この記事では、社会保険診療報酬支払基金(以下、基金)、国民健康保険団体連合会(以下、国保連合会)への事務の委託を解説しています。
記事中の略語は、それぞれ次の意味で使用しています。
- 法 ⇒ 健康保険法
- 則 ⇒ 健康保険法施行規則
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
保険者から基金又は国保連合会への事務の委託
はじめに、保険者(全国健康保険協会及び健康保険組合)から基金又は国保連合会への事務の委託を解説します。

保険者は、次の保険給付に関する費用について、保険医療機関又は保険薬局から請求があったときは、審査をしてから支払います(法76条4項、85条9項、85条の2第5項、86条4項、88条11項、110条7項、149条)
- 療養の給付
- 入院時食事療養費
- 入院時生活療養費
- 保険外併用療養費
- 訪問看護療養費
- 家族療養費
- 日雇特例被保険者に係る上記の保険給付
- 特別療養費
保険者は、上記の保険給付に関する費用(以下、診療報酬等)の審査・支払に関する事務を基金又は国保連合会に委託できます(法76条5項)
ちなみに、国保連合会(47都道府県に設置された公法人)は、厚生労働大臣の定める診療報酬請求書(昭和59年9月28日厚生省告示172号:ざっくりいうと高額レセプト)に係る審査を公益社団法人国民健康保険中央会(国保中央会)に委託できます(国民健康保険45条6項、同項に規定する厚生労働大臣が指定する法人を指定する省令)
審査・支払の事務を委託しない場合
通達(平成14年12月25日保発1225001号)により、下記の取扱いが示されています。
- 健康保険組合は、特定の保険医療機関(以下、対象医療機関)と合意した場合には、自ら審査及び支払に関する事務を行える。
- ①の場合、当該事務を基金以外の事業者への委託も可能である。なお、その再委託は行わないこと。
- 公費負担医療に係る診療報酬請求書の審査及び支払に関する事務は、従来どおり、基金が取り扱うこと。
- 健康保険組合が審査及び支払に関する事務を①自ら行う場合又は②事業者に委託する場合には、上記③を除き、対象医療機関で受診した当該健康保険組合の被保険者及び被扶養者に係るすべての診療報酬請求書を対象とすること。
なお、診療報酬等を請求するものと、請求された診療報酬等を審査するものが実質的に同一となる場合は、①②であっても委託できません(同旨 前掲通達)
保険薬局と合意した場合も、上記①~④と同様です(平成19年1月10日保発0110001号)

保険者は、診療報酬等の審査・支払に関する事務のほか、次の①~③の事務を基金又は国保連合会に委託できます(法205条の4第1項)
- 療養費、出産育児一時金、家族出産育児一時金、高額療養費及び高額介護合算療養費(日雇特例被保険者に係るこれらの保険給付を含む)の支給に関する事務(則159条の7)
- 保険給付の支給、保健事業及び福祉事業の実施、保険料の徴収その他の厚生労働省令(則159条の8)で定める事務に係る被保険者等に係る情報の収集又は整理に関する事務
- 保険給付の支給、保健事業及び福祉事業の実施、保険料の徴収その他の厚生労働省令(則159条の9)で定める事務に係る被保険者等に係る情報の利用又は提供に関する事務
①は保険給付を支給する事務、②③は保険給付を支給するために必要な資格情報(オンライン資格確認等に必要な情報)の収集等の事務といったところです。
(保険者による基金又は国保連合会への資格情報の登録は、こちらで解説しています)
②③における「被保険者等」とは、被保険者、被保険者であった者又はこれらの被扶養者をいいます。
(則159条の8、9は膨大になるため省略します)
保険者は、②又は③の事務を委託する場合は、他の一定の保険者等(国保の保険者や後期高齢者医療広域連合など関係する保険者等)と共同して委託することになります(法205条の4第2項)
「一定の保険者等」の範囲は下のタブに格納しておきます。必要に応じて開閉してください。
「一定の保険者等」とは、次の①~③をいいます(法205条の4第2項)
- 社会保険診療報酬支払基金法1条の保険者
- 法令により医療に関する給付その他の事務を行う者であって厚生労働省令で定めるもの
- 介護保険法3条により介護保険を行う市町村及び特別区
①は下記になります(社会保険診療報酬支払基金法1条)
- 全国健康保険協会、健康保険組合
- 都道府県、市町村、国民健康保険組合
- 後期高齢者医療広域連合
- 法律で組織された共済組合、日本私立学校振興・共済事業団
②は下記になります(則159条の10)
- 生活保護法19条4項に規定する保護の実施機関
- 防衛省の職員の給与等に関する法律22条1項の規定による給付又は支給を行う国
厚生労働大臣から基金等への事務の委託

つづいて、厚生労働大臣から基金等への事務の委託です。
厚生労働大臣は、次の①及び②に係る事務の全部又は一部を基金又は国保連合会その他厚生労働省令で定める者に委託できます(法150条の9)
- 診療等関連情報に関する調査(法77第2項の調査)
- 匿名診療等関連情報(法150条の2第1項)の利用又は提供
その他厚生労働省令で定める者とは、①②の事務を適切に行える者として厚生労働大臣が認めた者をいいます(則155条の9)
基金、国保連合会、その他厚生労働省令で定める者を総称して「基金等」といいます。
ちなみに、②の匿名診療等関連情報の提供を受け、これを利用する者は、免除される場合を除き、実費に相当する手数料(提供に要する時間1時間までごとに4,350円)を納める必要があります。
手数料の納付先は、当該情報の提供者が厚生労働大臣の場合は国へ、提供の事務の全部が基金等に委託された場合は基金等へ納付します。
匿名診療等関連情報の提供に係る事務について、基金等に納められた手数料は、基金等の収入となります(法150条の10第3項)
①の調査はこちら、②の匿名診療等関連情報(手数料を含む)はこちらで解説しています。
解説は以上です。
診療報酬等の請求や審査・支払の事務は、社労士試験の対象外と考えられます。
過去問とテキストの範囲で学習してみてください。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 健康保険法
- 昭和59年9月28日厚生省告示172号(社会保険診療報酬支払基金法第十六条第一項、国民健康保険法第四十五条第六項及び高齢者の医療の確保に関する法律第七十条第五項の規定に基づき厚生労働大臣の定める診療報酬請求書)
- 平成14年12月25日保発1225001号(健康保険組合における診療報酬の審査及び支払に関する事務の取扱いについて)
- 平成19年1月10日保発0110001号(健康保険組合における調剤報酬の審査及び支払に関する事務の取扱いについて)

