その他の健康診断を実施する機関が、当該健康診断を実施する場合
- 社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む)が、社会保険労務士法2条1項各号に掲げる業務を行う場合
- 独立行政法人環境再生保全機構が、石綿救済法11条の規定により医療費を支給する場合
- 厚生労働大臣から法77条2項の調査(療養の給付に要する費用の額の調査)に係る事務の全部又は一部の委託を受けた者が、当該事務を行う場合
①は、例えば、国保の保険者が、国民健康保険法に基づく事業を行う場合が該当します。医療保険各法の範囲は下記のタブをご参照ください。
⑥における「予防接種に関する調査等の業務」については、令和8年6月1日施行です。
⑦⑧における各用語の解説は膨大になるため省略します。
⑪における則155条の5第1号から第4号までのいずれにも該当しないものとは、健康保険法等の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられその執行を終わり5年を経過しない者等に該当しないものをいいます(詳細は省略します)
また、⑪の民間事業者等とは、民間事業者のほか、地方公共団体が支出する補助金等を充てて医療分野の研究開発に資する分析の業務(一定の要件あり)を行う個人も該当します(則155条の5第1項)
「医療保険各法」とは、次に掲げる法律をいう(則109条の10第4項3号)
- 健康保険法
- 船員保険法
- 国民健康保険法
- 国家公務員共済組合法
- 地方公務員等共済組合法
- 私立学校教職員共済法
同意又は委託を受けた場合における保険給付に係る行為
直前の③(被保険者の同意又は委託を受けた場合における保険給付に係る行為)としては、下記の例が示されています(令和2年10月5日保保発1005第1号)。なお、被保険者証を資格確認書に置き換えて記載しています。
- 労災認定された傷病等に対して療養の給付等がされていた場合に、労災給付の支払及び医療保険給付との調整のため、労働基準監督署が、被災労働者の同意を得て、保険者からレセプト等を入手する場合
- 交通事故等による負傷について、民間保険会社が健康保険組合連合会等との覚書等に基づき、被保険者の同意を得て、第三者行為による傷病届の作成の支援及び保険者に対する当該傷病届の送付を行う場合
- 被保険者等が介護サービス施設に入所する際、介護サービス施設が、当該被保険者等の同意を得て、緊急の受診時に備えて資格確認書の写しを取得する場合
- 児童が児童養護施設等に入所する際又は里親に委託される際、児童養護施設等又は里親が、当該児童の保護者等の同意を得て、将来的な受診に備え当該児童の資格確認書を預かる場合
厚生労働大臣による勧告、質問検査等
告知要求の制限又は提供データベースの構成の制限に違反する行為があり、当該行為をした者が更に反復してこれらに違反する行為をするおそれがあるときの取扱いです。
上記のおそれがあるとき、厚生労働大臣は、当該行為をした者に対し、次の①又は②の勧告ができます(法194条の2第5項)。また、これらの勧告に従わない場合は、③の命令ができます(法194条の2第6項)
- 当該行為を中止するよう勧告する。
- 当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずるよう勧告する。
- 上記①又は②による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、当該勧告に従うよう命ずる。
③の命令に違反したときは、その違反行為をした者(両罰規定あり)は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です(法207条の4、214条)
質問検査等
厚生労働大臣は、上記①〜③に関し必要があるときは、その必要な範囲内において、「告知要求の制限」又は「提供データベースの構成の制限」に違反していると認めるに足りる相当の理由がある者に対し、必要な事項に関し報告を求め、又は当該職員に当該者の事務所若しくは事業所に立ち入って質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができます(法194条の3第1項)
なお、上記の質問検査等について、次のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者(両罰規定あり)は、30万円以下の罰金の対象です(法213条の3、214条)
- 正当な理由がなくて報告をせず、又は虚偽の報告をした。
- 当該職員の質問に対して、正当な理由がなくて答弁をせず、又は虚偽の答弁をした。
- 正当な理由がなくて当該職員の検査を拒み、妨げ、又は忌避した。
解説は以上です。
試験対策としては、次の事項を考慮して記述の正誤を判定してみてください。
- その者が行おうとする「告知要求」又は「提供データベースの構成」は、健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のために必要といえるか(その者が当該事務を行うことが健康保険法又はその下位法令に規定されているか)
- 健康保険法又はその下位法令に直接規定がない事業や事務は、「医療保険の運営の効率化」「給付の内容及び負担の適正化」「国民が受ける医療の質の向上」という基本的理念(法2条)に照らして整合がとれるか。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 健康保険法
- 令和2年10月5日保保発1005第1号(医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について〔健康保険法〕)

